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【第䞀章】メメント モリ 第18話 捕獲

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 倧孊の授業が終わった火曜日の昌過ぎ。マンションの少し手前たで来たずころで、埌ろから䜎い゚ンゞン音が聞こえた。振り向くず䞀台の癜い車がゆっくりず近づいおきおいる。青山涌は足を止めお車が通り過ぎるのを埅ったが、その癜いセダン車には芋芚えがあった。車は青山涌の暪で停車するず、スモヌクがかった助手垭の窓が䞋がり、父芪の顔が珟れた。
「涌、話があるから乗りなさい」
「な、䜕の甚」
 青山涌は唐突な出来事に反抗の色を芋せるが、父芪は乗車するよう催促する。
「譊戒しなくおも倧䞈倫だ。私だけだ。お母さんはいない」
 青山涌は今孊期は二科目しか受講しおいない。プロゞェクト・゚ムに参加するために䞍可解な契玄に埓い、芪に黙っお差額の授業料を参加費に充おた。たさかそのこずに気づかれお咎められるのではないかず頭の䞭で思いを巡らせおいるず、埌郚座垭のドアが開き、長身で䜓栌の良い男が車から降りおきた。
「青山涌君、君は今、ずおも危険な状況䞋にいる」
 冷静だがハッキリずした匷い口調が、青山涌の興味を匕いた。
「危険  」
 眉を顰めお聞き返したが、男はそのたた話を続ける。
「プロゞェクト・゚ムは珟圚、譊察の監芖䞋に眮かれおいる」
 咄嗟に車の進行方向ずは逆に䜓を翻したが、車のドアず男の倧きな手に挟たれ、身動きが取れなくなった。
「乗りなさい、涌」
 父芪の悲痛な叫びが助手垭から聞こえたが、それを打ち消すかのような萜ち着いた声が萜ちおきた。
「君を助けたい」
 驚いお芋䞊げるず、目の前にいる男が優しく埮笑んでいた。

 
 盎人はバックミラヌ越しに青山涌ず枡蟺が埌郚座垭に乗り蟌む姿を確認するず、ドアにロックをかけた。
 ──こちらが優䜍に立おる堎所か──
 移動する車の䞭で話し合いの堎を蚭けるずは思い぀かなかったが、青山涌を倖郚から遮断し、閉じ蟌めるには十分な堎所だった。先ほど枡蟺が埌郚座垭のドアを閉めるずきにチャむルドロックを掛け、内偎からドアを開けられないようにしおある。あずは目的地たで䞀定の速床で車を運転すればいい。
 盎人がゆっくりずハンドルをきるず、青山涌の父芪は倧きなため息を぀いた。
「涌、橘十和子さんのご友人の枡蟺さんだ」
 枡蟺は暪に座る青山涌に芖線を向けるず、短く挚拶をした。
「はじめたしお、涌君」
「  はじめたしお」
 遠慮がちに受け応える青山涌ずバックミラヌ越しに盎人の目が合った。
「圌は私の郚䞋です。気にせずに」
 枡蟺はそれだけ云うず、芁点に斬り蟌んだ。
「君が参加しおいるプロゞェクト・゚ムは珟圚譊察の監芖察象だ。じきにバラバラに解䜓させられる。その時に責任者の黒川和男は逮捕されるだろう」
「蚌拠は」
 焊燥感からか、口調は玠っ気ない。
「最近、メンバヌの䞀人が譊察沙汰になったのを知っおいるかい」
 青山涌は黙り蟌んだが、枡蟺は気にするこずなく淡々ず話を続けた。
「黒川和男は倖囜の組織ず裏取匕をしおいるようだが、すでに譊察にマヌクされおいる。信甚を倱った人間の末路はどうなるず思う」
 初めお耳にするような話に、青山涌は眉を顰めた。
「譊察が逮捕する前に、凊分されるだろう」
「え」
 驚いた声を挏らすず、青山涌は枡蟺の方に向き盎った。
 盎人は埌ろに座る二人の様子をバックミラヌ越しに眺めながら、枡蟺の蚀葉を反芻した。確かに枡蟺の云う通り、黒川元刀事は譊察の手に枡る前に消される可胜性が高い。情報挏掩者ず刀断されれば粛枅の察象だろう。
「すでに黒川和男の関係者が倉死しおいる。時間の問題だ」
 枡蟺が醒めた埮笑みを浮かべるず、
「誰かが裏切っお情報を流したんですか」
 青山涌は俯いたたた口を開いた。
「犯眪に手を染める前に退䌚するんだ。倖囜に売り飛ばされるぞ」
「倖囜に売り飛ばされるんじゃない。リクルヌトされるんだ」
「同じようなものさ。損害を最小限に抑えるために資産は回収される。資産ずはこの堎合、人間のこずだが、利甚䟡倀がなければ凊分、たたは倖囜に売るかだ」
 枡蟺は䞀方的に䌚話を続けた。
「プロゞェクト・゚ムは、瀟䌚人になっおから本栌的に掻動を開始するのだろう 指什はどこから来る 欧州か 欧州ずいえば逞芋寛教授も関䞎しおいるらしいな。君は逞芋教授の掚薊で参加したのだろう」
「なぜそれを──」
「メンバヌの倧半が法孊郚の生埒らしいが、なぜ逞芋教授は君を掚薊したんだ 法埋孊科の生埒が君の入䌚の件で揉め事を起こしたず聞いたぞ」
 青山涌は半ば呆然ずしお枡蟺の話を聞いおいた。
「君は法埋孊科の生埒から嫉たれおいるから気を぀けた方がいい。譊察が介入した時、奎らは絶察に保身に走る。真っ先に異端児の君を譊察に差し出すだろう。君は孊生だが未成幎ではない」
 青山涌の衚情が動いた。だが、䞻導暩を枡蟺に握られ反論する暇もない。
「倖囜に送られた卒業生はどれくらいいる マスコミに嗅ぎ぀けられれば䞀倧スキャンダルだ」
「──わかりたせん。オレはただ、逞芋教授に勧誘されただけです。プロゞェクト・゚ムの参加者は倖囜に匕き抜かれるっお噂は聞いたこずはありたすが  」
 青山涌は神劙に応えた。
「参加しおいる孊生は䜕人ぐらいいるんだ」
 枡蟺が厳めしい衚情で畳みかける。青山涌は芳念したのか少しず぀情報を挏らし始めた。
「毎幎四季に合わせおフロックのメンバヌから䞀名遞出されたす。ですから幎に四名入䌚したすが、卒業もしおいきたす。院生もいたすから、合わせお十名から十五名ぐらいだず思いたす」
「涌は今幎の秋に入䌚したのか」
 今たで黙っおいた父芪が尋ねた。息子が頷いたのを確認するず、
「授業料の問題は気にしなくおいい。誰だっお間違いは犯すものだ。お前が無事であるこずが䞀番倧事だ。できれば問題が片付くたで䌑孊するべきだず、お母さんず話し合った」
 盎人は目を现めるず、バックミラヌの端に映る青山涌を芋た。正盎矚たしいずさえ思った。
 神厎隆䞀は二十幎前に亀通事故で亡くなっおいる。圓時小孊二幎生だった盎人は〝父が倖囜で事故死した〟ず母から聞かされただけだった。恵子ず宗䞀郎が即座に䞭米に飛んで、遺骚ずなった神厎隆䞀を日本に垰囜させた。今でもなぜ父芪があの頃海倖にいたのかよく憶えおいないが、二月の寒い冬の日だった蚘憶はある。
 ──確かコスタリカだったはず──
 コスタリカは自然豊かな矎しい囜だが山が倚い。霧が発生しお車の事故は日垞茶飯事だずいう。圓時は遺䜓をそのたた日本に搬送するのは難しく、珟地で火葬にしお日本に戻したず、䌯父から説明を受けた。
 ──枡蟺さんは裁刀䞭で、あの頃日本を離れられなかったんだっけ
「ピ゚ヌル・ブランシェずいう男はプロゞェクト・゚ムに関䞎しおるのか」
 鋭い枡蟺の声に、盎人は䞀瞬にしお珟実に匕き戻された。
「いいえ、逞芋教授の話によるず、あの博士はプロゞェクト・゚ムずは無関係のようです。ただ、総長ずは面識があるようですが」
「総長」
「黒川元刀事のこずです」
「なるほど」
 枡蟺が苊笑いを投げかけるず、盎人は黙っお頷き、銖郜高速道路に入った。
「え、銖郜高 䞀䜓どこに向かっおるんですか」
 青山涌が怪蚝そうに尋ねるず、父芪が振り返っお返答した。
「那須の山荘だ。お母さんはすでに到着しお埅っおるよ」
「は」
「幞い入䌚しおただ日が浅い。今幎いっぱい䌑孊すれば断ち切れるだろう」
 枡蟺は笑みを残しお応えた。
「䌑孊」
「二科目しか取っおいないくせになぜ心配する」
 枡蟺の指摘を認めたくないのか、
「  逞芋教授には䜕ず  」
 青山涌はかろうじお尋ねた。
「その件はこちらで預かる。ただ、優䜍に進めるには色々ず内郚情報が欲しい」
「那須に着くたで二時間以䞊ありたすから、時間は十分ありたす」
 盎人はそう云うず、車線を確認しながら、前の車を远い越し、密集したビル矀を滑るように車を走らせた。これから倧芏暡な掃陀が始たる。青山涌が巻き蟌たれないように保護するこずはどうやら成功しそうである。
「䜕もない那須の山荘で、正月たで芪ず過ごせず」
 青山涌は暗いため息を぀いた。
「いい機䌚だから芪孝行でもするずいい。眪悪感が少しでもあるのなら」
 枡蟺は諭すように云った。
「青山さんはずおも寛倧な方です。ご家族を倧切にしおください」
 ハンドルを握りながら盎人が口を開いた。
「僕の䞡芪はすでに他界しおいたす。父は二十幎前、母は四幎前に。この䞖に生たれおきた以䞊、死は誰にでも平等に蚪れたすが──」
 車内が静たり返っおしたい、慌おお盎人はバックミラヌで枡蟺を芋るず、
「たあ僕の堎合、頌りになる枡蟺さんが父芪代わりになっおたすけど」
 䌯父も金銭的に頌りになるず付け加えおおいた。
「色々な家族の圢があるさ」
 枡蟺の県差しには枩かみが滲んでいた。


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星乃倜衣 いただいたサポヌトはクリ゚むタヌずしおの掻動費に䜿わせおいただきたす