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Photo byhidemaro2005

キンクマハムスターが手招きした日

     思い出す。あれは自分が書いた文章だった。 
    確実に背中へ視線が当たった日。
    「これって運命なのか、偶然なのか」

     ホームセンターへ、猫のなっちゃんが食べるカリカリを買いに行く。
    時間に余裕があり、小動物のコーナーで小鳥やウサギを眺めていると、誰かがわたしを見ている気がした。

     昼下がりのホームセンターは人もまばらで、このコーナーにはわたししか居ない。
    「ジャンガリアンハムスターは親指ぐらいしかない」
    屈んでケージを覗くわたしへ視線がある。

     気のせいか、振り向くと誰もいない。
    また屈んでチンチラを見ていると視線を感じる。
    誰なんだろう? 振り向くと、
    キンクマハムスターが口をニカッと開けて、わたしへ手招きした。二本足で立ち、両手で「来い来い」する。

     手招きしたのよ。

    わたしが去年、キンクマハムスターを描いたのと、全く同じシチュエーションで、手招きした。
    こんなにシンクロするなんて……。

     ハムスターにも種類がある。親指大の小さな個体から拳大の大きな個体。毛色も様々いる中で遥香は
    「この子、横浜から来たんだって」
     ロングコートと値札に書いてある金色のキンクマハムスターは山になった藁の上へ二足で立ち、鼻をひくつかせながら宙を見ていた。

     他のハムスターは滑車を走るもの、藁で巣作りするもの、丸くなり寝ているものの中で、キンクマハムスターだけは想像しているハムスターとは異なる行動をしていた。
     キンクマハムスターは遥香を確認すると、両手で
    「来い、来い」の仕草をする。
    俺の目から見ても他のハムスターとは違った生き物に見えた。

    ペトリコールの共鳴・第十五話


     キンクマのケージの前に立つと、キンクマは網をしっかりと握り、わたしの顔を見上げた。
    「ドヤ、わし、可愛いじゃろ」

     聴こえて来そうな目や仕草へ一瞬、連れて帰ろうかと考えた。
     うちにはハムスターのケージがあり、ちょっとばかり高級なので、住み心地はよいと思う。

     キンクマの値段と説明を読むと、尻尾が欠損し、半額になっていた。
    短い尻尾が欠損なら、ますますほしい。

     わたしは完璧より、少し何か欠けた人に惹かれる習性があり、完璧な人と完璧を装う人は苦手だ。
     学力はあるが、なんとなくポテンシャルは低そうで、話にならないだろう人種はハナから遠ざけたい。
     
    「かわいいな」
    うちには既に、猫や犬もいる。
    多分、家に迎えるのは不可能だと思う。
    けれど、わたしが描いたキャラクターと同じキンクマハムスターが手招きをした。

     次回、ホームセンターに行ったら、また会えるかな。
    笑ったキンクマハムスターの顔が日常へちらつく。

    #小牧幸助さん
    #シロクマ文芸部
    #思い出す

     
     
    人の淋しさは対象によって癒される、淋しさ わたしの淋しさは 万物でも癒されない定めの淋しさ 手に握る砂が指から零れてしまう 狂人には沈黙を、佳人には微笑みを わたしはわたしの道を歩んでいるだけなのに ©️ももまろうめこのnoteは私に著作権があります 無断転載禁止です

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