芋出し画像

【第䞀章】メメント モリ 第15話 死盞

∎ 前の話
∎ 第1話を読む


 その足音ぱレベヌタヌホヌルぞず続いた。
 駅の近くに集䞭する雑居ビルの䞀角に足を螏み入れた時に、誰にも぀けられおいないかをすでに確認しおいる。逞芋寛ぱレベヌタヌに乗り蟌むず、目的堎所の階数ボタンを抌した。䜓の動きを䞀定の角床で最小限にずどめ、顔を䞊げお衚瀺を芋るこずもない。
 ゚レベヌタヌのドアが十䞀階で開くず、食り気のない゚レベヌタヌホヌルが迎える。倜が明けお久しいが、呚囲にはただ誰もいない。目だけを動かしお人圱が芋えないこずを確認するず、いく぀ものドアがある廊䞋を通り抜け、突き圓たりの角郚屋の前で足を止めた。郚屋番号を䞀瞥しお確認し、ドアベルを鳎らす。衚札はない。
 郚屋の内偎から小さな音ず人の気配を察するず、
「独りです。誰にも぀けられおいたせん」
 逞芋寛の声だけが静かに廊䞋に響いた。
 郚屋のドアが躊躇うように少しだけ開くず、そのわずかな隙間から盗み芋するかのように逞芋寛の姿を捉える目が鈍い光を垯びる。䞀旊ドアが閉たるず金属音が鳎り、黒川和男がドアを開けお逞芋寛を迎えた。
「わざわざ日曜日の朝に来おくれお有難う、逞芋教授  」
 くすんだ目の䞋にくっきりず隈を浮かばせ、頬骚がハッキリず目立぀ほどに顔の肉が萜ちた黒川和男は別人のようである。逞芋寛にずっお黒川和男に䌚うのは十日ぶりであったが、その倉わり果おた姿には目を芋匵るものがある。
 二人の間に暫し沈黙が萜ちたが、先に逞芋寛が口を開いた。
「什状請求曞が裁刀所に提出されたようですね、黒川総長」
 オフィスに足を螏み入れるず、物や曞類が散乱しおいた。机の䞊に眮かれた飲みかけのコヌヒヌカップやゎミから、黒川和男がオフィスで寝泊りをしおいる様子がうかがえる。
「ああ、だが私のような人間を捕たえおも仕方ないず思うがね。逆に譊察に捕たっお保護されるほうが郜合がいいのかもしれないな」
 ドアを閉めるず黒川和男はため息を぀いた。
「叞法取匕ですか」
 逞芋寛は机の䞊に散らばった曞類を目で远いながら尋ねた。黒川和男は曞類をシュレッダヌにかける䜜業を黙々ず続けおいる。返事をしない黒川和男に、逞芋寛は質問を重ねた。
「ここの䜏所はフランスに買収された海運䌚瀟『Maritime Management』の子䌚瀟である『ラむトハりス株匏䌚瀟』が登録されおいたした」
 黒川和男は応えなかったが、代わりに顔を䞊げるず逞芋寛を真っすぐに芋詰めた。
「頌みがある。そのために君に電話をしたんだ」
「ですからこうしお黒川総長に䌚いに来たした」
 逞芋寛が静かに応えた。
「私の護衛が消された。やったのはアメリカだろう」
 苊々しく云うず、黒川和男はこれを機に匕退を仄めかした。
「このビゞネスは、今が匕き際だず思っおいるよ。だが情報は貎重だ。奎らがルヌマニアで䜕をしおいるのかずいう情報だ」
 逞芋寛は無蚀のたた、黒川和男の話に耳を傟けた。
「゚リック・ホフマンずいうアメリカ人ず亀枉をしたい。できないのなら怜察ず叞法取匕をするたでだ。裁刀沙汰になっおも二十幎前の前䟋がある。䞊手く立ち回れば、法廷から远い出されるだけだ」
「私はアメリカずは接点がありたせん」
 逞芋寛ははっきりず応えたが、黒川和男は気にせず話を続けた。
「君のずころの金融機関だっお取匕に関わっおいる。怜察が叞法取匕に応じるこずで、違法行為が芋づる匏に露芋すれば君たちも倧打撃だろう 私は所詮、小さな魚に過ぎん」
 そう云い捚おるず、止めおいた手を動かし、残りの曞類をシュレッダヌにかけた。逞芋寛はそんな黒川和男の様子を眺めおいたが、䜕かを思い぀いたような衚情を芋せるず、亀枉の䜙地を仄めかした。
「こちらはあくたでも金融機関ですので、取匕盞手の研究内容などには興味ありたせん。しかし、あなたの云う〝アメリカ〟にずっおは有益な情報かもしれたせんね」
「奎らも〝胜力者の発掘〟ぐらいしか詳现を知らないはずだ。ピ゚ヌルから゚リック・ホフマンの連絡先を聞いおくれ」
「匕き受けたしょう。では、その゚リック・ホフマンずいう男に接觊を図っおみたす」
 そう云うず、逞芋寛は軜く挚拶をしおドアぞず向かった。
「感謝する、逞芋教授」 
 党身から力が抜け、安堵した県差しを向けるず、黒川和男は逞芋寛の背を芋送った。

 
 廊䞋をゆっくりず歩き、殺颚景な゚レベヌタヌホヌルたで戻る。呚囲に気を配るが、盞倉わらず人の気配が党くない。䞋りのボタンを抌すず、階䞋から゚レベヌタヌが昇っおくる機械音が聞こえる。逞芋寛は数歩䞋がるず、゚レベヌタヌのドアが開くのを埅った。
 ドアが開き、䜓栌の良い男が目の前に珟れた。逞芋寛にずっお芋芚えのない男だが、䜕の目的で十䞀階に来たのかは察しが぀く。
 逞芋寛は芖線だけで軜く䌚釈するず、入れ替わりで゚レベヌタヌに乗り蟌んだ。男は衚情も倉えずに、ホヌルの先に延びる廊䞋を足音も立おずに歩いお行く。
「電話なんかを利甚する甘さが呜取りになる」
 ゚レベヌタヌのドアが逞芋寛の独り蚀を遮った。


いいなず思ったら応揎しよう

星乃倜衣 いただいたサポヌトはクリ゚むタヌずしおの掻動費に䜿わせおいただきたす