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私だけ知らなかった水無月

    「おかあさん、きょうは給食でみなづきを食べたよ」

    京都で暮らしていた頃、小学生の息子が学校から帰るなり言った。

    「みなづき?」

    献立を見ると「水無月」とある。

    8歳くらいの子から「水無月」という言葉が出るとは思わなかったので、詳しく聞いてみる。

    プルプルしている白いおもちみたいな三角形の食べ物に、甘い小豆がのっているという。

    「もちもちしていて、おいしかったよ!」

    さらに、ママ友に聞いてみると、「知らへんの?」と、あきれられる。

    京都では、6月30日の学校給食に必ず「水無月」が出るという。

    一年の折り返し地点の6月30日。これから暑い夏を迎える前に、冷たい氷に見立てた三角形の白いお餅を食べ、無病息災を願うそうだ。

    そして、白いもちもちの上にトッピングされた甘い小豆には、邪気払いの意味があるという。

    私は関東出身なので、聞いたこともなかったし、もちろん食べたこともない。

    白いもちもちの上に甘い小豆。

    ものすごく気になる。

    和菓子屋に買いに行くというと、またもやママ友が

    「そんなん、家で簡単につくれるわ!」

    と、驚くことを言う。

    しかも、牛乳パックと電子レンジでOK!と得意そうだ。

    ママ友からレシピを詳しく聞き出し、材料を見る。

    気になるメイン材料に「薄力粉と白玉粉、くず粉」とある。

    白玉粉とくず粉、なるほど、これがもちもちの正体か。

    白玉粉などでモチモチ感を出し、小麦粉で形を整える、といった感じだろう。

    そして、小粒の甘納豆。

    小豆を甘く煮る、なんて面倒なことはせず、

    「市販のお菓子売り場に売ってる甘納豆でいいんや!」

    と潔い簡略ぶり。

    さすが主婦。

    レシピを伝授され、その日のうちに早速作ってみる。

    牛乳パックに材料を混ぜ合わせた液体を流し込み、まずは電子レンジでチン。

    そこへ甘納豆を散らし、再び電子レンジへ。

    あとは牛乳パックごと冷やすだけ。

    夕食後に食べようと楽しみに、冷蔵庫の奥へ入れた。

    その日の夕食後。

    取り分けるお皿も冷やし、初めての水無月をいただく。

    これが、水無月か。

    ういろうのような食感だな、と思いながらもう一口。

    なるほど、京都の暑い夏にケーキやおまんじゅうを食べる気はしないが、このぷるぷる食感なら食べやすい。

    砂糖は入っているが、それでも若干淡白なういろう生地に、トッピングの
    甘納豆がきいている。

    ぷるぷる、つぶつぶを同時に口に入れると、ほんのり甘味を感じる。

    宮中で暑気払いに氷を食べた風習にあやかった「水無月」。

    京都の人は風流だなあ、とリビングから外を眺めていると、早めに出した風鈴がちりんと鳴った。

    ♪「わらび~もち、かき氷~」

    聞いたことのないフレーズが通り過ぎる。

    つぎはわらび餅か。

    京都の食の謎は深まるばかりだ。

    ※
    京都で教わった水無月のレシピです。
    レンジと牛乳パックで簡単に作れます。
    よろしければ、作ってみてください。



     
     
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