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Photo byhidemaro2005

小説: ペトリコールの共鳴 ②

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    第二話 一途に相手を想い過ぎ


     布団から顔を出すのが、昨夜から愛羅に変わった。

     キンクマが死に、俺は掌に乗せて涙を流すと、
    「ネズミなんて汚い」
    愛羅はキンクマをトイレに流してしまった。

    「タツジュンさん、あなたは洗脳されてます。
    動物は畜生です。ペットの葬式は搾取ですよ。
    こうして自然に還すのが、普通で
    真っ当な人間がするべきことです」

     今朝までの舌足らずなしゃべり方が一変し、威圧感と攻撃的な口調へ、俺は言い返せるだけの力が抜けていた。起き抜けから全身の怠さが否めない。

     翌日、帰宅すると愛羅がここへ自分の荷物を運び入れ、遥香やキンクマが居た気配はなくなっていた。

     SNSも辞めた。モノを思考するのまで怠さが伴う。
    愛羅は大岡総理の隠し子で「パパに迷惑かける」
    身分が身分なので、愛羅が言うなら仕方ない。

     仕事はやる気のない日が続いている。午前中は適当に過ごし、午後から作業に入るが、早く帰りたい気持ちと逆行し、残業になる。定時過ぎても後輩達がまだ部署にいた。

    愛羅は俺の話を否定せず傾聴してくれた。

     家へ帰り、愛羅に愚痴を言う。愛羅は
    「タツジュンさんを配慮しない会社が悪い。
    あなたは奥さんを亡くした人。配慮されるべき。
    そんな人に通常の業務を振る上司は常識がない」

    言われてみれば、愛羅の言うとおりだ。

     テレビをつけると、ニュースで個人情報漏洩が
    大きな話題になっていた。

    「変ですよね?日本人が日本人を罰して。
    個人情報は東国に流れて、
    いつ日本は支配されるか分かりません。
    日本は東国から監視されてるのに……」

    「そうなの?」

    「タツジュンさん、知らないんですか?
    迷惑メールの殆どが個人情報漏洩です。
    企業のpcをハッキングし、個人情報を抜く。
    普通、企業は顧客データを削除するべきで、
    管理をすると、個人情報漏洩に繋がるんです」

     愛羅と暮らすようになり、社内の雰囲気まで変化を感じる。

     俺が挨拶をしても、皆がよそよそしく、
    同期や先輩は明らかに俺を避けている。
    別に会社へ友達を作りにきたんじゃない、
    愛羅がいれば、充実している。

     土曜は愛羅と少し遠くへドライブに出た。
    愛羅は自分の考えをしっかり持ち、遥香やキンクマとは正反対の価値観。清々しいほどの自己主張は、長いものに巻かれた今までの俺の生き方を斬新な色に塗り替える。

    「23時か。遅くなったな」
    マンションまで少しの場所。信号は赤になった。
    ブレーキを踏む俺に愛羅は、
    「左右から車輌が来てないのに停まるんですか」

     無言の俺に愛羅は畳み掛ける。
    「道路交通法は人が作ったルールです。
    人が人を支配しています。
    車輌が来てないと進むのが合理的じゃないですか」

     俺しか愛羅を理解できない。一心同体の心持ち。
    会社にある顧客データを消去し、営業先へ愛羅からの教えを解いて回ったばかりに解雇通達された。
    正しいことをして理不尽だ。

     愛羅は利発な女で、俺をサロンへ誘ってくれた。
    サロンでは、
    「タツジュンさん、こんにちは」
    見知らぬ女性達が温かい笑顔で親しくしてくれ、
    ため息製造機のスイッチはOFFになる。


     
     
    人の淋しさは対象によって癒される、淋しさ わたしの淋しさは 万物でも癒されない定めの淋しさ 手に握る砂が指から零れてしまう 狂人には沈黙を、佳人には微笑みを わたしはわたしの道を歩んでいるだけなのに ©️ももまろうめこのnoteは私に著作権があります 無断転載禁止です

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