
「暇」を面白がる才能
外は激しい雨の音。
台風で学校は休校になり、私の仕事も休みとなった。土日に予定されていた息子の野球も中止になった。
本来なら、台風は怖くて、決して喜ぶべきことではない。
だけど、嫌なことばかりではないと思い直す。忙しい毎日に突如舞い込んできた「完全なお休み」なのだから。
分刻みのスケジュールも、明日の持ち物の心配も、今日のところは全部お休み。
暇を持て余し、久々に子どもたちとじっくり向き合える時間ができたのだ。
「みんなで、久しぶりに野球ゲームやろうか?」
「誰にも会わないから、今日のお昼ごはんはニンニク祭りにしよう!」
そう声をかけると、台風の暗い空気からリビングだけ少し明るくなった気がした。
どこにも出かけられないはずの日が、我が家だけの特別なイベントに変わっていく。
じっと家の中で大雨の音を聞いていると、ふと、あのコロナ禍の混沌とした日々を思い出す。
未知の流行り病に怯えながら、どこにも行けず、家の中で子どもたちといやというほど向き合ったあの数ヶ月。
ごっこ遊び、人形遊び、ボードゲーム、庭でのなわとび、ボール遊び。
外の世界がどれだけ緊迫していても、「我が家の中だけでも楽しみを見つけなきゃ」という焦りや義務感でいっぱいだった。
当時、「早く日常に戻ってほしい」と毎日必死だったけれど、今振り返れば、あれほどの濃密でながーい子どもたちとの時間は、最後だったのかもしれない。
窓を叩く激しい雨の音を聞きながら、私はそんなことを考えていた。
あの頃から、我が家の子どもたちは家で過ごすのが上手になった。「暇」を面白がる才能が開花したのだ。
おなじみの人形ごっこ遊び、それに飽きたら、YouTuberになりきって撮影大会、それも終わればボードゲームやテレビゲーム、家中のぬいぐるみ集まれ〜など、次々とやりたいことが浮かんで忙しそうだ。
でも、あと数年もすれば、台風で休みになったところで、子どもたちはそれぞれの部屋にこもって、私はポツンとリビングに残されるかもしれない。
だからこそ、この致し方ない「足止め」の日を、私も全力で面白がりたいと思う。
さあ、ニンニク臭い息を吐きながら張り切ってプレイボール!