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【メメント モリ 第二章】第24話 展望台

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     車を猛スピヌドで飛ばしおきた䞀成は、そのたた突堀の先端ぞ向かった。駐車堎内をゆっくりず車を走らせ呚囲を芋枡したが、蟺りは閑散ずしおいる。冬堎の冷たい颚が海の方から吹き抜け、平日の午埌ずいうこずもあり、停たっおいる車は数台しかない。
     䞀成はスマヌトフォンを取り出し、玲子の䜍眮を再床確認した。やはり、この呚蟺で間違いない。䞀成は車を停めるずすぐさた飛び出し、駐車堎を芋枡した。
    「玲子、無事でいおくれ  君の眪は僕の眪でもあるんだ  」
     最近、玲子の様子が少しおかしいこずを、䞀成は心の奥でうっすらず感じ取っおはいた。しかも今朝、圌女が家を出るずきに口にした蚀葉には、䜕かを決めおいるかのような響きがあった。
    『あず二幎頑匵ったら、今の生掻を止めお北海道かどこかに匕っ越さない そうすれば䞀成さんも、奜きな絵を自由に描けるず思うわ』
     思い返せばかれこれ十幎以䞊、䞀成は䜑蔵ず専属契玄し、立ち止たらずにひたすら䜜品を描き続けおきた。だが、ここに来お玲子に〝二幎〟ずいう具䜓的な数字を挙げられたのは初めおだった。
    「あれか  」
     目の前にそびえ立぀癜い塔を睚み぀けた。すでに䜑蔵はここに到着しお玲子ず䌚っお話を進めおいるだろう。䞀成は䜑蔵よりも先にたどり着きたかったが、銀座からの方が距離が近い。玲子が䜑蔵に説埗されるのではないかずいう焊りが胞を締め付ける。䞀成は唇を噛みしめるず、颚を切るように突き進んだ。シンボルタワヌぞ向かう長い階段を駆け䞊がるず、吹きすさぶ颚が顔を刺すかのようだが、立ち止たる䜙裕はない。
    「あずは展望台か  」
     展望ラりンゞを䞀呚したが、数人の人圱があるだけで玲子の姿は芋圓たらない。正確な䜍眮はわからないが、玲子がこの堎所のどこかにいるこずは間違いない。䞀成は殺颚景な展望宀の入り口をくぐるず、䞊を芋䞊げた。いったいどれだけ階段を䞊るのだろうかず想像するだけで息苊しくなるが、倖からの颚が盎接圓たらないだけでもマシだった。
     階段を半分ほど䞊ったずころで、女性の声が頭䞊からかすかに聞こえた気がした。䞀成は立ち止たり、息を敎えるず、再び駆け足で階段を駆け䞊がった。次第にはっきりず人の声が聞こえ始めるず、䞀成の錓動も倧きくなった。そしお぀いに目の前に二人の男が立ち塞がった。
    「これ以䞊は立ち入り犁止です」
     少し蚛りのある日本語で䞀人の男が告げる。䞀成は男に怯むこずなく、震える巊手を握りしめお倧声で返した。
    「ここは公共の斜蚭だ。個人が勝手に立ち入り犁止を指図するなんお蚱されない」
     䞀成の声に玲子の声が重なった。
    「䞀成さん」
     玲子の声を耳にし、䞀成は内心安堵したが、目は男たちを捉えたたただ。
    「僕は圌女の倫だ。関係者だ」
     䞀成がはっきりず云い切るず、男たちは互いに倖囜語で短く話し合いを始めた。しばらくしお、䞊から別の男の声が響いた。今床はしっかりずした日本語だった。
    「䟋の画家だ。圌を傷぀けないように」
     その蚀葉ずずもに䞀成は男たちの脇を通り抜け、最䞊階たで䞀気に駆け䞊がった。展望台には疲れた衚情を浮かべる玲子ず䜑蔵の姿があった。二人は怅子に座っおいるが、䜑蔵の髪は乱れ、口元には血が滲んでいる。殎られた際に唇を噛んだのだろう。
    「玲子 䜑蔵さん」
     䞀成が慌おお駆け寄ろうずしたその瞬間、男の䜎い声が堎を制した。
    「はじめたしお、䞀成さん。お䌚いできお光栄です。たさかご本人が足を運ばれるずは驚きたした。たあ、譊察を呌ばなかったこずは耒めおおきたしょう」
     浅黒い顔に吊り䞊がり気味の目をした四十代半ばの男が、玲子ず䜑蔵の前に立っおいる。その身なりはどこか独特で、挂う雰囲気は堅気の人間ずは思えなかった。声には䜙裕がありながら、どこか挑発的な響きがある。䞀成の焊りは䞀瞬にしお怒りに倉わった。
    「䜕が目的で、こんな真䌌をしおいるんだ」
     䞀成の怒声に、男は吊り䞊がり気味の目を现め、薄笑いを浮かべた。
    「䞉浊さんずの契玄曎新を求めおいたしおね。今はその亀枉䞭ずいうわけです」
    「曎新などせぬ。元々、今幎いっぱいの玄束だったのだ。お前たちのようなチンピラには理解できないだろうが、こちらはきちんず契玄に埓っお動いおいる。癜石事務次官は、前任の䞉宅みやけさんから䜕も孊ばなかったようだな」
     䜑蔵は乱れた髪を気にも留めず、血の滲んだ唇に䞍気味な冷笑を浮かべた。その皮肉めいた䜑蔵の蚀葉に、男の衚情が倉わった。现い目をぎら぀かせお䜑蔵を凝芖するず、䞀歩前に詰め寄る。その堎の空気が匵り詰める䞭、玲子が匷く叫んだ。
    「もうこれ以䞊はやめおください」
     その瞬間、现目の男の右手が䜑蔵を狙っお飛んできたが、䞀成が身を挺しお間に割り蟌む。拳は䞀成の巊脇をえぐり、鈍い衝撃が走った。䞀成は䜎く呻き声を䞊げながらその堎に厩れ萜ちる。
    「䞀成さん」
     玲子の悲鳎が耳に届くが、䞀成は痛みをこらえながら䜓を支え、必死に男を睚み぀けた。
    「私が癜石事務次官に盎接応じる だから玲子ず䞀成君は解攟しおくれ」
     䜑蔵は毅然ずした態床でそう云い攟぀ず、怅子から立ち䞊がった。だが、现目の男は䜑蔵の肩を匷匕に抌し戻し、再び怅子に座らせるず、䞋にいる仲間を呌び寄せた。
    「この男を癜石事務次官の䞋ぞ連れお行け」
     䜑蔵は抵抗する間もなく男たちに䞡脇を抱えられ、階段を䞋りおいく。展望台には玲子ず䞀成、そしお现目の男だけが残された。
    「さお、君たちをどう説埗すればいいかな」
     男は现い目を吊り䞊げ、薄い唇を歪めた。その執拗な県差しに、䞀成の背筋に冷たい汗が流れる。
     だが、その緊匵を匕き裂くように䞋の階から悲鳎が響き枡った。
    「ぎゃああ」
     喉の奥が朰れたような悲鳎に続き、鈍い衝撃音が階段を転げ萜ちるように響く。现目の男は慌おお階段ぞ駆け寄り、䞋を芗き蟌んだが、䜕が起きたのかは芋えない。
    「䜕をやっおいるんだ」
     怒声を飛ばすが、䞋の階から反応がない。现目の男は苛立ちを隠せず、振り返っお玲子ず䞀成を䞀瞥するず舌打ちをし、急いで階段を駆け䞋りおいった。
     䞀成はようやく玲子に向き盎り、震えそうになる声をなんずか振り絞るず、右手でそっず玲子の頬を撫でた。
    「玲子、倧䞈倫だったか」
    「はい  䞀成さんこそ  」
     玲子は掠れた声を震わせながら、䞀成の顔をじっず芋詰めた。その瞳には涙が零れ萜ちそうになっおいる。
    「僕たちは運呜共同䜓だろう。い぀も蚀っおるじゃないか」
     䞀成は埮かに笑みを浮かべるず、自嘲するように呟いた。そしお、玲子をそっず抱き寄せるず、玲子も震える腕を䌞ばし、互いの存圚を確かめ合うようにしっかりず抱きしめた。

    【第25話『死䜓の山』に続く】


     
     
     
    文筆家。埌玉県出身。アメリカ圚䜏30幎以䞊 ミステリヌやサスペンスを䞭心ずした小説を執筆 創䜜倧賞20242025䞭間遞考通過ミステリヌ郚門 お問い合わせ https://lit.link/hosino8

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