
客室清掃係、真由
第1話:真由、今日も行く
「あー明日もほぼ満室かあ。」
明日の 稼働予定表から目を離せないまま、つぶやいた。
今の人数で回すのは正直きつい。 本当は、一人あたりの部屋数を減らしたい。 そのほうが絶対にきれいにできるし、ミスも減る ……。
でも、それじゃ終わらない。 結局、今日も同じだ。 無理させてるのは分かってる。 日本人スタッフなんて、ほとんど六十歳超えてて、平均年齢が後期高齢者かっって、ツッコみたくなる。
——ほんとは、こんな回し方したくないんだけどな。
どうにかならないのかと思うけど、どうにもならないのは真由自身が分かっている。 会社は求人を出してるらしいが人なんて来ない。 そうはいってもこれでは現場が回らない、いや、正確には回ってる?無理矢理。
そんなことを考えていたら
「佐伯さーん、例の506号室、チェックアウトまだですか?」
と、声がした。
あ、そういえば506って今日アーリーチェックインだったっけ。そんでそんな部屋に限ってなかなかチェックアウトしないんだよな。 もう一回フロントに確認しよう。
てか、え?もうこんな時間・・ やば、もう45分しかない。
焦りつつ、フロントへ確認すると
「すいません、まだチェックアウトされてません。」
というのんきな返答。
あ~~~~~イライラする。
「ごめーん、506まだだって」 と、ベテラン清掃員の澤田さんに伝えた。
だいたいアサイン(予約が入っている部屋)にレイトチェックアウトの部屋を割り当てるなよなー、と愚痴をこぼしつつ、仕事に戻った。
もー、あと38分かあ。
焦りとイライラがつのってきた真由は、うっかり左足の小指をベッドの角に叩きつけてしまった。 踏んだり蹴ったりだ・・・
自嘲気味に笑っていたらやっと
「506チェックアウトしました」の連絡。
「澤田さーん、急いで入って」 と声をかけ、
「あと2人くらい、リンと誰かも手伝って、あと25分しかない」
真由自身もタオルやゴミの回収に加わった。
もう、こういうのあるあるなんだけど、急いで仕上げないといけない部屋に限ってゴミが多くて散らかっている。 それもひどく・・・。 今回も例外ではなく、ゴミ箱に入りきれずあふれんばかりのゴミの山。 まあ、ゴミ箱に入ってるだけ、まだましだけど。 たまにゴミ箱の中からっぽで、床のあちこちにゴミが散乱している部屋もある。 そんなことを考えながら、片づけていた。
「あと10分」
真由は大声で叫んでから、部屋のチェックを始めた。
「リン、ここ、まだゴミ落ちてる。もっと丁寧に掃除機かけて」
もうほとんどどなっているような感じで、慌ただしく仕上げた。
「506号室、清掃完了いたしました」
慌ててフロントへ電話を入れる、チェックイン4分前。
はぁー間に合った。
取りあえず安堵しつつ、いつも振り回される現実に辟易もしていた。
だいたいチェックアウトしてからインまで余裕ない中、無理矢理部屋を仕上げないといけないなんて、こういうの今どきなんとかハラスメントにならないの?と、どこにもぶつけられない怒りを飲み込んで、明日の出勤人数の確認や、備品の補充などを始めた。
あぁ、真由は今日も行く。