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私たちが絶叫している間に、後ろでカップルが成立していた話


私は、お化け屋敷が本当に怖い。
いや、怖いというより嫌い。

「怖いけど楽しい♡」
みたいな感情は、私の中には存在しない。

怖いものは怖い。
できれば、一生入らずに人生を終えたい。


そんな私にも
なぜか戦慄迷宮に入った過去がある。


もう相当前、私がまだ学生だった頃、
夏休みに仲間5人で富士急ハイランドに行った。

5人のうち、3人はお化け屋敷が大好き。
私ともう一人は大嫌い。

多数決をすると、3対2。
もう、この時点で嫌な予感しかしない。

案の定、「せっかくだから、戦慄迷宮に入ろう!」と言い出したヤツがいた。

私たち2人は全力で抵抗した。

「いやいやいやいや」

「せっかくじゃない」

「富士急には他にもいっぱいあるじゃん」

「むしろ外から戦慄迷宮を眺めよう」


ありとあらゆる理屈を並べた。
しかし、多数決には勝てない。
最後の抵抗として、ジャンケンに持ち込んだ。

で、負けた。

こうして私たちは、
戦慄迷宮に入ることになった。


順番を待っていると、
入口の近くであるアイテムが売られていた。

値段は覚えていない。でも、その効果だけは今でもはっきり覚えている。

「これを見せると、お化けが1分間フリーズします」


秒で買った。

普段なら、
「本当に必要🤔?」
「ちょっと高くない?」
とか考える私が、
このときだけは一切考えなかった。

だって、怖いんだもん。


順番が近づくにつれて、私の頭の中では猛烈な勢いで理論武装が始まった。

怖い😭
でも、しょせん相手は人。
これは仕事。
これは演技。
向こうもシフトでここに立っているだけ。

しかも!

私には、アイテムがある✨✨

大丈夫、大丈夫。


こういうときに「大丈夫」を2回言っている人は、
だいたい大丈夫じゃない(笑)


そして、戦慄迷宮へ。


病院がモチーフだった。
もう嫌だ。それだけで怖い。

帰りたい。
でも、もう入っちゃった。

妙にチカチカする暗い廊下を進んでいく。
先頭にいる男子が、異様にビビっている。

彼がビビる。
ビビッてその場で急にもも上げをする。
それを見て私がビビる。
私がビビると、もう一人もビビる。

ビビりの連鎖。


恐怖は感染するのだ。


私たち3人の中で、感染対策が必要なレベルで恐怖は広がっていった。


そして。
ついに、お化けが出てきた。

今だ!!!


一回目のアイテム使用。
すると・・・

効いた✨



本当にフリーズした。
私たちは小さくガッツポーズをした。
文明の勝利だ。
文明にはお化けといえど勝てない。

二回目。
また別のお化けが出てきた。

アイテム発動。

また効いた✨✨


すごい。
めっちゃ強い。

これさえあれば、戦慄迷宮なんて怖くない。
余裕でゴールできる。

このアイテム、最強💛


そして三回目。
お化けが出てきた。

「さあ、止まりなさい。」
ドヤ顔でアイテムを見せた。

……

止まらない。

……

いや、止まれよ。

来る。

え?

来るんですけどぉ😱!?


普通に追いかけてきた。
しかも、めちゃくちゃ速い。

ちょっと待って!!!

回数制限があるなんて聞いてない😱


なんで??
そんな説明あった???
でも、あったのか、なかったのかなんて
この際どうでもいい。


猛烈な勢いでヤツらが追いかけてくる。

こうして、「お化けを1分停止させる最強アイテム」は、折り返し地点に到達する遥か手前で、ただ手に持っている邪魔な物体へと降格した。


そこから先は地獄だった。


壁に「リタイア出口」の案内が出るたびに、
心が揺れる。
もう一人のビビり仲間と目が合う。

以心伝心。
目だけで会話できた。

出る?

出たい。

出ようか?

でも……


結局、出なかった。
理由はただ一つ。

負けられない。


怖い。
めちゃくちゃ怖い。

でも私の中には、
恐怖とは別の感情がいた。

負けず嫌い。


「ここで出たら、後から絶対いじられる」
その一点だけで進んでいた。

もはや、恐怖心 VS プライド。

そしてまさかの、プライド優勢。
お化けより、自分のプライドのほうが扱いづらい。


そして最後、
一番怖いやつが来た。


何が出てきたのかは、
あまりに怖すぎてほとんど覚えていない。

ただ、出口の光が見えた瞬間のことだけは覚えている。

生還✨✨


外へ出て、深呼吸した。
終わった・・・生きてる。

二度と入らない。

そこで、ふと思った。
そういえば・・・

後ろにいた2人は?


完全に存在を忘れていた。
自分たちが生き延びることで精一杯で、
後ろを気にする余裕なんて1ミリもなかった。


大丈夫だっただろうか・・・
心配で振り返った。

すると、

2人は、手を繋いでいた💛

……

え?

……

カップル、成立?


何があった??
私たちが知らないところで、
戦慄迷宮・恋愛編でも開催されていたのか。


後から聞いた話。

「HONOたちのビビり具合が面白くてさ」

うん。

「二人で面白いねって話しながら歩いてたら」

うん。

「いつの間にか、こうなってた」

……

どういうこと🤣?


こっちは、絶叫してお化けから逃げ、
最強アイテムの回数制限に絶望し、
リタイア出口の誘惑と戦い、
己のプライドだけを燃料に前進していた。


その真後ろで二人は、

「あの二人面白いね💛」

って言いながら、
静かに距離を縮めていたらしい。

こちらサバイバル。
後方、ラブストーリー。

同じ戦慄迷宮を歩いていたとは思えない。
私たちは知らないうちに、恋のキューピットになっていた。

…ていうか、
あの2人は怖くなかったんだろうか😑


夏になると、時々あの日を思い出す。

あの日、私がどれほど本気で怖がっていたか。

「最強アイテム」に、
まさかの回数制限があったこと。

恐怖より負けず嫌いが勝つ瞬間が、
自分にもあると知ったこと。

そして、

私たちが必死でお化けから逃げている、
その数メートル後ろで、

青春が始まっていたこと。

人生って分からない。

こっちは命がけだったのに、
あれが恋愛アシストになっていたなんて。

納得はいっていない。

そして、
あの日の経験から学んだことが
もう一つある。

私は二度とお化け屋敷には入らない😑


恋のキューピット役なら、
次からは外でやらせてください。


今回は、宵空さんの企画に参加させていただきました😊楽しい企画、ありがとうございます✨



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