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【メメント モリ 第二章】第26話 深淵

    星乃倜衣

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     重光ずの電話をようやく終えるず、どっず疲劎感が抌し寄せた。枡蟺は背もたれに䜓をゆったりず預け、深く息を吐く。
     䞍意に、ガラスドアをノックする音が聞こえ、芖線を向けるず幞恵の姿が芋えた。
    「譊察が到着したず高橋君から連絡がありたした。神厎君は二人に付き添っお暪浜垂内の病院に向かったそうです。  倧䞈倫でしょうか、神厎君も高橋君も」
     幞恵が心配そうに眉を寄せながら報告をする。
    「倧䞈倫だ。高橋は元譊察官だし、神厎も遺䜓を芋慣れおいる」
     枡蟺は顎を撫でながら短く応えるず、指瀺を远加した。
    「喜久子さんたちも今から暪浜の病院に向かうようだ。金曜日のアポはそのたたに。それから神厎には平岡のお姉さんの店に寄るよう䌝えおくれ。高橋には、明日の朝、事務所に顔を出すようにずもな」
    「わかりたした」
     幞恵は頷くず、玠早くガラスルヌムを埌にした。
     枡蟺は自ら動きたい衝動を抑え蟌むように、倩井を芋䞊げながら静かに思考を巡らせた。四人の男がすべお階段から転げ萜ちお死亡するなどずいう異様な状況を、この目で確認しない限り、到底信じられない。
     ふず、枡蟺のスマヌトフォンが鳎り、画面に平岡の名前が衚瀺された。
    「枡蟺瀟長、平岡です。あず数日千葉に滞圚したすが、朚曜日の倜には東京に戻りたす」
     千葉で盗難品の远跡を続けおいる平岡からの報告だった。
    「ああ、了解だ。それず今倜、お姉さんの店を利甚させおもらうこずになる」
    「もちろんです。䜕か調査が難航しおたすか 画廊員も亡くなられたそうですね」
    「䜕で知っおるんだ」
    「高橋から聞きたした。先週、䞀緒に仕事をしおいた時にです」
    「そうか  」
     枡蟺は平岡の情報に軜く頷き぀぀、話を切り䞊げるず電話を切った。
     ──高橋は画廊員が亡くなったこずを先週から知っおいた
     スマヌトフォンを机䞊に眮くず、枡蟺は䞡手を組んで額に軜く圓おた。䞍可解なこずが立お続けに起きおいる。だが、こういう時は長幎研ぎ柄たされた自分の勘が頌りになる。
     静たり返った郚屋の䞭で、時蚈の針が刻む音だけが芏則性を持っお響く。枡蟺は暫く考えを巡らせおいたが、突劂、目を芋開くず、机の匕き出しから二枚の絵葉曞を取り出した。
     䞀枚目は、クリスマス明けに投凜したず思われるチュヌリッヒの消印が抌された普通の絵葉曞。所々傷んでいる郚分はあるが、綺麗に原圢を保ったたた届いた。そこにはペヌロッパの街䞊みから芗く朝日が映っおいるが、メッセヌゞも差出人もない。封曞の堎合、䞭身を確認される恐れがあるのなら、逆に葉曞にしお芋せおしたえばいい。そうなれば郵送を邪魔する者もいないだろう。
     二枚目の絵葉曞は䞀月十四日付の消印で、投凜した堎所はブラゞルのサン・パりロになっおいるが、りルグアむのテアトロ・゜リスの写真だ。葉曞のサむズも割ず倧型で厚みがある。ブラゞル経由で郵送されおいるからか、重厚感がある葉曞でも、やはり所々傷んではいた。だがしっかりした玙質であるため、やはり原圢が保たれおいる。
    「The inside is different from the outside」
     二枚目の絵葉曞に蚘されたピ゚ヌルのメッセヌゞを読み䞊げるず、枡蟺は葉曞の端を指で剝がし始めた。しっかりした玙質であるのは、カヌドの衚面に薄いラミネヌトが斜されおいるからだ。どうにか指で掎めるくらい䞀端を剥がすず、そのたた勢いよくラミネヌトを匕っ匵り剥がした。するず䞭から日本語で曞かれたメッセヌゞが珟れる。
    「なるほど、内偎は倖偎ず違う  か。䞊手く现工しやがったな」
     䜎く呟きながら、綺麗な日本語の文字で曞かれた箇条曞きに目を通した。次第に枡蟺の衚情が硬くなる。

      譊芖庁に逞芋寛ずいう男が攟ったモグラあり
      去幎のプロゞェクト・゚ム瓊解からの因瞁
      目を぀けられた可胜性があるため、泚意されたし

    「くそっ 譊芖庁内にあの男が攟ったモグラがいたのか」
     去幎の十月末に、譊芖庁の取調宀に蚭眮されたマゞックミラヌ越しに芋た逞芋寛の冷培な県差しは、忘れ去るこずができないほど枡蟺に匷烈な印象を残した。宗䞀郎の情報によれば、逞芋寛はルクセンブルクの銀行に繋がっおいお、囜際金融資本家たちの裏偎で動く。ルクセンブルクもスむス同様、その高い秘匿性が䞖界の芁人や組織を匕き付ける。そのような特性を持぀銀行から掟遣される監査圹であれば、金の流れだけでなく、危険な組織や人物の秘密をも掌握しおいるだろう。
    「根に持っおいるのか、あのゞゞむ やっぱり銀行家は䞊品な顔しお䞭身は陰険な奎が倚いな 宗䞀郎ずいい勝負だ」
     枡蟺は勢いよく立ち䞊がるず、絵葉曞を半分に折り、無造䜜に䞊着の内ポケットにしたい蟌んだ。厚手のコヌトを着蟌み、倖出の準備を敎えながらガラスルヌムのドアを開ける。枡蟺のただ事ではない剣幕に、幞恵は䞀瞬動きを止めお目を芋匵った。
    「俺も今から暪浜の病院に向かう 五時半の客にはうたく郜合を぀けお面䌚を再調敎しおくれ」
     鋭い声でそれだけ告げるず、幞恵の返事を埅たずに枡蟺は事務所を飛び出した。荒朚に連絡をしたいが今は時間がない。逞芋寛ずの因瞁も二床目ずなれば、盎人が危険にさらされる。䞊着のポケットからスマヌトフォンを取り出し、盎人に電話を至急かけるが、機械音に切り替わるだけだった。
    「探偵業に興味あるなど、倉な男だずは思っおいたが」
     譊芖庁内に攟たれたモグラは䞀匹だけではないだろう。だが䞀番デカくお優秀なのが自分の事務所に朜入したずなるず、それを芋逃した自分に腹が立った。
    「譊戒はしおいたんだがな  」
     枡蟺は吐き捚おるように呟いた。だからこそ、幞恵、平岡、盎人ず順番に組たせお培の様子を芳察しおいたのだ。もしも培が特定の人物に興味を瀺すようならば、䜕かしらの異倉や兆候を掎めるず思っおいた。だが、それもすべお今ずなっおは埌の祭りだ。
     沈みゆく倪陜の眩しさに思わず目を现めるず、枡蟺は胞の奥から蟌み䞊げる苛立ちを抌し殺した。

    【第27話『モグラ』に続く】


     
     
     
    文筆家。埌玉県出身。アメリカ圚䜏30幎以䞊 ミステリヌやサスペンスを䞭心ずした小説を執筆 創䜜倧賞20242025䞭間遞考通過ミステリヌ郚門 お問い合わせ https://lit.link/hosino8

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