墓場まで持ってゆく
世はお盆の最終日であった。
この期間、一家総出で墓参りに出向いた向きも多かろう。だが、せっかく暑い中出掛けるのであれば、ただ墓を清めるだけでなく、一年間の『懺悔』の数々を携え、神仏の赦しを乞うてみるのも一興ではないだろうか。
私もその例に漏れず、日頃の不義理を清算すべく、なかでも『最大の懸念事項』を墓前で打ち明けることにした。水を湛えた墓参り用の手桶と柄杓を足元に置き、静寂に包まれた墓地で、背後に立つ妻に聞こえぬよう、細心の注意を払って小声で告白する。
「……実は先週、取っておいた『井村屋あずきバー』と『夕張メロンピュアゼリー』を、夜中にこっそり掻っ払い喰いしたのは、何を隠そう私目であります……」
祈りを終え、目を開けると、そこには仁王立ちする妻の姿があった。
真夏の炎天下だというのに、首筋に冷たい風が吹き抜けたような戦慄が走り、心臓が跳ね上がる。どうやら静かすぎる墓所では、小声の告白すら筒抜けだったらしい。
往年のバラエティ番組『ひょうきん懺悔室』の神様よろしく、両手で“×印”を突きつけられるかと思いきや、妻は無言で柄杓で水を掬い、それを振り上げた。
セミの鳴き声さえ遠のくような、数秒の沈黙。振り上げられた柄杓が、真夏の陽光を反射してぎらりと光る。
次の瞬間、「バシャリ!」と冷たい水が頭上から降り注ぎ、柄杓で「コン!」と引っ叩かれた。
どうやら神仏の赦しを得る前に、現世の『山の神』による“即決裁判”が下ってしまったようだ。私の脳内には『8時だョ!全員集合』のコント終了を告げる『盆回り』が騒々しく鳴り響き、ドタバタ劇の幕が強制的に引き下ろされる。
〜後記〜
現世での『懺悔のネタ選び』及び、神仏への『欲張った願い事の詰め込み過ぎ』には、御用心を。
頭洗えよ〜!
歯磨けよ〜!
また来年〜!
