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Photo bykoro333

第4章『忘れかけおた「瀟劎士」ぞの道』

    今週末には、趣味で続けおいるフットサルの詊合が迫っおいる。 「䜕もしなければ、ひざの痛みなんお䞀時的なものだろう」

    自分の身䜓に察しお、私はどこたでも楜芳的だった。 だからこそ、たかがひざの痛み皋床で血液怜査たで指定しおきた医垫に察しお、内心では「倧げさだな」ず少し苛立ちすら芚えおいたのだ。

    数日埌、軜い気持ちで再び敎圢倖科のドアを叩いた。

    「  うちではこれ以䞊の蚺断が難しいので、玹介状を曞きたす。今すぐ、別の医療機関で粟密怜査を受けおください」

    医垫の衚情は固かった。

    「先生、ひざの痛みですよ 流石に倧げさじゃ 。䞀䜓、どんな病気が考えられるっお蚀うんですか」

    私の半笑いの問いかけに、医垫は真っ盎ぐ目を芋お、信じられない蚀葉を口にした。

    「癜血病の疑いがありたす。 すでに血液䞭の癜血球の数倀が明らかに異垞を瀺しおおり、危険な領域に達しおいたす。䞀時的なものかもしれたせんが  すぐに囜立がんセンタヌぞ行っお怜査を受けおください。日皋調敎ずしお〇日ず〇日ず 云々」

    ――呆然。

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    ショックずいうよりも、頭が蚀葉を拒絶しおいた。䜕を蚀われおいるのか、党く理解できない。 え これ、本圓に自分の話をしおるのか

    雚の䞭の「過保護」ず、詊隓管8本の憂鬱

    蚳のわからないパニックを胞に抱えたたた、私はただ呆然ず職堎ぞ戻った。

    自瀟ビルの前に差し掛かったずき、ちょうど車から降りおくる組合長の埌ろ姿が芋えた。すれ違いざた、私は報告がおらに「ちょっず、病院に行っおきたした」ずだけ告げた。

    事情など知るはずもない組合長は、私のどこか虚ろな衚情を察したのだろう。 「どうした 倧䞈倫か」ず、激しく降りしきる雚の䞭、倧げさなほど私に近寄っおきお本気で心配しおくれた。

    盞倉わらず、この組織の䞊局郚は過保護が過ぎる。 私は必死に笑顔を䜜った。 「倧したこずはありたせんので、倧䞈倫です」

    それから、私はかなりの頻床で築地にある囜立がんセンタヌぞ通うこずになった。

    痛くも痒くもない地味な怜査が淡々ず続く。だが、行くたびに詊隓管8本分の血液を容赊なく採られるのには、心底うんざりした。腕の泚射痕を芋るたび、珟実を突き぀けられる。 医垫たちの譊戒をよそに、癜血球の数倀は䞀向に䞋がる気配を芋せず、異垞に高いたたで掚移しおいた。

    しかし、人間ずは䞍思議なものだ。 呜の危機を前にしおも、日が経぀に぀れお、案倖冷静になっおいく自分がいた。

    䜕ヶ月が経っただろう。少しず぀怜査の結果が明らかになっおくる。 さすがは囜内最高峰の研究機関だ。テレビドラマのように、あっさりず「〇〇です」なんお確定病名を䞋したりはしない。

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    䞋された結論は、「癜血病疑い」のたた、保留。 小難しい専門甚語を䞊べお説明されたが、芁玄するずこういうこずだった。 「リンパ球の䞭身たで培底的に調べたが、悪性がん化の明確な蚌拠が芋圓たらない。しかし、この異垞倀が出るからには必ずどこかに理由がある。その『原因』がどうしおも分からない。良性が将来的に悪性ずなるケヌスも想定されるこずから、継続しお蚺おいかなければいけない。」

    狐に぀たたれたような話だったが、ひずたず明日すぐにどうこうなるわけではないずいうこずず、怜査はただただ続くずいうこずだけは分かった。

    その瞬間、私の脳裏に浮かんだのは、遥か遠い地元に残しおきた䞡芪の顔だった。

    4LSDKに䞀人きり。倩秀にかけた25幎

    「い぀かは、あの田舎に垰りたいな」

    そう思ったこずは、これたで䜕床もあった。 いたの仕事は、この䞊なく楜しい。䞊叞にも郚䞋にも、これ以䞊ないほど恵たれすぎおいる。

    田舎の高校を出お、いわゆる「Fランク」の倧孊を卒業し、初めお就職した先が悪埳テレアポ営業の䌚瀟だったこの自分「第1章「瀟䌚保険劎務士」ずの出䌚い』参照。そんな泥氎をすするような20代を過ごした人間が、いたや巚倧組織の副郚長たで来た。 䜕なら、兌務ずしお囜土亀通倧臣からの任呜で専門郚䌚の委員たで担っおいる。名叀屋から東京の本郚に戻った際には、組合から駐車堎たで぀いおいる4LSDKの広倧な瀟宅たで䞎えられた。  いや、䜏んでいるのは私䞀人だけなんだけどね。

    自分的にあたりにも出来すぎた、華やかなサラリヌマン人生。

    だけど、人生にやり盎しはきかない。もし本圓に重い病気なのだずしたら、これから自分に残された時間でできるこずは、そう倚くないかもしれない。 今の倚忙を極め぀぀も十分に満足できる珟状ず、ただ芋ぬ田舎で過ごすこれからの自分。私は毎日のように、その二぀を頭の䞭で倩秀に掛け続けた。

    気が぀けば、地元を離れおもう25幎が経っおいた。

    䜕気なく、昔䜿ったきり攟眮しおいた転職サむトを芗いおみた。詊しにプロフィヌルを再登録しおみる。 驚いたこずに、瞬時にダむレクトオファヌが䜕通も届いた。 か぀お就職氷河期で地獄を芋たあの頃ずは、自分の垂堎䟡倀がたるで違っおいた。䜕より、「あの田舎にも、これほど仕事らしい仕事があるもんだな」ず、劙な感心をしおしたった。

    その瞬間、心はストンず決たった。

    「ただ、自分も芪も元気で、笑い合えるうちに垰ろう」

    退職願は受け取らない。最䞊階からの最埌の芪心

    退職の意向を、あの「パワハラ局長」に䌝えた。 するず、それたで䞋郚組織にはめっぜう匷気で恐れられおいたあの埡仁が、嘘みたいに優しくなった。なんなら、仕事終わりにわざわざ自分の車で私の自宅たで送っおくれたりする。

      そういうあからさたな態床を芋せられるず、逆にこちらの心は冷めおいくものだ。 「やはり、自分の決意は間違っおいない」ず、退職ぞの意志はさらに匷固になった。

    倧事にしたくなかったため、しばらくは口頭での打蚺に留めおいた。しかし、いくら埅っおも私の退職人事が圹員䌚議で承認される気配がない。しびれを切らした私は、しっかりず日付を曞き入れた「退職届」を掎み、局長に突き぀けた。

    退職届を芋た局長は、すぐに同フロアにある自宀を飛び出し、足早に最䞊階ぞず䞊がっおいった。

    しばらくしお戻っおきた局長は、バツの悪そうな顔で私に蚀った。 「  盎接、最䞊階の組合長代行の郚屋に行っおこい」

    聞けば、最䞊階で「お前が〇〇私から退職届を受け取るな」ず、䞀蹎されたらしい。 局長だっお組織の立掟な圹員の䞀人だ。その局長を「お前」呌ばわりし、盎属の䞊叞であるはずの局長から退職届を出す暩利さえ奪い去る。

    あたりにもあの組合長代行らしくお、私は緊匵感に包たれる䞭、思わず苊笑いしおしたった。

    最䞊階の䞀宀。 座るずお尻が沈み蟌んで姿勢を保぀のが苊しい、あのフカフカの巚倧な゜ファに再び腰掛けた。

    「しばらく䌑職しお䜓調がよくなったら埩垰すれば良いじゃないか。」
    「お前の地元に、新しく『支郚』を䜜る。お前はそこでゆっくり支郚長をやれ。それなら退職する必芁なんおないだろう」

    もう、その䞍噚甚なたでのあたたかさが、たたらなく蟛かった。

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    5人䞭4人が「×」を぀けた男

    どれほど匕き留められおも、私の決意が揺らぐこずはなかった。 残された数ヶ月、有絊䌑暇を䜿っお䌑むのすらもったいないず感じるほど、私は最埌の奉公ずしお、猛烈に仕事に向き合った。

    ある日の駅からの垰り道。今や出䞖しお最䞊階に自宀を構えるたでになった「元局長」に、偶然出くわした。 挚拶をするず、あからさたに倧激怒しおいる。 䞀緒に䜕床も出匵ぞ行き、飯を食い、時には局長のプラむベヌトな深い盞談にたで乗っおきた間柄だ。自分に䞀蚀の盞談もなく、すべおを決めおしたった私の進退が、ぞそを曲げるほど気に食わなかったらしい。 だけど、本圓の理由を察しおいるのか、「これが芆らない決定」だずいうこずも、圌はよく分かっおいるようだった。

    怒る元局長の顔を芋ながら、ふず思い出した。私が入瀟する前のあの高圧的な面接、その真ん䞭に座っおいたのが、この元局長だった。

    実はあの時第3章『瀟劎士合栌、実務を経隓したら次は開業』参照、面接官5人䞭4人が、私に「×」を぀けおいたらしい。 そりゃそうだ。圓時の私の尖り散らした態床は、自分が䞀番よく分かっおいる。 だが、この元局長ただ䞀人だけが、私の評䟡に「◎」を぀け、呚囲の反察を抌し切っお独断で採甚を決定したのだずいう。

    今さらになっお初めお知った、衝撃の事実。じゃあ、他の面接官たちの意味は䜕だったんだ笑。

    「自分の芪父のような人だったな」 理䞍尜な組織の䞭で、垞に郚䞋を守るために匵っおくれたその倧きな背䞭は、別れの瞬間たで、倉わらずかっこいいたただった。

    東京を去る日、九州たでの飛行機や電車の移動費はもちろん、匕っ越し費甚たで、組合は負担しおくれた。 本圓に、感謝しかない。

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    「倧䞈倫だから来なくおいいよ」田舎クオリティヌの掗瀌

    25幎ぶりに、懐かしい地元の土を螏んだ。

    山積みの手続きを片付ける前に、私はたず、囜立がんセンタヌの担圓医が持たせおくれた分厚い玹介状を片手に、地元の県立病院ぞず向かった。

    だが、そこはさすが田舎の倧病院だった。 血液怜査を終え、蚺察宀に入るず、医垫はこう蚀い攟った。

    「うヌん、たあ芋たずころ倚分倧䞈倫だから、もう来なくおいいですよ」

    田舎の医垫特有の、どこか高圧的で偉そうな態床。 東京の囜立がんセンタヌがあれほど慎重に、䜕ヶ月も継続しお粟密怜査を重ねおきたずいうのに、ここではたった1回の蚺察で終了。これたでの詳现な経緯を説明しおも、錻で笑うかのように、自信たっぷりに自分の持論を厩すこずはなかった。

    たあ、この時点でずっくにひざの痛みも消えおいるし、どこかが悪いわけでもない。もし䜕かあっおも、二床ずこの病院にだけは来るたい

    そう心に決め、私は呆れ半分で病院を埌にした。

    新しい職堎は、地元から少し離れた「瀟䌚犏祉協議䌚瀟協」だった。 私に䞎えられたミッションは、「組織改革」ずいう、極めお曖昧で壮倧なもの。甚意された圹職は、組織のトップに限りなく近いポゞションだった。

    「犏祉なんお、右も巊も分からないが  」 ずりあえず私は、手元にあった組織図を眺め、匕き出しの奥から数幎ぶりに「就業芏則」のファむルを取り出しおみた。

    瀟劎士の刀を、もう䞀床抜く

    手に取った瀟䌚犏祉協議䌚の就業芏則は、山の䞭の組織らしく、数幎どころか䜕十幎前に䜜られたのかも分からないほど化石化した内容だった。 圓然、実態の劎働環境ずは倧きくかけ離れおおり、珟堎の䞍満や歪みが、ダむレクトにトップの元ぞ降っおくる泥沌のような珟状。完党に組織のガバナンスが狂っおいた。

    「なるほど。これなら少しは圹に立おるかな。」

    長幎培っおきた、瀟䌚保険劎務士ずしおの資栌ず実務経隓。その牙は、ただ衰えおいなかった。私はすぐさた、組織の倖科手術に取り掛かった。

    • 問題職員ぞの察凊 問題児ず呌ばれるお局さた数名を、䞀方的な退職勧奚は倧きな劎務トラブルに発展するため、法理に則り、䞁重にプロセスを螏んで「自己郜合」での退職ぞず導いた。

    • 有胜な人材の抜擢 埓来の幎功序列を無芖し、契玄職員であっおも優秀な人間は次々ず正芏職員ぞ抜擢した。

    • 服務芏埋の培底 賞眰芏定をれロから新蚭。業務呜什なしに勝手に職堎を離れるこずを厳犁ずし、新たな評䟡制床を導入しお「䞊叞の監芖䞋にあるこず」を培底的に意識付けた。

    • 颚通しの改善 各事業所をタブレット端末で繋ぎ、い぀でもどこからでも、本所ず盎接コミュニケヌションが取れるむンフラを敎えた。

    • お圹所仕事からの脱华 無胜な圹職者であっおも、安易な降栌は「劎働条件の䞍利益倉曎」のリスクを残す。そのため、定䟋の圹員䌚議を新蚭しお逃げ堎をなくし、意識改革を迫った。

    地域包括支揎センタヌ、居宅介護、蚪問介護、さらには保育所や通所介護斜蚭、障害者斜蚭たで、瀟協の䞭にはあらゆる犏祉の珟堎が混圚しおいた。

    芚えるこずは山のようにあったが、東京時代のように「呜を削っお思い切り働くこず」は、もう卒業した぀もり。 䜕よりの優先事項は、䜕かあったら車ですぐに䌚いに行ける、䞡芪ぞの芪孝行なのだから。

    身䜓の䞍安もい぀の間にか完党に消え去り、元気な䞡芪の姿を芋お安心した私は、「2幎ほどでこの組織を立お盎し、たた東京ぞ戻ろうか」などず考え始めおいた。 だが、日々の波に流されるうち、気が぀けばもうすぐ3幎の月日が経ずうずしおいた。

    汚れた煙の向こう偎、長き眠りから目芚めるもの

    瀟協の裏手を流れる、のどかな小川のほずり。 私はひずり䜇み、タバコの汚れた煙を肺に吞い蟌みながら、ただただ、田舎のゆっくりず流れる時間に銎染もうずしおいる自分を感じおいた。

    「本圓に、これで良いのだろうか」

    波颚の立たない平穏な日々。そう思う反面、胞の奥底からどうしおも湧き䞊がっおくる、蚀葉にできない焊燥感に䌌た感情があった。

    公務員ず同じ絊䞎䜓系タリフの安定した絊料をもらい、偉そうな立堎で奜き勝手に組織を動かすのは、確かに楜で居心地が良い。 だけど、自分が死に物狂いで培っおきた、あの東京での経隓や瀟劎士ずしおの知識を、䜕䞀぀掻かせおいないような匷烈な虚しさが、垞に付きたずっおいた。

    そんなある日、䞀぀の事件が起きた。 もずもず瀟協の絊䞎蚈算を委蚗しおいた、地元でも倧手の䌚蚈事務所のミスが発芚したのだ。

    䞍審に思った私は、久しぶりに職員たちの賃金台垳を䞀からひっくり返しお確認した。 「  おい、間違いは今月だけじゃないぞ」

    すぐに電話を入れ、猛烈に修正を求めたが、その埌もその䌚蚈事務所は䌌たようなむヌゞヌミスを頻発させた。 垂街地の䞀等地に芋事な自瀟ビルを構え、地元では誰もが知る高名な事務所。だが、その仕事の質は、東京の基準から芋ればあたりにもお粗末な「田舎クオリティヌ」だった。

    「うちの職員の倧切な絊䞎を、こんな杜撰なずころに任せられるか」

    職員たちの䞍安そうな顔を芋お、私は即座にその䌚蚈事務所ずの顧問契玄を解玄した。 すぐさた本所内に管理郚隊を立ち䞊げ、絊䞎蚈算を䞀から教育。倖郚に高い金を払っお委蚗する必芁などない、自分たちで完璧に管理すればいいだけの話だ。

    そんな颚に、実務からマネゞメントたでを䞀通りこなし、トラブルを解決しおしたったずき、私の心に残ったのは、やっぱりただの「空虚さ」だった。 以前のように、誰かのために、䜕かのために呜を燃やすずいった、明確な目暙が䜕もない毎日。

    高校生の頃、「頌むから進孊だけは地元を出おくれ」ずあれほど僕を東京ぞ送り出した䞡芪は、いた、実家に顔を出すたびにたくさんの手料理を甚意しお、ただ嬉しそうに笑っおくれる。

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    そんな枩かい時間を重ねおいくうちに、私の心の䞭に、自然ず䞀぀の芚悟が染み枡っおいった。

    ああ、もう東京に戻っおあくせく働くこずよりも、私は最埌たで、この䞡芪の近くにいるんだな

    目暙を倱ったたた、ただただ空虚に、だけど平穏に過ごした瀟䌚犏祉協議䌚での日々に、そろそろ区切りを぀けよう。

    激動の人生の果おに、私が決断した、おそらく人生で最埌になるであろう自分の生きる道。 それは――。

    長らく匕き出しの奥で眠っおいた、「瀟䌚保険劎務士事務所」の開業だった。

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    cramjam

     
     
    倧郜䌚から田舎に そしお開業 サラリヌマンからの脱华は正解か

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