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短編小説|探偵宛ての切符

    チッ チッ カチッ
    腕時計の針が十二時を指した。

    「本当に来るのか?」

    小暮が聞いた。

    「さぁね。だが依頼が来た以上行かなくては、
     僕は探偵だからね。」

    帽子をおさえながら川辺が応えた。

    空は重く黒いカーテンでも引かれているかのようにどんよりとした闇に染まり、湿気を感じる生温い風が時折二人の身体を撫でていく。

    同じ大学に通う川辺俊也と小暮君彦。
    川辺俊也はシャーロックホームズに憧れている大学一年生、二つ上のこれまた同じ大学に通う小暮君彦の事をワトソン君と呼ぶ一風変わった人物だ。

    何故二人がこんな夜中に廃れたバス停の前に居るのかというと

    「君の鞄に謎の切符が入っていただけで依頼かどう
     かわからないだろ?」

    「否、これは依頼だ。見給え、この切符の裏に探偵
     へと書いてある。つまり僕宛ての依頼だ。」

    「イタズラかも知れない。」

    小暮がそう言い顔を上げると、なんと目の前にバスが止まっていた。小暮は目を大きく開き

    「いつの間に?エンジン音なんてしなかったが…。」

    プシュー、と音をたてバスのドアが開いた。

    「お呼びのようだ、行こう。」

    そう言って川辺がバスに乗りこんだ。

    「…あ~、仕方ない!」

    頭を掻きながら小暮も続いた。

    バスが二人を乗せて走り出し数分が経った頃、小暮が窓から外を覗くと闇夜に深く霧がかかっており

    「何も見えないぞ。どこへ向かっているんだ?」

    隣に座っていた川辺に目をやると…居ない。

    …ガサガサッ
    気がつくと川辺はバスの前の方の席に移動しており書類の様なものを手にして夢中で読んでいる。が、次の瞬間

    「成程、犯人はこの人だ!間違いない。」

    座席から立ち上がり得意気な笑みを浮かべそう宣言した。

    「犯人?何の話だ、その封筒は?」

    「これは探偵事務所の調査報告書さ。この座席の下
     に落ちていた、おそらく落し物だろう。未解決の
     殺人事件について記載されている。」

    「どんな事件だい?」

    「女性が刃物で刺されて亡くなった。状況から犯人
     はこの写真に写っている三人の友人の誰か…
     右端の女性が犯人さ。」

    川辺は手に持っていた二枚の写真のうち一枚を小暮に渡した。

    「何故この人が犯人だと?」

    「この報告書では犯人は被害者を刺した際に返り血
     を浴びたとされている。三人の中で唯一服を着替
     えているのは彼女だけだ。因みにそっちは犯行前
     に、こちらは犯行後に撮られたものだ。」

    そう言ってもう一枚の写真も小暮に渡した。

    「ん?川辺、これは後ろを向いた写真だ。もう一枚
     は前から撮られている。これでは違う服かわから
     ないだろ?」

    「いいや、この二枚の服は違うね。何故なら着脱の
     ファスナーが前と後ろ両方に付いている。そんな
     デザインの服は見たことがない。」

    小暮は写真を見返して

    「あ、本当だ。」

    小暮が調査報告書を封筒へ戻すとバスが急にキキーッと止まり、ドアが開いた。

    「どこへ着いたんだ?」

    二人がバスから降りるとそこは最初に二人がいたバス停だった。

    「なんだ、我々が乗った場所じゃないか。」

    確かにエンジン音を立てバスはずっと走っていたのに、小暮は外から運転席を覗き込んでみた。が運転席には誰もおらず

    「どういう事だ?」

    目をパチクリさせ、訳がわからず立ち尽くしている。
    川辺は口元に指を当てじーっとバスを眺めていた。そして、フッと笑みを浮かべ

    「犯人が誰か気になっていたのか。」

    川辺は腕時計に目をやり

    「もうすぐ一時だ。帰ろう、ワトソン君。」

    二人は夜道を駅に向かって歩きだした。


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    不安障害。想いをnoteにそっと綴っています🐏 (プロフィール、ヘッダー画像は生成AIです。)

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