消えゆくルーツ

エッセイ
この間、久しぶりに生まれ育った町へ行った。
用事で近くまで来たので、少し足を伸ばしてみた。
駅に着く。
商店街をゆっくり歩く。
懐かしい。
好きだった肉屋さんがあった。
同級生の家のお店だ。
懐かしくてコロッケを二つ買った。
店の横の路地で食べる。
美味しい。
久しぶりに、エラのあたりがじんとした。
何年ぶりだろう。
ほっぺたが落ちるという、あの感覚だ。
少し歩くと、ボタン屋さんがあった。
今も店を続けていることに驚いた。
ファスナーやボタンを売っている、小さなお店。
子どもの頃、母に頼まれてボタンを買いに来たことがある。
店は昔のままだった。
色だけが、少し褪せていた。
あのボタン屋さんが、まだ残っている。
時の流れは悲しくて、
少し優しい。
商店街を抜けると、小学校が見えてきた。
門の近くまで行って、思わず立ち止まる。
門は錆びていた。
運動場には、ところどころ雑草が伸びている。
校舎の壁も黒ずんでいた。
廃校になっていた。
涙がこぼれた。
それでも夕暮れは、
あの頃と同じように優しかった。
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🍂連載小説『私は私のままで行く』『命終えても街を彩る落ち葉のように』をステキブンゲイで公開しています。プロフィールからどうぞ。