あらすじ 白紙の異邦録 ―物語の外側から来た少年が結末を書き換える物語
慈雨は、異世界を観測し物語として記録する「紡ぐ一族」の生まれだった。
幼い頃から叔父が綴る異世界〈レグソン王国〉の物語を読み、とりわけ心優しい少年ランスロットに憧れて育つ。しかし、その世界は滅びる運命にあり、ランスロットもまた命を落とす未来が定められていた。
「紡ぐ者は世界へ干渉してはならない」
その禁忌を破り、叔父は慈雨の魂を物語の中へ送り込む。
転生した慈雨は、魔力器官が欠損した不完全な身体を持つ少年、レイン・モリスとして生まれた。魔力そのものが毒となる身体ゆえに貴族社会では「出来損ない」と蔑まれ、やがて名門エヴァンジェリン侯爵家へ養子として迎えられる。
そんなレインには、前世で読んだ”滅びの未来”が断片的に視える力があった。
叔父が託した『白紙の異邦録』を手掛かりに、レインは自らが物語の外側から来た存在であること、そして世界を救うため、この世界へ来ることをかつて自分で望んでいたことを知る。
やがてレインは、王国滅亡の真因が、魔法文明の繁栄の陰で積み重ねられてきた高魔力の残骸にあることを突き止める。
世界を救うため。
そして何より、ランスロットを死なせないため。
“読者”だった少年は、自ら物語の登場人物となり、運命へ抗い始める。
紡ぐ者の禁忌を越え、未来を書き換える鍵となるのは、一冊の『白紙の異邦録』。
これは、物語を読むことしかできなかった少年が、自ら結末を書き換え、愛した世界を紡ぎ直す物語である。
これはもう、誰かの物語じゃない。
ぼくはもう物語を読むだけの異邦人じゃない。
この世界で生きるひとりだ。