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【取材レポ】人生そのものが作品に宿る。第44回伝統工芸展で触れた、錺金具と江戸絽ざしの世界

    きっかけは、近所の掲示板に貼ってあったポスター。

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    偶然目に止めたポスターには「伝統工芸展」の文字。

    実は以前から伝統工芸品に興味があり、いつか自分用の江戸切子などがほしいなと思っていた。

    「近くで伝統工芸品を見られる機会って、なかなか無いし、行ってみようかな」
    「取材して記事にしたら、いつか仕事にできるかもしれない___」
    という下心も正直ありつつ、展示会へ行ってみることに。

    しかし、会場を出るころにはそんな気持ちはサッパリ消えていた。

    工芸品の奥深さ、職人さんたちのあたたかな人柄。
    すべてに引き込まれ、魅了されてしまった。

    伝統工芸展とは

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    江戸川区伝統工芸会が主催するこの展示会は、職人さんたちの傑作を間近で鑑賞できる贅沢なイベント。

    単に作品が並んでいるだけでなく、目の前で職人技が繰り広げられる「実演」や、実際にものづくりを体験できる「ワークショップ」も開催。五感を使って伝統工芸の「今」を体感できる。

    「道具も自分で作ってんだよ」錺金具職人・一ノ谷さんが見せてくれたこだわり

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    ※撮影の許可をいただいております

    カンカンカンカン!!

    会場に響き渡る、リズム良く金をたたく音。その音の正体は錺金具工芸(かざりかなぐこうげい)の実演コーナー。

    羽の形をした真鍮に手馴れた手つきで模様を入れていくのは、職人の一ノ谷禎一さん。もともと漆塗り職人のご家庭に生まれ育ち、錺金具工芸の職人は元々お仲間だったとのこと。ご縁があって弟子入りし、修行を経て独立。

    一ノ谷さんは『神輿台輪角金具』という作品で第43回伝統工芸展教育委員会章を受賞されている。

    等間隔で細かく模様をいれていく手つきに目が離せない。恐る恐る「これは何を作っているんですか?」と尋ねると、「これは、錺(かざり)だよ」と答えてくれた。

    錺金具とは、御神輿や神社などで飾られている、金属の装飾品のこと。

    「最近も、とある神社のを作ってくれって連絡がきて。そういうのを見たら、俺らみたいなのが作ってんだな〜って思い出してね。」

    そう冗談っぽく話す一ノ谷さんをよそに、私は感動していた。
    私は神社巡りが好きなので、錺金具を目にしたことはある。
    でも、誰が作っているか、なんて考えたこともなかった。

    一ノ谷さんは、作業する手つきをまじまじと見るギャラリーに、使っている道具を見せてくれた。

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    作品の完成例と自作の仕事道具たち、左の黒っぽいものがやすりを加工して作ったもの

    やすりを火であぶって叩き、道具そのものを自分の手で作り上げているという。それぞれ曲線の角度やとがり方が異なり、用途によって使い分けているそうだ。それにしてもかなりの量で、写真に映っているもの以外にもあった。

    「こっち(完成品)の羽模様はちょっと荒いんだよ、このとき時間なかったのかなぁ?今はじっくりやれるから、ほら、細かくできるんだよ。」

    そう言いながらテンポよく羽模様を入れていく。

    一ノ谷さんの確かな腕前と、あたたかな人柄に魅せられた時間を過ごした。

    伝統に触れる楽しさを知った「江戸絽ざし」ワークショップ

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    続いて体験したのが、江戸絽ざしのワークショップ。講師は川口久子さん。もともと刺繍をやりたいと思っていた川口さんが、伝統工芸のイベントでボランティアをしていたときに先生から「おいで~」と言われてお弟子入りしたとのこと。

    作っていくのは「小鳥のブローチ」。絽ざし用の生地に糸を刺していき、刺繍の要領で模様をつくっていく。しかし、糸は必ずタテ方向にしか刺せないルール。どこの穴に針を刺せばよいのかじっくり観察し、緊張しながら刺し進めていった。

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    川口先生に最後の仕上げをしてもらっているところ

    「この穴であってるのだろうか……」とはじめこそ手こずっていたが、慣れてくるとなんだか楽しい。家庭科の授業で波縫いと袋縫いを教わり、きんちゃく袋を作ったときの記憶がよみがえった。

    途中、隣に座った方とも打ち解け、雑談をしながら作品を進めていった。

    完成したものを先生に見せたところ「いいじゃん、バッチリ」とお褒めの言葉をもらい、心がふわっと明るくなる。最後の仕上げをしてもらって、ブローチの完成だ。

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    かわいい~~

    自分の手を加えた江戸絽ざしの作品。
    職人さんたちの作品やお店に並んでいるものとは比べ物にならないけれど、愛着がハンパない。

    体験自体は1000円だったが、伝統に触れる楽しさも込みと考えると、かなり破格のワークショップだ。

    職人さんたちの「人情」が、一番の収穫

    正直なところ、「職人さんたちは話しかけづらい」という印象を勝手に抱いていた。しかし、実際に話してみると、みなさん気さくで分かりやすくお話をしてくださる。予定よりも長居してしまったほどだ。

    技術の話はもちろん、弟子入りへの経緯や道具へのこだわりなど、人生そのものが作品に宿っていると感じられる話をたくさん聞けた。

    「伝統工芸品の魅力を伝える仕事がしたい」
    「職人さんへインタビューする仕事がしたい」
    そんな想いに火が灯り、じんわりと胸があたたかくなる。

    打算で足を踏み入れた展示会だったけれど、気付けば自分の「やりたいこと」に出会った場となっていた。


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