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Photo byhidemaro2005

職場に新人さんがやって来た

    『借りてきた猫で武装する、 ももまろ』

     自分で意外だと思うし、自分で言うのは抵抗があるんだけど。
    わたしって、繊細さんだ。
     あっ、言っちゃった。図々しい……。ごめん。
     
     HSPや発達障害じゃない。
    だけど感覚過敏な性質で、心が固まることが割とある。再起動できる端末が羨ましいと思うほど、わたしの気持ちにはスイッチがなくて。
     
     初対面の人は、最初からタメ口。
    仕事を教えているとき、
    「ああ、はいはい」と返ってきて、心が止まる。
     
     心を観察すると、わたしは怯えていた。
    「ああ、はいはいって言われちゃった!
    怖いよぅ」心にある核がポロポロ涙を流して、
    「何か、間違ったことを言っちゃったかな」
     
     顔はなるだけ満面の笑みを浮かべる。意識して口角を最大限に上げ、
    「分からないことがあったら、すぐにおっしゃってくださいね」

     本当は
    「もう、わたしに訊かないで!傷ついちゃう」
    心にもないリップサービスする、情けなさ。
     
     一人で作業をする最中、
    「わたし、何か間違ってたかな」
    さっきの場面を何度も何度も振り返り、振り返るほど、心に生えた尻尾が下向きになる。
     
     「あっ、手元の用具が少ない」
    周りを見て、在庫が少なくなっている。

     そそくさと倉庫へ行き、箱いっぱい用具を詰めて、周りに配る。
    「そこ、置いといて」
    初対面の人に、「そこ、置いておいて」と言われて、また萎縮する。
     
     こういうとき、なぜか理想とする自分像が浮かんできて、理想を体現してみた。
    「はい」
     
     何を言われても口数少ない、ニコニコしている自分。美しい言葉遣いと仕草。
     こんなときに発揮しなくても、相手を正せばいいのに、物分かりがよい顔をしている。

     自分じゃない自分はおとなしく、優等生だ。
    借りてきた猫で武装して、相手を敵に回さないよう、ひっそりしている。
    いつもこうならいいのに。

     「ありがとう」を期待していたのかもしれない。心音が汚いわたしは、既に小屋に閉じこもり、軽く返事をして離れた。
     
     「ふぁ〜」と、あくびする音が聞こえて、わたしの肩がビクッと動いた。
     
     定時に近づく頃、今日一日のデータを出す。
    わたしの隣から延々と自慢話が聞こえる。

     「そうなんですか」「凄いですね」
    わたしは一体、何を言わされているのだろう。
    ……目が笑わない自分に気づいて、ありったけの気力で目を細めた。

     
     わたし、やっぱり無理なんだ。
    距離感が近い人。

     距離感近い人はフレンドリーだから、すぐに職場に馴染んでしまうんだよね。
    表面では、波風立てないようにしているわたしは、ただの空気。

     そして、苦手なタイプといるときが最も理想的な自分を演じている。
     好きな人の前では言葉遣いが悪いし、塩対応だったり、性格が悪い自分で居られて自己嫌悪に陥るのに。
    どうして?

     この先、職場の新人さんと上手くやっていけるのだろうか。

     上手くやらなくていい。
     黙々と仕事をし、職場の調和を重んじて動きさえすれば。これで失敗したことがない。

     それにしても、わたし、弱すぎる。
    借りてきた猫たちに守られて、今日も出勤する。

     
     
    人の淋しさは対象によって癒される、淋しさ わたしの淋しさは 万物でも癒されない定めの淋しさ 手に握る砂が指から零れてしまう 狂人には沈黙を、佳人には微笑みを わたしはわたしの道を歩んでいるだけなのに ©️ももまろうめこのnoteは私に著作権があります 無断転載禁止です

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