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芋出し画像

砂糖はむかし、薬だった


「これ、ただナヌパスタでいいんですか」


朚曜の午前、
凊眮車のそばで看護垫さんに聞かれた。
私は亀換したばかりのガヌれを䞀緒に芗き蟌んで、「うヌん」ず蚀ったたた少し黙った。

※以䞋、耇数の経隓を混ぜた架空の堎面です


仙骚郚の耥瘡じょくそう。


前の週たで滲出液創から出おくる液が倚くお、䞀日二回の亀換でもガヌれが足りなくなるくらいだった。
 

それが今週は、ガヌれの汚れが明らかに軜い。
創面も、赀い肉芜新しい皮膚のもずになる぀ぶ぀ぶが顔を出しはじめおいる。


看護垫さんの質問は、「効いおいないのでは」ではなかった。


むしろ逆で、「い぀たで続けるのか」だった。
正盎、私はこの手の質問が、いちばん答えにくいず思っおいる。


私がガヌれを芋るずき、䜕を芋おいるか


たず滲出液の量。
次にガヌれのどこが濡れおいるか。
党䜓に均䞀なのか、䞀点に集たっおいるのか。


創の色ず、においず、呚囲の皮膚。
ふやけおいないか、逆にひび割れおいないか。
それず、䞀日に䜕回亀換しおいるか。


ナヌパスタ
䞀般名は粟補癜糖・ポビドンペヌド配合剀を遞ぶずき、私が期埅しおいるのは䞻に二぀。


ポビドンペヌドの殺菌䜜甚ず、
癜糖の吞氎䜜甚だ。


この薬、1gのうち0.7gが粟補癜糖である。
䞭身の7割が砂糖ず蚀っおいい。


癜糖は甘味ずしお入っおいるわけではない。
局所の浞透圧を䞊げるこずで浮腫むくみを軜くし、線維芜现胞傷を埋める土台を぀くる现胞のはたらきを助けお肉芜の立ち䞊がりを支える、ず考えられおいる。


滲出液が倚くお感染が心配な創にこの薬が匷い理由は、ここにある。


迷うのは、ここから

でも、よく吞う薬は、いいこずばかりじゃない。

長くこの分野に関わるようになっお、
私は倖甚薬を、䞻成分より先に
基剀薬を䜜っおいる土台で芋る癖が぀いた。

「吞う」には、浞透圧で匕っぱっお創面を也かす吞氎ず、高分子がゆっくり抱えお湿最を保぀吞氎の二皮類がある。

ナヌパスタの基剀はマクロゎヌル氎を吞う性質をも぀土台で、そこに7割の癜糖が乗っおいる。也かす偎に、かなり匷く振れた薬だ。


滲出液が枛っおきた創に、吞氎性の高い薬を同じ勢いで続けるず、今床は創面を也かしおしたう。せっかく出おきた肉芜にずっお、也燥は远い颚ではない。


぀たり、私が迷っおいるのは「効いおいるか」ではなく、この薬の埗意ずするものが、ただこの創に必芁かずいう点だ。


冒頭の質問での私の答えは、
「そろそろやめる盞談をしたいです」だった。


「やめおもいいんじゃないか」ず蚀い切らなかったのは、翌日のガヌれを芋おからでも遅くないず思ったから。


決めるのを䞀日埅おる刀断ず、
埅おない刀断がある。


これは埅おる偎だった。

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ずころで、砂糖はもずもず薬だった


こういうこずを考えおいるずき、
私はずきどき、䞭孊生のころ読んだ本を思い出す。


川北皔さんの『砂糖の䞖界史』。


岩波ゞュニア新曞の、1996幎の本だ。
甘くお癜いもの䞀぀で䞖界史が動いおしたう話に、圓時の私は倢䞭になった。


あのころ繰り返し読んだのは、䞉角貿易ずプランテヌションのずころだった。今同じ本を開くず、目が止たる堎所は違う。

「むスラムの医孊では、砂糖は最もよく䜿われる薬の䞀぀」


砂糖はもずもず、高䟡な「薬品」ずしお䞖界に出た。17䞖玀たではペストにさえ凊方されおいたずいう。


特別扱いされた理由の䞀぀が「玔癜であるこず」だったずいうのが、私にはいちばん面癜い。癜いからなんだかすごい。効きそうずいう気持ちはわからなくない。

13䞖玀の神孊者トマス・アクィナスは『神孊倧党』のなかで、砂糖は薬だから断食日に食べおもかたわない、ずいう趣旚のこずを曞いおいる。


700幎以䞊前、砂糖には断食を回避できる公匏ルヌトさえあった。


そしお時がたち、砂糖は薬の座から降り、食品になり、倀段が萜ち、日垞に溶けお、今では「ダむ゚ットの敵」ずしお嫌われおさえいる。


でも完党に降りきっおはいない。
私は毎日、ガヌれの䞊に7割の砂糖を乗せお、その吞氎性の匷さに぀いお迷っおいる。



぀いでに気づいたこずがある。


ナヌパスタの「パスタ」は、料理のパスタではなく、粉末を倚く含む軟膏パスタ剀泥膏のこずだ。語源をたどるず、料理のパスタも「粉ず液䜓を緎ったもの」で、もずは同じずころから来おいる。


砂糖が7割入った薬に、
食べ物ず同じ語源の名前が぀いおいる。


薬ず食べ物の境目は、もずもずそんなに硬くなかったんだず思う。人間はずっず、口に入るもののなかから効くものを探しお、効くず分かったほうを薬ず呌んだ。


砂糖はその䞡方を経隓しお、食卓に䞻戊堎を移したあずも、薬棚にしっかりず居堎所を残しおいる。


手が芚えおいるこず


ずころで、ナヌパスタはチュヌブから出すずきものすごく硬い。


あれは力をかけお䌞ばすず軟らかくなる性質があっお、私は毎回、そのひず抌しの感觊で「ああ、この薬だ」ず思う。

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そしおこの手の感觊の根っこに、「砂糖は薬である」ずいう700幎前の䞀文がある。それを知っおいるからずいっお、明日の刀断が䞊手くなるわけじゃない。


ただ、この癜い粉がどれだけ長いあいだ人の圹に立っおきたかを知っおいるず、続けたくなる気持ちのほうが、よくわかっおしたう。


たぶん、それがやめにくさの正䜓だ。


効かないものをやめるのは、
そんなに難しくない。
難しいのは、効いおいるものをやめるずき。

冒頭の「これ、ただいいんですか」に私が䞀床黙っおしたったのも、迷っおいたずいうより、うたくいっおいるものを手攟す理由をその堎ですぐ蚀葉にできなかったからだず思う。

効いおいるものを、い぀やめるか。


これはたぶん、薬にかぎった話ではないず思う。

うたくいっおいるやり方ほど、
やめどきの盞談を切り出しにくい。

正盎に蚀うず、私はただ「そろそろやめたせんか」の䞀蚀を、うたく蚀えたためしがない。


みなさんは、その䞀蚀をどう切り出しおいたすか


個別のお薬のこずは、
かかり぀けの薬剀垫さんぞ。
䞀般的な疑問は、質問箱でも受けおいたす。


参考



ここたでが今回の蚘事です。
本線は、これで完結しおいたす。

ここから先は、
本線で曞いた理由のもう䞀段䞋にあるもの。

あたり栌奜のいい話ではありたせん。
だから、無料の堎所には眮かないこずにしたした。

読たなくおも、本線は欠けたせん。
私が䜕を考え、䜕を思っおいるのか、その内面を少し知りたいず思った方だけ、進んでいただけたら嬉しいです。


 
 
 
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