🏙 街で読む経済 第180回 ~給湯器が壊れて、「高機能」の値段を考えた~
🚿 お湯が出ない
ある日、
家の給湯器(湯沸かし器)の調子が悪くなりました。
(まただよ)
いつものように使おうとしても、
どうもおかしい。
毎日当たり前に使っているものほど、
壊れたときに存在感が大きくなります。
お湯が出る。
ただそれだけのことが、
急にものすごく重要になる。

🏪 仕方がないので、ガス屋さんへ
修理するのか。
買い替えるのか。
とりあえず、
街のガス機器店へ行ってみます。
そこで新しい機種を見る。
温度設定。
便利な操作。
省エネ性能。
いろいろな機能。
なるほど。
最近の給湯器は、
ずいぶん進化しています。
そこで、
ふと思いました。
ところで、自分は何に使うんだ?

🔥 ガスは全開、水量はほどほど
これまで使っていた給湯器は、
とてもシンプルでした。
液晶画面すらありません。
基本的には、
ツマミを回して調整する。
そして長年使った結果、
我が家では、
ガスは全開。
水量は中くらい。
これが最適。
最新機種と比べれば、
できることは少ない。
でも、
毎日やりたいことはできています。
お湯を出す。
それだけです。

💰 「機能が多い」と「価値が高い」は同じ?
商品を比べるとき、
私はつい、
機能の多いほうを
「上のモデル」
だと考えます。
もちろん、
便利な機能には価値があります。
細かな温度調節を使う人。
省エネ性能を重視する人。
便利な操作機能が欲しい人。
その人にとって必要なら、
その機能には十分な価値があります。
でも、
一度も使わない機能なら?
その機能にも、
商品の価格の一部として
お金を払っていることになります。

📊 買っているのは「機能の数」ではない
経済学では、
商品やサービスから得られる満足を
「効用」
と考えます。
機能が10個ある商品と、
機能が5個しかない商品。
必ずしも、
10個あるほうが
自分にとって価値が高いとは限りません。
大切なのは、
自分が使う機能があるかどうか。
使わない機能が増えても、
自分の満足まで
同じように増えるとは限らないのです。

🤔 シンプルにも価値がある
売り場では、
新しい機能が目立ちます。
それは当然です。
新しくできるようになったことは、
商品の魅力になります。
でも、
毎日使うものには、
別の価値もあります。
迷わない。
すぐ使える。
覚え直さなくていい。
必要なことが、
簡単にできる。
これも立派な便利さです。
古いから良い。
新しいから良い。
という話ではありません。
自分の使い方に合っているか。
結局、
そこなのだと思います。

【一言コラム:多機能化の罠と「狩野モデル」】
製品開発の世界には、顧客が感じる満足度を分類する「狩野(かのう)モデル」という枠組みがあります。これによれば、最初は「あると嬉しい最新機能」として評価されたものも、時間が経てば「あって当然の機能」へと変わってしまいます。メーカーが次々と新しい機能を足し続けるのは、この価値の陳腐化から逃れるためです。
しかし、それを繰り返すうちに製品は複雑になり、価格も上がり続ける「フィーチャークリープ(機能の肥大化)」という現象に陥ります。使い手にとって一番大切な「迷わずお湯が出る」という価値と、売り手が求める「新機能による差別化」。売り場に並ぶ高機能な家電たちは、そんな市場のジレンマを映し出しているのです。
📝 最後に
給湯器が壊れて、
新しい機種を見に行っただけなのに、
気づけば、
「便利って何だろう」
と考えていました。
最新の機能には、
最新の価値がある。
一方で、
ツマミを回せばすぐ使えるものにも、
別の価値があります。
ガスは全開。
水量はほどほど。
あれはあれで、
完成されたユーザーインターフェースだった。
買うべきなのは、
一番機能が多い商品ではなく、
自分に必要な機能を持った商品なのかもしれません。
便利とは、機能が多いことではない。
自分が使う機能が、ちゃんとあることなのかもしれない。
(そして、修理を依頼する)
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