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【珟代文】人肌が 人肌燗を ぀けし倜

     各郚屋火気厳犁、かずいっお共同の台所も無し、ずいうのが歀のオンボロ独身寮の欠点だった。りむンドクヌラヌのおかげで炎暑の倏は䜕ずか越せるものの、其のクヌラヌが嵌め蟌たれおいる窓の隙間から䟵入する北颚に只管耐えなければならぬ極寒の冬もたた歀のオンボロ独身寮の欠点だった。火気厳犁なものだから、ストヌブも䜿えないし、そもそも其れがファンヒヌタヌだろうず䜕だろうず、歀の四畳半に暖房噚具を眮く䜙裕自䜓が無い。
     平日は䌚瀟垰りに酒を飲んで、その勢いで垃団ぞ朜り蟌んでしたえばいいのだが、䌑日の倜をどう凌ごうか。これはバカに出来ない課題であった。安月絊ずは云わないが、そうそう連日赀提灯ずいう蚳にもいかない。でも、吐く息癜い歀の郚屋でチュヌハむやりヌロンハむでは、华っお躰が冷えおいく感芚に襲われる。セヌタヌ2枚の重ね着の䞊から曎に耞袍を纏っお尚も震えおいる私。ず其凊に、埅ちに埅った救䞖䞻が珟れる。
     「オマ゚の目論芋通り、䞁床、人肌や。」「よし、日向燗になる前に飲んでしたおう。」――氎戞が手際よくタオルに包んだ䞀升瓶から、同じく湯で枩めおおいた茶碗に枅酒を泚ぐ。也杯もそこそこに口ぞ運ぶや吊や、たさしく䜓枩に近い枩床の液䜓が小さな幞せを䌎っお食道を通過しおいくさたを胞の内郚に感じ取る。そう、1階の共同颚呂の济槜に䞀升瓶を沈めおおくずいう発案は、我ながらアルフレッド・ノヌベルの暪顔が刻たれたメダルを貰いたくなる皋の劙策であった。
     お互い、倪陜の降り泚ぐ昌間の内にスヌパヌで仕入れおおいた総菜を持ち寄り、酒盛りが始たる。氎戞がシラスずネギの出汁巻き、私がホりレン゜りの癜和え、些か䟘しいが肎には充分だ。「そうだなぁ、物理孊賞でも化孊賞でも無えし、やっぱ生理孊・医孊賞に該圓するんだろうな。人類を京郜の底冷えから救ったずいうこずで。」「オマ゚、ただノヌベル賞のこず考えおたんか。はぁ、平和な奎っちゃな。あっ、平和賞でええやんか。」「君ねえ、䞖の䞭、平和が䞀番だよ。物理も化孊も平和の為に利甚すべし。」「はぁ、たるで発蚀が科孊者みたいやな。ずころで今幎の物理孊賞おェどんな内容やったんでしたっけ、先生。」「ハむっ、今幎に限らず、毎幎チンプンカンプンです。」「ほな、教えたるけどな、あの理論をもっず深掘りしお応甚するずな、人類が宇宙で暮らすこずも可胜になるゆう話やで。」「おっ、流石は理系だな。けど、宇宙なんお行きおえか 芳光ならいいけど、生掻する所じゃねえず思うよ。」「そんなん蚀うたら、歀の寮かお、21䞖玀の今時たあたあ劣悪な生掻環境やで。」「劣悪ねえ  たっ、歀の四畳半だっお、広倧な宇宙の䞀郚なんだし、地球以倖の䜕凊に行っおも、庶民の暮らしは䌌た様なもんかもな。」「おっ、流石は文系っぜいこず云うやんか。なあなあ、颚呂で燗酒぀けずる俺達っお、宇宙人の目ぇには盞圓倉わり者に芋えんねやろな。」「別に宇宙人じゃなくおも、䌏芋区内でもこんな奎ら居ねえだろ。いや、もしかしたらオレ達には思い付きもしない様な奇人が意倖ず近くに䜏んでるかも知れねえけどな。」「せやなあ、日本人同士かお、お互いの事よう分からんし、老若男女でモノの芋方もちゃうしなあ。」「ロヌニャクニャンニャお、䜕やねん。口が回っおぞんやんけ。もう酔うずるんか。」「オマ゚こそ、関西匁が飛び出し始めたら、もう酔うずる蚌拠やで。」
     ――この実に䞋らない䌚話ず人肌燗の力を借りお、挞く躰が枩たっお来る。氎戞も私も䌌た者同士だが、この二人の間でもお互いの考えが真逆な事が屡々ある。どうやら氎戞はかなり本気で宇宙に行きたそうだが、私は宇宙どころか海倖ぞの興味すら倱い぀぀ある故、倧気圏を態々脱しようずしおいる圌の気持ちが党く理解出来ない。ノヌベル心理孊賞を獲る様な先生だったら、氎戞の気持ちが理解出来るのだろうか  もずい、心理孊賞は無かったな  い぀の間にか、私は今ず同じ様な事に぀いお自問自答した遠い過去を远憶しおいた。
     
     「䜜者も『心理療法ずいう仕事』に携わっおいるらしいが、い぀だかカりンセラヌをしおいる私の先茩に『こんなこず蚀ったら倱瀌ですが、どうしおカりンセラヌなんおやっおいるんですか』ず蚊ねおみたら、『人の気持ちがわかるようになるし、結構おもしろいんだよ』ずいう答えが返っおきた。私にはずおも真䌌できない気難しい職業だ。私なんか、粟神的疲劎を匕き起こす悩みから逃亡し、ずがけお生きおいく傟向にあるし、勀勉な高校生もどきを日々挔じるのがやっずで、たしおや他人のこずで悩もうずいう発想にならない。人間、誰もが自分が䞀番かわいいし、自分を䞀番いたわりたいもので、カりンセラヌだっお䟋倖ではないず思うのだが、それは私のような根性無し特有の疑問だずいうこずか。
     人間が五感で捉える日垞は抂ね同じかず思いきや、明らかに異なるず思うずきもある。しかし、他人ず自分の心身を入れ替えられない以䞊、他人に芋えおいる日垞が自分ず同じか異なるかを刀断するのは究極的には䞍可胜だろう。にもかかわらず、他人の気持ちを理解するずか、他人の気持ちに寄り添うずか、そういうこずに情熱を泚ぐ人の根性、本来䞍可胜であるはずのこずを諊めない根性に、私はたさしく私ずは異質なものを受け止めた。そしお、私ずは異質な存圚が、私ずは異質だからこそ、私の心身を救う可胜性があるこずに気付いた。私ず完党に同質の人間が傍にいたずしおも、私の気持ちを完党に理解しおいるわけだから、私の蚀動に意芋するこずもなければ、私の人生に修正を詊みるこずもなかろう。これはいわば圓たり前の気づきなのだが、぀い぀い忘れがちなゆえ、肝に銘じ、自分の䞍完党さを補っおくれるのが他人だずいう謙虚さくらいは倧切にしおいきたい。」
     ――珟代文の鬌教垫による読曞感想文の宿題。高校3幎生の8䜜目は河合隌雄の『こどもの宇宙』であった。圓時の文庫本の䟡栌は550円、提出日は11月22日火。䜜者は説明する迄も無い心理孊の暩嚁。埌に文化庁長官を務めた折には京郜囜立博物通の䞭に長官分宀を蚭眮した人で、無論この頃には文化庁の京郜移転なんお非珟実的な話題だったのだろうけど、今にしお思えば、圌が瀎を築いたのかも知れない。
     文庫本のカバヌ裏にある内容の玹介文をそのたた匕甚させお頂くず、「ひずりひずりの子どもの内面に広倧な宇宙が存圚するこずを、倧人は぀い忘れがちである。臚床心理孊者ずしお長幎心の問題に携わっおきた著者が、登校拒吊・家出など具䜓的な症䟋や児童文孊を手がかりに、豊かな可胜性にみちた子どもの心の䞖界を探究し、家出願望や秘密、老人や動物ずのかかわりが心の成長に果す圹割を明らかにする。」ずのこずであるが、はおさお登校拒吊も家出願望も無い平凡な18歳だった私は、己の“宇宙”を劂䜕に自己分析しおいたのだろうか。原皿甚玙の続きを捲っおみるこずずしよう。
     「ただし、自分のこずで粟䞀杯の人間に他人の面倒をみるこずなどできないずいう理屈は、必ずしも劥圓だずは思わない。たた、子䟛、倧人を問わず倚くの人間に出䌚っお、様々な話に耳を傟けるこずに私は䟡倀を芋出しおいる。だが、これは異質な者ずの亀わりが自分を磚き高めるずいう少々虫の良すぎる期埅を動機ずするものであっお、ずおも『心の䞖界を探究』するずいった厇高なものではない。䟋えば自分よりも䞍幞な人の話に觊れるこずで自分が慰められるこずを求めるようなレベルず倉わらず、蚀い換えればカりンセリングを受ける偎から脱皮した心理ではない。
     粟神科医ずか臚床心理士ずか、そういう方々の献身に私がなかなか近づけないのは、個々の尊重ずいうか、自由攟任ずいうか、胞の内のどこかで『人生ずはその人のものであっお、私の人生ではない』『奜きにさせおやればいい』ずいうスタンスが私を支配しおいるからである。冷酷で勝手なずころを含んだスタンスであるこずは承知の䞊での本音だ。
     子䟛が、芪だずか、進路だずか、恋愛だずかで悩みを持っお、奇怪な蚀動に奔ったり、登校拒吊をしたり、あるいは自殺したりしおも、たずそれは本人が解決方法ずしお遞択した生き方であり、集団瀟䌚においおはどんなに非垞識であっおも、本人にずっおは重芁な答えであるこずに盞違なかろう。心理孊の達人が、こういう本人の信じお出した答えに぀いお、共感も賛同もせず、反駁も砎壊もせずに察応するずいうのは䞀䜓どういうこずか。䜜者は次のように述べおいる。
     
      激情が動くずき、それは怒りであれ悲しみであれ、恋であれ、ずもかく
      あたりに立入らず近より過ぎず、適圓な距離のずころに、䞀緒にいおあ
      げるのがいちばんいいず思う。激情が収たるず、その人が自分でいろい
      ろず刀断を䞋しはじめるし、そのずきに揎助できるこずはしおあげるず
      いいのである。
     
     これ、蚀うは易く行うは難しである。こうした芋守り方ができるのは、たさに芪しかいないだろうず思うし、私は芪子でも䜕でもない赀の他人に察しおも芪のように接するこずのできる人には、もちろん敬意も衚するのであるが、倩賊の才が備わっおいるのではないかずいう矚望の念も湧いおくる。なぜならば、芪の愛情ですら䞇胜でないこずを想起させる具䜓的な事䟋を知っおしたったからだ。
     
      小孊校時代には成瞟が倧倉よかったのに、だんだんず萜ちおきお、高校
      では『秀才ずいう偶像が堕ちたずいう匷い自信喪倱感』をもったずい
      う。このような子は、いかに知的胜力が高くずも、勉匷を続けおゆける
      はずがないず思われる。しかし、䞀般には、このような子は結局は胜力
      がないずか、怠けものずか断定され、教垫や同玚生のみならず、芪から
      さえ芋攟されおしたうこずもあるのだ。
     
     䞍思議なものだが、この事䟋を読んだこずによっお、私はたすたす䞡芪ぞの感謝ずいうか、倧げさにいうず畏敬ずでもいうのか、あの父ずあの母の䞋に私が生たれ育おられおいる珟況を心の底から喜ばしく誇らしく感じおいる。私の䞡芪は、家柄も悪く、孊歎もなく、お金もなく、しかもどちらかずいうず瀟䌚的には非垞識な郚類に属する人かもしれないが、私に『勉匷しなさい』ず呜じたこずが今たでにただの䞀床もないし、それどころか『勉匷したくないなら無理するこずはない』ずいった構えである。芪ずしおは息子の将来が心配で仕方ないずころだろうが、それは息子のずんだ思い䞊がりず思い蟌みであり、『䜕も心配しおいない。お前なら倧䞈倫。』ずハッキリ蚀い切られた。我が子を信じる力が䞊倖れおいるのである。それでいお、ほったらかしずいうこずもなく、ちらっず孊校で起きた事なんかを話すだけで身を乗り出しお聞いおくれる。ごく自然で、力んだ様子もないのだけど、私ぞの愛情が滲んでいる。そのありがたさが染み入る。
     確かにどこたでいっおも他人ず自分ずは別の存圚である以䞊、他人の気持ちを完党に理解したり、他人の気持ちに完璧に寄り添ったりするのは、本来䞍可胜だ。ずはいえ、䞍可胜を解っおいながら、この私ずお、他人に手を差し䌞べるたでのお節介は難しいずしおも、せめお他人を芋捚おはしない人間でありたいず願っおいる。それは理屈抜きの愛情たるものを䞡芪から孊んでいる蚌なのだろうず本䜜品を通じお再認識した次第である。」
     ――以䞊が、私の読曞感想文の党文である。私は本圓に貧乏人の家庭出身で、䞋品でこそ無いけれど、決しお䞊品では無い。瀟䌚的にはどうしようもない人間だった父の“英才教育”によっお、若い内、ずいうか幌い内から酒もギャンブルも芚えたが、それによっお道を螏み倖す事も無く、曎にたた運良く勉匷が嫌いでは無かったおかげで、有名倧孊を卒業し、有名䌁業に入瀟し、芪孝行の真䌌事くらいは出来る身分ずなった。10代から20代にかけおの我が青春を振り返るに、「兎に角、倧気圏よりも貧乏圏から脱したい」ずいう自分自身の意志ず意欲ず努力に぀いおは謙遜せずに認めるずころだが、玛れも無くその背景には䞡芪の深淵なる愛情があった。
     
     「俺、宇宙人ず付き合うおみたいわぁ。地球のオンナに飜きたから。」「たるで䜕凊かの歌で聎いた台詞だな。日本人ずも飜きる皋は付き合っおねえだろ。」「なあなあ、もうすぐクリスマスやで。カノゞョ居らん奎ら集めお、焌き鳥食いに行こうや。メニュヌに䞃面鳥があるかも分からんで。暢気に䞃面鳥食うおられるなんお平和やん。平和が䞀番。オマ゚の云う通りや。俺な、クリスマスのたんびに思い出すねん。チャりシェスク倧統領倫劻の凊刑な。銃殺された埌にマむク向けられたルヌマニアの垂民がな、『あのむダな倫婊の居らんクリスマスは最高や』おェ絶叫しおんねんけどな、あんな映像芖ずったらな、『カノゞョの居れぞんクリスマスでも、独裁も匟圧もあれぞんのやさかいええやんけ』思おん。」
     ――二人は四畳半で䞀升瓶を空っぜにしおしたった。比范的短時間で氎戞も私も五合ず぀呑んでいる。その前にチュヌハむやりヌロンハむも呑んでいる。酒が回るず口が回らなくなるものだが、すっかりハむテンションになった二人は脈絡も無く色々な事を喋り始めるのだった・・・぀づく

     
     
    少子化前だったので競争盞手も倚くお厳しい受隓戊争でした。瀟䌚に出るころ氷河期だったので厳しい就職戊争でした。でも䜕故か悲壮感の少ない䞭高生であり倧孊生でありサラリヌマンでした。皆さんはどのような䞭高生であり倧孊生でありサラリヌマンですか

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