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そよ風日記_蜘蛛の糸_20250922

    ★
    田舎育ちの私は
    幼い頃、山や川へ行って
    たくさんの虫や水生生物を捕まえた。
    そして、ちゃんと世話もできないまま
    命を奪ってしまうということを
    毎年のように行っていた。

    小学校中学年になり
    戦争の話を聞いたり読んだりする
    うちに、自分が昆虫たちにしてきた
    ことがとても恐ろしくなって
    小さな命と関わることをやめた。

    ★
    あの頃の罪の意識はなかなか消えず
    今も家の中に現れた虫は
    ティシュでつまんで外に逃すか
    そのままにしている。

    ★
    私の主人は雪国の生まれで
    虫との接触が極端にすくなかったので
    小さな虫も大きな虫もとても嫌いである。

    部屋で虫を見つけると
    私に処理するようにいうのだが
    何度も伝えて、外に逃すことを
    認めてもらえるようになった。

    蜘蛛に関しては、
    「家の中の小蝿などを取ってくれるから」
    と説得して外に出さないことも了承済みだ。

    ★
    過去の罪悪感は消えないものの
    これまで救ってきた蜘蛛や小虫の
    数は小学生時代以来、かなり多い。

    そういうわけで私はいつも
    芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を夢想する。
    私が地獄に落ちた後、天から一筋の糸が。
    しかも何匹も救っているので
    糸が束になって縄か、綱のように丈夫な
    ものが垂れてくるのではないか、などと
    強欲なことを思ったり。

    ★
    先日、家で夫婦で食事をしていて
    蜘蛛が登場し、私は思わず、大声をあげた。
    生き物や虫になれた私だがこの時は
    かなりの驚きだった。

    天井から糸で降りてきた蜘蛛が
    まっすぐ私のご飯茶碗の中に入ったのだった。
    幸い米のないところに着地したので
    丁寧につまんでこのときばかりは
    屋外に退出いただいた。

    それから、
    「ちょっと早い、今じゃない」
    と思ったりした。
    地獄に落ちてからじゃないと。

    私は結構潔癖なところがあるので
    以前なら残り少しだった白飯を
    捨てていたとおもうが
    茶道をはじめて以来、
    限られた素材を大切にいただくことを
    何度も教えていただいていたので
    蜘蛛のことをなるべく考えないようにして
    残りの白飯を口に押し込んだ。

    (完)

     
     
     
    スタジオおはぎ所属。芸人・イラストレーターなど。

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