
甘くなかった、小学生の恋心
小学生だったあの頃、6年も片思いしていた男の子にこう言われた。
「おい、クロブタ!調子のってんじゃねーよ」
子どもって、ときどき無邪気な残酷さを持っている。
まして自分が長く特別な想いを抱いていた相手から言われるならなおさら。
小学生だった頃、我が家は、父、兄、私とみんなぽっちゃりだった。
なぜか納豆に砂糖を入れたり、たらこごはんにバターを混ぜたり。
今思えば、震えるほどハイカロリー生活だった。
兄は保健室で指導され、「マヨネーズは禁止で」と言われたほど。
それ以来、家からマヨネーズが消えた。
今でも大好きだけど、たっぷり使うのはちょっとドキドキする笑
片思いの少年とは6年間同じクラスだった。
顔がタイプというわけではなかった。
でもスポーツ万能で、カーキ色のパーカーがよく似合う男の子。
ちびまる子ちゃんに出てくる大野君と杉山君的存在のモテ男子。
私が「クロブタ」と呼ばれたのは、毎年泳げないのに海に連れて行かれ、皮がむけるほど焼けていたから。
昔の写真を見ると、パンパンの顔に、夏を満喫しましたと言わんばかりの健康的な日焼け。
クロブタかぁ……。
しょうがない……いや、しょうがないではない。
恋心は、その言葉でふっとしぼんでしまった。
これがアニメやドラマの主人公なら、キュンとするハッピーエンドが待っているかもしれない。
でもこれは何事もなく終わりを告げる普通の片思い。
「好きな女の子にはいじわるをする」なんてよく言うけれど、あの時はそんな伝説さえ信じてしまえるほど無邪気で、ポジティブだった。
小さなトキメキを持てていた小学生の私に、心から拍手を送りたい。
運動も苦手だった私は、マラソン大会は後ろから2番目くらいをキープ。
馬跳びは跳ぶたびにみんなをつぶしてしまう。
今なら笑える光景だけど、当時はただ辛かった。
チームプレーなんて悲惨だった。
冷たい視線と聞こえるため息…
思い出すだけで胸がぎゅっと痛くなる。
そのたびに、心の中に小さな痛みが積もっていった。
兄も同じだった。
海で仲良くなった女の子から届いた手紙には
「ブタゴリラ元気か?」
と書かれていた。
読んだ瞬間、兄は悔しさで泣きながら暴れていた。
だから私達には「ダイエット」という言葉は必要なかった。
悔しさを晴らすため。
もう傷つかないため。
中学に上がってから、私達は自然と痩せていった。
父も健康のために体重を落とした。
家族のビフォーアフター写真を見ると、そこには笑えないエピソードが写し出されている。
私と兄は今でも太りはしない。
それだけ、あの頃の経験がトラウマとして残ったのだろう。
クロブタは、やっぱりひどい。
だけどせつない片思いが「見返してやる!」というパワーに変わって、自分を磨く機会になったのなら…
ほんのちょっと、カーキ色パーカーの彼へ感謝してもいいのかもしれない。
苦笑いの「ありがとう」を、そっとあの少年に。
そして、悔しさでいっぱいだったあの頃の私にも、小さく「ありがとう」を伝えたい。
傷ついた日々も、
私を前に進ませてくれた大事な欠片だったと今なら分かるから。
昔の写真をめくりながら。
心が軽くなる気がした。
あの頃の気持ちが、胸の中で静かに形を変えていくのを感じながら。