
ショートショート 「正解」
正解
さて、どちらの道に進もうか。
旅人は、今まで見たこともない形の分かれ道を前に逡巡していた。2本の道がY字型に分かれていて、分かれ目には看板と切り株に座る女がいる。気になって近づき、看板に書いてある文字を読んでみる。
「片方の道が天使の村に、片方の道が悪魔の村につながっています。天使の村の住民は嘘をつかずあなたを導き、悪魔の村の住民は逆に必ず嘘をつきあなたを陥れようとしてきます。天使の村の住民か悪魔の村の住民かは、見た目で判別することができません。天使も悪魔も喋ることはできないので、指やジェスチャーを使ってコミュニケーションをとると良いでしょう」
なるほど、と旅人は仕組みを理解した。つまりそこに座っている、天使か悪魔かわからない女に質問して天使の村への道を当てろというわけだ。愚かな人間たちならばここで迷うのだろうが、私のような賢人ならそうはならない。知識が自慢のこの旅人は、この問題の答えを知っていた。
旅人は自信満々に女の方に向かい、こう質問した。
「あなたが住んでいる村はどちらですか?」
すると女は表情を変えず、旅人から見て右側の道を指刺した。この女が天使なら天使の村を刺し、悪魔なら嘘をついて天使の村を指すはずなので、これで確実に正解の道を当てられるというわけだ。
旅人は、満足げでどこか勝ち誇ったような顔で女にお辞儀をし、右の道へと歩いていった。
それから少し経ったころ、女の仲間の悪魔が彼女と偶然出会った。
「おいお前、こんなところでなにしてるんだ?」
「迷い込んだ旅人を騙して遊んでいるのよ」
すると彼女は看板を指差した。仲間の悪魔は、わけがわからないと言った顔で看板を読んだ。
「なんだこれ?天使と悪魔は言葉が話せないとか、悪魔は嘘しかつけないとか、デタラメばっかりじゃないか!」
仲間の悪魔はますます疑問に思い首を傾げた。すると女は言った。
「人間の世界に、これと酷似したひらめき問題があるの。人間は自分が発見したことは何も疑おうとしないから、悪魔の村を指差すだけで向かってくれるのよ。勘違いしている時の人間って、本当にいい顔をするのよね」