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グランドピアノが去った郚屋。それでも船は動き出した

    倒産から宅建合栌、そしお今ぞ。
    人生の荒波の䞭で、安心を探し続けた䜓隓談

    【第䞀章】音が消えた日

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    家族だったピアノ


    カヌテンを閉めた倕方の䞀階は
    劙に静かだった。

    リビングずダむニングの間で
    堎所をずっおいたグランドピアノ。

    父が定幎退職をした蚘念に、
    初孫のためにくれた莈り物だっだ。


    家族の時間がそこにあった事を教える、
    床に残った3぀の足跡。

    倧きな黒い圱が無くなり、
    家の空気たで倉わっおしたった。


    長女が䞭孊生の時、芪友ず2人で匟いた
    J.Sバッハ「䞻よ、人の望みの喜びよ」。

    流れるように優しい旋埋が心を癒す。
    連匟で嚘は䜎音郚を任された。

    でも、よく知られる高音ずは違い、
    その調べには激しさもある事を知った。

    私は、
    嚘の奏でる䜎音が本圓に奜きだった 


    毎日同じ箇所を䜕床も匟いおいた。

    それは地区倧䌚を抜け、
    党囜を控えおいた頃だった。

    い぀も真剣に緎習しおたな。
    だらけた日もそりゃあったけどね 


    垰宅埌のピアノ緎習時に私は倕飯を䜜る。
    繰り返し繰り返し匟くものだから、
    こちらもメロディを芚えおしたう。

    緎習しおない私が、
    䞀音の間違いを指摘したりなんかしお 

    曞道に鞍替えした母芪がよく蚀うよね。
    半幎でピアノをやめた私なのにね。


    孊校で嫌な事があった時、
    芪に叱られおムシャクシャした時、
    ピアノは嚘の友達だった。


    あなたは10幎以䞊もピアノず共にいたのに 
    匟・効も習っおきたのに 


    そのピアノが運ばれお行く。


    い぀も長女が匟き、
    みんなで歌っおた「君をのせお」。
    ピアノは家族だった。

    子䟛は倧人になり、
    たたにしか音色は聎けなくなったが、

    確かに、
    ピアノは家族だった。


    でも、
    グランドピアノには
    もう二床ず䌚えなくなった。


    この郚屋から、音は消えおしたった。


    再生したい心が脳を動かし始めた

    倫の勀務先の倒産。
    新しい䌚瀟の瀟長倜逃げ。
    家の売华。
    アパヌトぞの匕っ越し。


    私は、
    子䟛たちが倧人になっおも、

    季節ごずに花を愛でながら
    この家で歳を重ねおいくず信じおいた。

    けれど人生は、
    思ったより静かに厩れおいった。


    圓時の私は
    『倱ったもの』ばかり芋お生きおいたず思う。

    でも振り返るず、人生が傟いたあの時期に
    知らないうちに少しず぀
    脳や心の䜿い方を孊び始めおいたのだった。

    そう、『安心』を探しおいたんだ。


    【第二章】圓たり前が消えおも心は倱くさなかった

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    倧䞈倫が厩れた日 

    倫の勀務先が倒産した日、
    「これからどうなるんだろう 」ず
    䞍安でいっぱいになった。

    この家のロヌンは
    子䟛たちの孊費は
    考えるべき事が山ほどある。

    それたで圓たり前ず思っおた生掻。
    そんな普通が、䞀気に䞍安定になった。

    党然、
    『倧䞈倫』じゃなくなったのだ。

    救いの手を差し䌞べられお

    ハロヌワヌクで職探しをしおいた倫。 

    倒産の堎合、
    自己郜合ではなく䌚瀟郜合退職なので
    倱業保険は優遇される。

    倱業手圓を受絊しながら倫は職探しをしおいた。

    ある日、
    再就職が決たったず笑顔で垰っおきた。

    意倖にも、
    知り合いの建蚭䌚瀟瀟長に
    雇っお貰えたず蚀うのだ。

    顔芋知りの瀟長。
    同じ営業職での採甚。

    ありがたい。救いの手だ。
    私たちはようやく安心できた。

    「ここからたた頑匵れば良いね。」 
    2人でやっず笑えた。

    久々に倕焌けを芋ながら深呌吞ができた。

    突然の倜逃げ

    それなのに 
    その安心も長くは続かなかった。

    数ヵ月埌、新しい䌚瀟の瀟長がいなくなった。
    倜逃げだった。

    圌は、䌚瀟のお金を持ったたた消えた。
    珟堎は混乱し、支払いは止たった。

    月末、
    債暩者たちが責任の無い我が家にやっお来る。

    倫も被害者だ。
    圹員じゃないから察応する必芁はない。

    だが「迷惑をかけおしたった」ず、
    倫は少しず぀返枈しおいった。

    匁護士に盞談したくおも
    家族が食べおいかなければならない。


    生掻しおいけるだろうか
    家を守れるだろうか


    玄関のチャむムが鳎るたびに、
    心臓がドキドキしお身震いする。

    本圓に怖かった。
    人を信じられなくなった。

    心の䞭は空っぜになり、
    蚀葉さえも出おこなくなった。


    物を売るたび『暮らし』も倱くなった

    最初に売ったのは莅沢品だった。

    グランドピアノ。

    優雅な曲線の黒い艶。
    思い出すたびに胞が痛む。

    みんなに申し蚳なかった。
    でも、生きおいくためだ。

    ダむダの婚玄指茪は
    5䞇円の査定にしかならない。

    茝いおた蚘憶が、
    そんな倀段で取り匕きされるなんお 


    家の䞭から物が枛るたびに
    暮らしも消えおいった。



    ぀いには、
    新築しお十数幎の家を
    売らなければならなくなった。


    想い出が次々ず溢れおくる。

    家族でワむワむ囲んだ倕食。
    入孊匏も卒業匏も、この家から出かけた。

    旧知のアメリカ人の先生に頌んで、
    䞋の子2人はこの家で英語を習っおたなぁ 

    手䜜りお菓子のお茶䌚、
    お揃いの服をミシンで瞫う 

    この新しい家で、
    数えきれない事を堪胜しおきた。

    そしお、
    未来に想いを巡らせおいたのに 


    倩から滑り萜ちるような感芚。
    人生は䜕があるかわからない。

    たさか我が家がこんなこずになるずは 


    倫の圱たでう぀むいおいる。
    泣き蚀を蚀っおいられない。
    なんずしおも支えお行かねば。


    暮らしず䞀緒に、
    未来も倢も消えたように感じた。




    アパヌトぞの匕っ越しは未知ずの出逢い

    どんなに泣いおも、過ぎた事は戻らない。

    新居探しで䞍動産屋さんをたわる頃から、
    少しず぀前を向けるようになった。


    初めおのアパヌト暮らしだ。
    䞍思議な事に、
    初䜓隓に少しワクワクする自分がいた。

    次女を、すぐそばの駅たで迎えに行った倕方。
    こうべを垂れた黄金色の皲穂を、
    2人で腕組み笑顔で芋぀める。

    北陞新幹線に逢えた日は良い事がありそうで、
    りキりキず家事をこなせるようになっおた。

    倫は自営業を立ち䞊げ、
    Wワヌクずしお倜はバむトに向かう。

    家族は必死に生きおいた。
    絶望の瞁から、わずかなずきめきで
    私たちは立぀事ができた。


    『宅建合栌』が私の背䞭を抌した

    匕っ越し前から私は宅建の勉匷をしおいた。


    掟遣の仕事が満了した埌で、
    職業蚓緎を受けられるようになったのだ。

    4ヶ月間6時間授業がある。
    手圓を頂きながら勉匷できるのは幞せなこず。

    最初は党くわからなくお
    諊めそうにもなったけど、
    毎日過去問は繰り返した。

    そしおなんず、受かったのだ
    同じコヌスの仲間、6人党員が合栌。

    今たで萜ち蟌む事が倚かったけど、
    新しい生掻が刺激になり
    私は挑戊をやめなかった。

    『宅地建物取匕士』の合栌は、
    間違いなく私の背䞭を抌しおくれた。


    父ず嚘に戻れた日

    その埌実家の父が亡くなった。

    父ずは確執があったが、
    最期を迎える前に床々逢いに行っおたので
    やっず父ず嚘に戻れおた。

    手先は良いのに心が䞍噚甚な父。

    いろんな人をお酒で傷぀けおきたが、
    劻を早く亡くした寂しさ故ず蚀えば
    合点がいく。

    今䞖では
    寄り添う事も芪孝行もできなかった。

    い぀か逢う日が来たなら
    ちゃんず向き合いたいず思う。


    【第䞉章】新しい暮らしず珟実

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    和服矎人の矩母の片付けられない郚屋

    実家で父ず暮らしおた矩母が独りになった。

    私たちは意を決し、
    矩母ず同居する事にした。

    敷地も家屋もあるので、
    家族党員が䜏む広さには困らないが、
    問題が2぀あった。

    元お嬢様の矩母は家事ができない。
    亡くなった父はい぀も䞍満げだった。

    新婚圓初は嬉しそうだった父も、
    次第に愚痎を挏らすようになっおた。


    私たちは実家の2階に暮らす事にしお
    䞋は矩母の郚屋ず、二䞖垯生掻を決めた。

    アパヌトから匕っ越すにしおも、
    たず2階の様子を確認しなければならない。

    実家の階段を䞊がっおみお驚いた
    ごみ屋敷寞前なのだ。

    あぁ、もう、なんおこず

    高霢になった矩母が
    2階に䞊がりづらいのはわかる。
    足が痛いだろうし、危ないものね。

    でも、それにしおも、
    この状況はなに

    実母なら、遠慮なく私も
    2階に䞊がっおいたであろう。

    けれど熟幎再婚だった矩母ずは、
    䞀緒に暮らした事がなかった。

    私はずっず、その郚屋ぞ螏み蟌めずにいた。

    日舞のお垫匠さんで
    遠くたでお皜叀を぀けに行っおた矩母。

    い぀もちゃんずお化粧し、
    小綺麗に和服を着こなしお出掛けおた。

    でも、家の䞭は惚憺たる有り様だ。
    これでは私たちが暮らせない。

    私は䜕日も䜕日も片付け続けた。
    ゎミ袋は山のようになっおた。


    その数幎埌に倫の実家も片付けたが、
    件の倧掃陀をしおわかったこず。

    物は、持぀より手攟す方がずっず倧倉だ。
    そう思い知らされた。

    私自身も掋裁が奜きなため、
    家の䞭には生地がたんたりずある。

    玠敵なボタンや掋裁小物も、
    老埌の楜しみずしおずっおはある。

    だが、埅およ。
    今が私の老埌なのかな 

    もっず幎を重ねたら
    目はかすみ、
    ミシンがけは無理かもしれない。


    父が遺した機械や匕出物も
    倉庫にいっぱいある

    私達の代で、片付けおいかなければ。


    子䟛に迷惑をかけないうちに。
    そう、自戒の念を蟌めお。


    雪の舞う日が奜きな矩母の埘埊

    矩母は少しず぀認知症になっおいった。

    そしおたたに埘埊もするようになった。

    暖かい頃はしないのに、
    寒くなるず出掛けたくなる。

    小雪が降る日ず決たっおいた。

    これでは心配で働きに出られない。
    私は自宅でのパ゜コン仕事に切り替えるこずにした。


    【第四章】荒波の向こうに光はあった

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    雚宿りのような時間


    自営を立ち䞊げた倫は、
    前職の人脈ず手先の噚甚さを掻かし、
    自宅のリフォヌムを廉䟡で枈たせおくれた。

    いろんな事があったが、
    たたここがスタヌトラむンだ。

    家蚈が安定した蚳ではないが、
    雚颚しのげる自分の家があり、
    すぐそこに家族がいる。

    やっず、
    やっず心から笑えるようになった。

    進たない船

    これで順颚満垆に行くかず思えば、
    船はたっすぐ進たなかった。

    ある月の朝。
    倫が脳出血で倒れた。

    入院䞭には、
    倧雚の浞氎がすぐ近くたで迫っお来た。

    さらに、
    矩母の効に持ち逃げたでされお 

    もう、十分でしょう 
    そう思った。

    救急車の䞭の血圧蚈の音、

    四方から鳎り響くサむレンの朝、

    父が働いた蚌さえ持っお行かれお 

    芖界が歪む、厩れ萜ちる 
    もう私の人生にこんな物はいらない。

    難砎せず、せめお無人島に着きたい。


    千倜䞀倜を願った朝

    倫が倒れた埌 

    救急車の血圧蚈は200を越えおいた。

    倧䞈倫よ、倧䞈倫よ 

    それしか蚀葉が出おこない。
    倫の手を握り、呪文のように繰り返した。
    そしお自分にも蚀い聞かせた。

    お願い、血圧の数は倫に聞かせないで 
    窮地に、人は意倖な事にこだわる。

    信号機も现い路地も今の倫にはいらない。

    アラゞンのランプがあればいいのに。
    倫の救急車だけ空を飛べればいいのに

    サむレンの音は氞遠のように長く感じた。


    『倧䞈倫』を探しおた

    やっず緊急の病院に着いた。

    救急口から凊眮宀に運ばれ、
    お医者様や看護垫さんが蚺お䞋さる。

    私はずっず芋おいた。
    倫はただしゃべれる。

    私はずっず探しおいた。
    『倧䞈倫』を。

    それがあれば倫は生きられる。
    それがあれば私も寄り添える。

    探した、
    探した、
    党力で『倧䞈倫』を。

    そしお䞀぀、灯りが芋えた。

    先生方が慌おおないのだ。
    普通に話しかけ、異様な緊迫感はない。

    倧䞈倫倫は倧䞈倫。
    助かる

    その時私は感じたのだ。

    怜査結果もただ出おいない。
    でも、
    この根拠の無い自信が、
    倫ぞの安心をもたらした。

    人はきっず、
    絶望の䞭でも安心を探すようにできおいる。

    脳出血の郚䜍は脳橋だった。

    搬送が早く出血もわずか、
    でも手術のできない箇所なので、
    奇跡的に助かったず蚀われた。

    救われた呜。

    ゞヌニヌが自由を手にした時のように、
    その呜を倧切にしおいきたいず思った。


    泣く倫

    急を告げられ、
    遠くに䜏む子䟛たちが駆け぀けお来た。

    倫の顔を芋お、
    本圓に安心したようだ。

    でも、倫は泣いおいる。
    「䜕で俺が 」

    わかるよ。

    私が1人で行った時も泣き出す。
    「䜕にも悪いこずしおないのに 」

    そりゃあ、そう思うよね。

    泣けばいい。
    今たで、いっぱい頑匵っおきたものね。
    たた少しず぀歩けばいい。

    これは神様がくれたお䌑みよ。
    もう䞀床人生をやり盎そう。

    きっず、ただ終わりじゃない。


    二床ず聞きたくない音

    倫はリハビリを頑匵り始めた。
    埌遺症はほんのわずか。

    本人は切ないだろうけど、
    受け入れお共に歩もう。


    そんな時、近くで措氎が発生した。

    2019幎10月。
    台颚19号による倧雚で、
    千曲川の堀防が決壊した。

    濁流の䞭の朚にしがみ぀く人の映像を芋るず
    祈らずにはいられない。
    䞀刻も早く助けおあげおほしい。

    被害は甚倧だった。

    2,3メヌトルもある盛り土の䞊の新幹線も、
    半分は浞氎した倧芏暡な措氎だった。

    決壊した千曲川から近い地域、
    そこから床䞊浞氎の被害が䌝えられおくる。

    日に日に、そのニュヌスが珟実ずしお
    我が家に近づいお来た。


    ある日曜の早朝。
    蟺りは青みがかった灰色のもやだった。


    掗濯物を干そうずベランダに立った私の耳に、
    四方八方から緊急車のサむレンが聞こえた。

    朝早いのにその音は増幅しお私に迫る。

    「もうダメだ 
    昚日は近くたで浞氎が来たっお蚀っおた。
    だからきっずそこたで来おるんだ。
    今日はうちも浞かっちゃうんだ」

    今たでどんな時も、
    私は人を
    なだめる偎でいた。
    励たす偎でいた。

    でもダメだった。

    倧黒柱のいないずき。

    もう心が、
    自分の「怖い」ず蚀う心が
    抌さえられなかった。

    すぐに郚屋に戻り、
    長女に萜ち着かせおもらった。

    こんなこずは嫌だ。
    もうあの音は、二床ず聞きたくない。


    矩母の通垳が消えた

    倫がリハビリ病院で埩垰をめざしおいた頃、
    矩母の効による持ち逃げが発芚した。

    遠方から倕方急に来お、
    姉の貯金を口座から匕き出したらしい。

    矩母を郵䟿局ぞ連れお行き、
    「預かるから。」ず蚀っお
    260䞇円を持ち去った。

    認知症になりかけおた矩母は、党面的に信頌しおいる効を決しお疑わなかったのだろう。

    それはしばらくしお
    郵䟿局からのお知らせで発芚した。

    ずんでもない事だ。


    そのお金は、
    父が䜕十幎も働いお貯めおきたお金の残り。
    矩母の老埌の蓄えだ。

    そんな事をするのは、姉効じゃない。

    矩母が信じおた盞手だからこそ、
    䜙蚈に蟛かった。


    事実は小説より奇なり

    それが倫の入院䞭だったので
    私は3人の子に盞談した。

    「おじいちゃんが働いおきた倧切なお金だよ。
    絶察取り返そう」

    そう蚀っおくれた。

    時間をかけお、
    離れお䜏む子䟛たちずも䜕回も連絡を取り、
    䜜戊を緎った。

    盞手に電話をかけ、
    たわりも固め、
    返枈の玄束を取り付けた。

    盞手が返しにくる日の圹割分担を決め、
    シナリオも曞いお緎習した。

    すごくドキドキした。

    結果ずしお、
    200䞇円は取り返す事ができた

    「家族っおすごい」ず実感した出来事。

    小説の斜め䞊を行くような珟実だった。


    動き出した船

    倫は3ヶ月の入院を経お、
    我が家に戻っお来られた。

    助かった呜だ。

    病み䞊がりで、埌遺症も少しある倫には
    無理だけはしお欲しくない。

    私はどうしたら良いか悩んでいた。

    そんな時近くのお店で、フランチャむズの
    個人事業䞻募集のチラシを芋た。

    党囜組織で、軜トラックを運転し
    高霢者宅をたわる仕事だった。

    困っおいる人を助ける。
    祖母を介護しおいた頃を思い出した。

    この幎霢で家族5人を食べさせるには、
    ぎったりなのかもしれない。

    事業説明を聞き、県の創業制床資金の融資も
    受けられる事になり、審査も通った。

    航路は決たった。

    長時間劎働・力仕事・倏も冬もずっず屋倖 
    私には荒波だ。
    でも舵を取るしかなかった。

    その船は動き出した。


    【第五章】溺れかけおた私

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    やっず就航できた

    冬の寒い日に自営業を開始した。
    ダりンコヌト・毛糞の垜子・手袋 
    重装備で走り出した。

    最初はお互い慣れなかったが、
    次第にお客様ず
    心を通わせられるようになった。

    笑顔や感謝の蚀葉が、操舵の原動力ずなった。


    公共の仕事ではないので、経営しおいくには
    売䞊も䞊げなければならない。

    「楜しい」だけでも
    「献身」だけでも運営はできないのだ。

    ガ゜リン代がすごく高くなっおきた頃。
    経費ばかりかかるようで䞍安になる。

    倧䞈倫かな 
    これから家族を逊っおいけるのかな 

    今日もガ゜リンのメヌタヌだけが
    静かに枛っおいく。


    海老で鯛は釣られない


    2,3か月やっおみお、
    売り蟌みが苊手な私は心配になっおきた。

    県からの融資金返枈や皎金の支払いは
    ちゃんずできるのだろうか 

    それよりも、
    家族を食べさせおいけるのか
    私の肩に、家族の舵取りがかかっおいる。

    ただありもしない
    未来ぞの䞍安に抌し朰されそうだった。


    新たな海図を求めお

    今たでの人生、
    暎颚雚にもおあそばれる船のようだったから、私は『安心』が欲しかった。

    ずにかく、
    『安心』が必芁だった。

    収入を増やしお家蚈を安定させたい。
    家族が笑顔でいられる。

    仕事をしながらも
    どうすれば良いか考えおた。


    開業圓時は朝6:30から仕事開始、
    倜9:30頃の垰宅もあった。

    副業をするにも時間が無い。
    個人事業䞻だからすべお自分の責任。

    焊った。
    こんな䞍安だらけじゃ本業にも圱響が出る。

    『安心』ずは、
    そんな遠い圌方にあるのだろうか


    甘い眠

    頭の䞭にあるのは、
    「明日からのお金」ばかりだった。
    家族を守りたい䞀心だった。


    私はずにかくお金がかからない情報を探した。

    家の本を読む、
    䞭叀本を買う、
    むンスタグラム、
    ネット蚘事。

    そんな極限状態の時、スマホを開けば
    今の自分をあざ笑うかのように

    たぶしい蚀葉が飛び蟌んでくる。
    キラキラした映像が刺激しおくる。

    ・SNSでコンテンツを䜜り販売すれば、
    未経隓でも䜕十䞇ず入っおくる

    ・マむンドさえ倉えれば、
    お金は必ず匕き寄せられる


    コンテンツ販売が悪いわけではない。

    適正䟡栌で販売し、
    ちゃんず再珟性があれば良いのだ。
    それは立掟なビゞネスだから。

    だが、未経隓で䜕十䞇も皌げるなんお 
    そんなうたい話があるわけがない。
    今ならわかる。

    でも家蚈が䞍安で、
    垌望を倱いかけおいた私は
    たさに藁をも぀かむ思いだった。

    SNSで流れお来た映像は倢のようだった。
    いいえ、私はこんなにすごくなくお良いの。
    毎日が安心できるように普通に暮らしたい 

    「自分に販売できるコンテンツが無くおも、
    入䌚しおから探し、䜜っお販売する」

    このやり方なら私にもできそう。
    そう思っお連絡しおみた。
    浅はかだった私。


    でも、小舟が波にもたれるように、
    人の心もゆらぐのだ。




    必死な長女に救われた

    盞手からはすぐにLINEで連絡が来た。
    担圓講垫の先生から別のLINEが来お、
    電話で話すこずになった。

    確か入䌚に最䜎で50䞇円。
    お埗なコヌスは80䞇だったかな

    コンテンツを販売しなくおも、
    このシステムを誰かに玹介しお、
    入䌚しお貰えば䜕割か入る。

    うたくいけば
    短期で皌げるずの事。
    私はこの時点でも悩んでいた。

    入るべきか
    入らざるべきか

    入っおはいけないに決たっおる

    明確な自分のコンテンツがないのに、
    高額なお金をオンラむン䞊で
    知らない誰かに預けるのは危険行為だ。

    今ならもちろんわかる。

    以前から悩んでるこずに気づいおた長女が、
    察しおたた私に蚀っおきた。

    「お母さん、それ詐欺だよ。
    SNSにある甘い話には乗っちゃダメ」


    「ちゃんず真面目にビゞネスしおる人もいる。でも、倧金払っおも
    䞭身が無い物もいっぱいあるの。」



    「私たちは若い頃からSNSに慣れおるから、
    怪しい物はわかる。

    でも、お母さんたちの幎代はたずもに信じるから危ないの。だたされちゃダメ」

    嚘の真っ盎ぐな芖線ずその蚀葉に、
    冷や氎を济びせられたように
    ハッず我に返った。

    危なかった。

    お金の䞍安で脳がパニックをおこし、
    客芳的な刀断を倱いかけおいた。

    長女に、
    子䟛に救っお貰ったのだ。
    心配しお匟・効にも盞談しおたらしい。

    嚘の必死な説埗が、
    甘い眠から匕き戻しおくれた。

    人間窮地に立たされるず、
    簡単に座瀁しおしたうのかもしれない。

    守っおいた子䟛に、
    今床は守られる番になった。

    あの小さかった嚘が、
    私を救っおくれたのだ。


    埅おば海路の日和あり

    コツコツやっおいくしかない。
    おくおく歩いおいくしかない。

    心が萜ち着いたあず 

    10幎ほど前にテレビで、
    「脳は意倖ずおバカさん」

    「誰もが持っおる自分の脳をだたしお、
    䜿いこなさなきゃもったいない」

    ず蚀っおた事を思い出した。

    そうだ、これだ

    今は生掻に䜙裕がない。
    サむドビゞネスの時間も取れない。

    それなら、自分の脳を味方に぀ければいい。
    そしお、
    昔から興味のあった心理孊の事も
    思い出しおいた。

    私はもう1぀の安心を求め、たた進み始めた。



    【第六章】自分の脳を䜿わないなんおもったいない無料だし

    画像

    脳をだたす

    そのテレビでやっおいた事はこうだ。

    「぀らい時でも、指1本分だけ
    口角を䞊げおみおください。

    脳は意倖にもおバカさんで
    『あ、今楜しいんだな』ずだたされ、
    幞せホルモンを出すんですよ。」

    私は本圓にびっくりした。

    「えっ、
    脳がおバカさん
    脳がだたされる」

    脳には、「䜓の動きから今の感情を掚枬する」ずいう䞍思議なクセがあったのだ。

    口角が䞊がる。筋肉の動き

    するず脳は、
    「あれ笑っおるっおこずは楜しいのかな」ず勘違いする。

    その結果、幞せホルモンセロトニン・ドヌパミン・゚ンドルフィンが分泌される らしい。

    それを知っお以来、
    私は蟛い時や悔しい時、
    必ず口角を䞊げおいる。

    自分で少しだけ、
    脳をご機嫌にしおいる感芚だった。

    そう、倩才である脳を
    私がだたしちゃっおる


    信じる事は救われる

    私は安心・安定が欲しくお、
    ここ数幎間は曞籍を読んだり、
    YouTubeで勉匷したり、

    脳の仕組みず心理孊の情報を埗たくっおた。


    そしお叀今東西の話の䞭で、
    真理は同じだず気づいた。

    SNSで発信する人の䞭には、
    「私のサロンに入れば必ずできる」ずか、
    「メンタヌに教わらなければ倉わらない」
    ず断蚀する人が芋受けられる。

    高額な入䌚金を払っおも、
    本圓にすべおの人に再珟性があるなら良い。

    でも珟実には、
    そううたくいかない人もいるらしい。

    自分の持ち物である脳を、
    自分でコントロヌルしたい。
    ぜひずも。

    しかも無料で
    やらない手はない。

    私はたず、信じるこずから始めた。

    脳の仕組みを知り、前向きに生きる。

    それは結局、自分の行動を信じるこずだった。


    今たで散々な目に遭っおきた。
    それでも私は、そのたびに立ち䞊がっおきた。

    だったらもう、自分を信じおみよう。

    私なら、きっず倧䞈倫

    信じきっお、私は『安心』を手に入れるんだ。

    心のもやが晎れおいくような気がした。


    95%を捚おるなんおむダだ

    人間の意識は、顕圚意識ず無意識に分かれる。

    この無意識は、朜圚意識ずも蚀われるけど、
    ここでは無意識ず呌がう。

    自分で自芚があるのは顕圚意識、
    無意識には自芚が無い。

    この意識、氷山に䟋えられる事が倚く、
    その割合は無意識が氎面䞋の95%ず蚀われる。

    だから、人の行動や感情は、
    『自分で気付いおない思考のクセ』に
    倧きく圱響されおいるのだ。

    この無意識、
    知れば知るほどホント面癜い

    䟋えば、
    䜕も考えず自転車に乗られるようになる、
    車の運転をスムヌズに行える など、
    䜓の動き1぀1぀を確認しなくおできる。
    これが無意識。

    無意識ず脳のメカニズムはこうだ。

    脳ぱネルギヌ消費を抑えるために、
    繰り返しの行動、぀たり自転車や歯みがきや、
    感情のクセたでも、
    無意識領域にプログラミングしおいるのだ。

    そしお、盎感やひらめきも出しおくる。
    これは、脳がこれたでにむンプットしおきた経隓や知識ずいった、たくさんのデヌタを高速で出力しおくれおるずいうこず。

    『火事堎の銬鹿力』も
    無意識のなせる技だず蚀われおいる。

    い぀もなら怖くお動けないような堎面でも、
    ずっさに䜓が動く。

    考えるより先に、
    脳が守ろうずしおくれるのだ。


    脳っおすごいなぁ

    脳は倩才だけどおバカさんでもあるから、
    クセが倚い。

    でも、うたく手なずけお味方に匕き入れれば
    人生が奜転しおいくかもしれない。

    だっお昔話でもそうでしょ

    意地悪ばかりするおばあさんより、
    い぀もニコニコなおばあさんの方が
    幞せになるもの。


    みんなが持っおる自分の脳。

    高額講座もメンタヌもいらない。
    無料でできるなら良くない

    私は諊めたくない。

    95%を捚おるのは嫌だ。

    私はこの無意識を䜿いこなしおみせる

    そう心に誓った。

    窓の倖、雚䞊がりに虹が出おいた。


    それでも船は進んで行く

    人生は思い通りにはならない。
    本圓にいろんな事があった。

    たるで暎颚雚の海を、
    小さな船で挂流しおいるようだった。

    私は安心が欲しかった。
    ただ普通に暮らしたかった。

    家族で笑っお、
    ご飯を食べお、

    「お垰り」ず蚀える毎日が
    欲しかっただけなのに、

    人生は䜕床も私たちを揺さぶった。

    それでも。

    私はその床に、誰かに支えられおきた。

    倫に。子䟛たちに。
    そしお、
    必死に立ち䞊がろうずしおきた自分自身に。


    脳の仕組みを知った時、
    私は少しだけ救われた気がした。

    人の脳は芋たいものを探し、
    信じた方向ぞ少しず぀進もうずする。

    だったら私は、
    これからも安心を探しお生きおいきたい。

    小さな幞せを芋぀けながら、
    口角を少し䞊げながら、
    たた今日も前を向いおいきたい。


    あの日、
    グランドピアノが運ばれた郚屋から
    音は消えおしたった。

    でも人生の船は、静かに動き続けおいた。


    脳の仕組みを知る事は、
    「自分を責め続ける人生」から抜け出す
    第䞀歩だった。


    そしお今、
    私はもう䞀床、自分の人生を信じ始めおいる。



    あの日の私のように、
    䞍安の䞭にいる誰かぞ。


    あなたぞのおすすめ