
親友
私には高校2年生の頃から仲良くなり、
6年経った今でも月に2度ほど会う親友がいる。
家も車で15分ほどの距離だ。
これは昨夜の話。
彼女は最近祖父を亡くした。
しばらく落ち込んでいたこともあり、
久しぶりに会うことになった。
その日の朝に約束をし、
仕事終わりの19:30、麻辣湯屋で待ち合わせた。
現れた彼女は、
いつも通り仕事の愚痴をこぼしていた。
良かった。少し元気そうだ。
そう思いながら食材を選び、席につく。
出来上がりを知らせるブザーが鳴り、
湯気の立つ麻辣湯を前に「美味しそうだねぇ」と
笑う。
彼女が写真を撮る前に、
私はもう麺をすすっていた。
「今日はうずらの卵入れました〜」
そんなくだらない話をしている時だった。
彼女が祖父の話を始めた。
「この悲しい気持ちを、これ以上味わいたくない」
祖父を亡くした悲しみももちろんある。
けれど彼女を苦しめていたのは、その先だった。
祖母も、父も、母も。
いつかまた同じ悲しみを何度も味わう未来を想像してしまい、辛くて仕方がなかったのだという。
私はただ、
「そうだよね」
と返すことしかできなかった。
普段明るい彼女が、少し目を潤ませながら話している。
何か言いたい。
そう思って咄嗟に口から出た。
「でもさ、その未来には旦那さんとか子供とか、新しい親友とか、今はまだ居ない味方も増えてるんじゃない?」
その言葉が正解だったのかは分からない。
けれど彼女は少し納得したように頷き、再びスープをすすった。
その姿を見て私は安心した。
ふと窓の外を見るとコンビニがあった。
アイス食べたいな。
そう思って彼女を見る。
すると彼女が、
「アイス食べに行こう」
と言った。
思わず私は笑った。
「え、顔に書いてあった?」
6年も一緒にいると、こういうことまで分かるのだろうか。
それとも、たまたま2人ともアイスが食べたかっただけなのか。
私はどうしてもミニストップのハロハロが食べたかった。
すると彼女は、
「じゃあ1番近いミニストップ集合ね」
と言ってくれた。
別々の車で向かった先には、
『閉店セール実施中』
『ソフトクリーム・パフェ・スナック全種類販売終了』
の文字。
運の悪さに落ち込む私を、彼女は携帯で撮影しながらケラケラ笑う。
そして一言。
「よし、2軒目行こう」
まじか。
私のハロハロのために、どこまでも付き合う気か。
これが心の友というやつかもしれない。
2軒目で無事ハロハロを手に入れた私たちは、私の車の運転席と助手席に並んで座り、アイスを食べた。
気付けば21:00解散の予定が22:30になっていた。
帰る直前になると、毎回少し寂しくなる。
すると彼女が言った。
「今度さ、近くのホテル泊まって喋りながら寝落ちしたくない?」
私は即答した。
「お前天才か。帰りながら電話してホテル探そう」
車に乗り込んで電話を繋ぐ。
さっきまで何時間も一緒にいたはずなのに、話は止まらない。
結局、家に着いてからも1時間以上電話をした。
ホテルの料金を見ては、
「高えな」
と2人で唸る。
そして私はふと思った。
「私たち、泊まる意味ある?」
だって家まで15分なのだ。
そう言うと彼女も、
「え、まじやん」
と笑った。
似た者同士はこれだから困る。
少し話は変わるが、私は保育園の年少の頃、担任の先生と1年間ほとんど喋らなかった伝説を持っている。
そんな人見知りの私に、親友なんて存在ができるとは思っていなかった。
生きるというのは、こういうことなのかもしれない。
人は時々、絶望の先を勝手に想像して苦しくなる。
彼女がそうだったように。
けれど未来には、想像していた悲しみだけじゃなく、想像すらできなかった幸せもある。
6年前の私は、今こうしてハロハロのために2軒目のミニストップを探してくれる親友の存在なんて知らなかった。
その時、絶望の果てに立ち、この先を勝手に想像して嫌になることもある。
けれど人生には、全く想像すらしなかった未来も存在する。
だから少しだけ期待していたい。
まだ見ぬ人や景色や出来事を。
彼女の祖父は、たくさんの人に囲まれ、たくさんの涙に見送られた。
そんな人生だった。
私もいつか、そうありたいと思う。