北海道石狩/ワカサギ 大都市近郊の川の氷上で穴釣りにチャレンジ
パッチワーク模様の畑、白樺の林、牛馬が点在する牧場風景。北の大都市ながら、やや郊外に出ると北海道らしい自然に恵まれているのが、札幌の旅のいいところである。そんな冬の札幌郊外の自然に抱かれ、地元ローカルなアクティビティに挑戦するのもまた、この時期の旅の楽しさ。挑むワカサギ釣りは札幌市民の冬の定番レジャーで、市街からクルマでわずか30分も走れば結氷した河川や湖沼があるのだから、実に恵まれている。


クルマは国道231号を北上、石狩川支流の茨戸(ばらと)川へとやってきた。深さは4メートルほどの流れが緩い三日月湖で、レストランの茨戸ガーデンを拠点にした釣り場が設けられている。土手に出ると河原一面に、オレンジや黄色のカラフルなドームテントが並び、どこか北欧風な眺めである。
案内に従って土手を下ると、気づかぬうちに氷の上に立っていた。厚さは40センチほどで、例年だと80センチは張るが暖冬の影響で薄めという。さらに「足元に釣り用の穴がいっぱい開いてるから、落ちないよう気をつけて」との案内人の注意喚起に、少々足元に不安を覚えながら釣り場へと向かった。まずは参加者一同、道具が並ぶ穴の周りに集まり、案内人を囲んで仕掛けと釣り方のレクチャーを受ける。


竿は40センチほどと短く、リールもついているがおもちゃのように小さい。先端に重りがついた幹糸から枝針が5本のび、これに餌箱の虫をつける。つけ方が悪いと釣れないよ、とプレッシャーを受けつつ、何とかつけたら仕上げに3分の2ほどを切り取る。ワカサギの口のサイズに合わすのと、切り口から滲み出る虫の体液がいい撒き餌になるからだそう。
氷上では先客の釣り人たちが、思い思いに穴を開け陣取っている。穴あけ用の巨大なドリルが備えられていて、自分もポイントを定めてやってみたら結構苦戦。スパン、と掘り抜く頃には、腕がパンパンになってしまった。では、と糸を垂らそうとしたら、あらかじめ案内人が開けた穴を覆ったテントが用意されていて、参加者はみなそちらへと入っていく。プロの定めたポイントの方が釣れそうだな、と自身もそっちを選び、いざ勝負である。

穴釣りの釣果は、いかに魚がいる深さにタナを取るかにかかっている。案内人によると今の時間、ワカサギはベタ底にいるのだとか。指示に従いリールから糸を順に繰り出し、重りが着底したら4~5回竿をしゃくって魚を寄せ、アタリが分かるように重りが底からやや浮くぐらいに軽く巻いてから竿を置く。時折しゃくっては置いて、を繰り返し、ひたすら天命を待つことに。
ワカサギ釣りといえば豪快な一荷釣りの印象が強く、氷面から竿を上げたら銀鱗の小魚が鈴なりの期待が膨らむ。が、湖水の流れで揺れるものの、グイーッという引きは見られない。すると隣のテントから、女の子たちの嬌声が響き始めた。流れがついに来始めたようで、また釣れた、今度は2匹、と一同どんどん盛り上がっている。
連鎖的に、ほかの周囲のテントも賑わい出したものの、なぜかこのテントには一向にアタリがこない。案内人が覗きに来ては「重りはベタ底になってる?」「タナをちょっと変えてみたら?」とアドバイスをくれるが、竿先は沈黙しっぱなしである。ワカサギは魚群で移動するので、まわりが釣れてるからここにも寄ってきてるはずだよ、とかけてくれる言葉にすがるしかない。
そして待った甲斐あってか、釣れている隣のテント寄りに座っている人が、ようやく1匹目をヒットした。それを機にまるで魚群が襲来したかのように、ひとりずつアタリが出始めた。最初に釣った人から順に隣へと移っていくのが、まさに回遊しているからかのよう。2尾の一荷釣りも見られ、羨ましいやら悔しいやら。
自分は一番離れた席なのでなかなかアタリがなく、やっと隣の人にヒットしてよし、と気合を入れ直したところ、何と無念のタイムアップとなってしまった。案内人によると、今年は釣果が例年ほどではなく、2時間釣っていて平均10尾ほどは釣れていたのに、3~4尾がせいぜいな具合。暖冬の影響もあるそうで、こればかりは自然が相手だから、となだめていただいた。
釣れたワカサギはその場で続々と天ぷらにされ、大漁のグループからお裾分けをいただけるのがうれしい。揚げたてがテントに持ち込まれると、香ばしい匂いが中に充満して、寒さも吹っ飛びホッとする。ボウズの無念もどこへやら、ご相伴に預かると身が厚くホックリしており、とれたてだからか瑞々しい味わい。頭とワタがほろ苦く、川魚らしい土の香りがかなり強い印象だ。地元の人は「キュウリのような青い風味」と評しており、シシャモ類の味に近い。


茨戸川に生息しているワカサギは、全国に分布するワカサギのほか、北海道のみに生息するイシカリワカサギという種もある。イシカリワカサギは、川の支流や三日月湖などの川跡湖に多く見られ、茨戸川をはじめ石狩川の下流域の支流が主たる生息地である。
レジャーの釣りのほか、漁業としても大正期から佃煮の加工を目的として行われており、平成21年の市の資料では漁獲量は124トンで、道内では上位の数字を記録していた。札幌近郊に位置するため市民にとって親しみ深いこともあり、北の大都市圏らしいローカル魚といえる。
茨戸ガーデンでは釣りの後に昼食を味わうことができ、この日は地元の本場石狩鍋をメインに、茨戸川の味覚も2品ほど並んだ。寒ボラのつくりは酢味噌でいただくと、鯉の洗いのようなシャキシャキしたイキの良さ。白身に程よく脂ものっていて、控えめな甘さに箸がのびる。


ボラは生息域の水質が味にそのまま出る魚だけに、雑味のなく軽く青臭い香りは、茨戸川の環境の良さを表しているようだ。川エビの唐揚げは殻が柔らかく、身がしっとりと柔らか。北海道でエビといえば甘エビにボタンエビだが、淡水のエビもレベルが高いのを実感する。

茨戸川の川の味覚をすっかり堪能、勝負に負けたが食には満足して、札幌市街へ戻るクルマへと乗り込んだ。駐車場から湖面を臨むと、さっき自分が氷上に開けた穴が見える。ひょっとしてこっちだと釣れたかも、と、潔くない未練ありありか?
