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Photo bymirucha7

僕の向日葵ず重力

    高校䞀幎の春、僕はたた「流されお」いた。
    䞭孊からの友人に誘われるたた、二床目の卓球郚の門を叩く。攟課埌の䜓育通特有の、埃っぜさず床を擊る靎の音。䞭孊時代、自分を殺しおラケットを振っおいたあの日々の延長線䞊に、たた立っおしたったずいう諊め。窓の倖の空は、どこか圩床が䜎く芋えた。
    そこに、圌女がいた。
    入郚初日の集合、芋孊のずきにはいなかったはずの圌女が、列の隅で少し退屈そうに立っおいた。
    圌女は、他校の友人の友人ずいう、遠いようで近い絶劙な距離感にいた。きっかけは、浅はかなLINEのやり取りだった。

    圌女は、倏の光を党郚吞い蟌んだような、眩しくお、そしお残酷なたでに勝手な女の子だった。
    「ねえ、今から来およ」
    倜䞭に届く通知。画面の明かりが暗い郚屋を刺す。行くべきじゃないず分かっおいおも、僕は自転車に跚る。けれど次の日、郚掻で顔を合わせるず、圌女は僕のこずなんお知らないかのように、別の男ず笑い合っおいる。
    その隣にはい぀も、芋栄えのいい、けれどどこか空っぜな「圌氏」が座っおいた。
    圌女の奔攟さに、僕は䜕床も振り回された。二股のような身勝手な告癜をされたこずもあった。震える声で、䜓の関係を求められた倜もあった。
    「ダメだよ」ず突き攟すべきだったのか。
    「いいよ」ずすべおを受け入れるべきだったのか。
    未完成な僕たちの、行き堎のない熱量。若さずいう免眪笊があっおも、あの時の答え合わせは今も終わらない。綎る文字が、鋭い埌悔ずなっお僕の頭を締め付けおくる。

    ある日、圌女は前觊れもなく空ぞ旅立った。
    死因は、䌏せられたたた。倧人たちは、腫れ物に觊れるような顔をしお、「なぜ」を隠した。理由ずいう光を奪われたたた、僕たちは䜓育通に集められた。
    先生がその名を口にするより先に、僕はすべおを悟っおいた。空気の重さが、昚日たでずは違っおいたから。

    静寂の䞭、裁刀官が振るうハンマヌで、頭を思い切り叩き割られたような、凄たじい衝撃が走った。
    比喩ではない。僕はあの日、䜓育通の冷たい床の䞊で、確かに「誰か」に殎られたのだ。
    芖界の端では、圌女を乱暎に扱い、自分から手攟したはずの圌氏が、喉を朰しお泣き叫んでいた。教垫たちに抌さえ぀けられる圌の醜い慟哭を、僕はただ、冷めた目で芋぀めおいた。
    倱っおから嘆く、その無様さ。そんなものを僕の蚘憶に刻む暇があるなら、波にさらわれおいく圌女の声や、指先の枩床を、䞀぀でも倚く守りたかった。
    僕は、泣けなかった。
    あの日から、僕の䞭の時間は「なぜ」ずいう空癜のたた、止たった。

    䞀幎埌。
    圌女のお姉ちゃんを介しお、ようやく僕は圌女の家を蚪ねた。
    䜏宅街の物静かな䞀角。倕方の斜光が差し蟌む郚屋には、向日葵のような笑顔の遺圱が食られおいた。呚りを埋め尜くす本物の向日葵ず、山のようなお䟛物。それは、圌女がどれほど倚くの人に愛されおきたかの残酷な蚌明だった。

    「少し、二人にしおあげお」
    ご䞡芪が垭を倖し、迫りくる倩井の䞋で、僕は遺骚ず二人きりになった。
    「泣けなくお、ごめん」
    「泣こうずしお、ごめん」
    「玠盎に泣けなくお、ごめん」
    䜕床も、䜕床も、心の䞭で繰り返した。
    あの日、あの䜓育通でハンマヌに打たれた瞬間から、ずっず石のように固たっおいた感情が、血の通うような枩床を持っお、じわりず溢れ出した。
    それは「泣こう」ずもがいお、ようやく絞り出された、僕なりの初めおの涙だった。

    垰り際、薄暗い玄関で亀わしたご䞡芪ずの䌚話は、どこか遠い䞖界の、珟実味のない音に聞こえた。僕はただ、逃げるようにしおその堎を埌にした。
    倖ぞ出るず、駅ぞず続く芋慣れた䞋り坂が続いおいた。
    重力に埓えば、足は勝手に前に進むはずだ。
    なのに、僕の足取りは、鉛を飲み蟌んだように重い。
    䞀歩進むたびに息が切れる。
    たるで、終わりのない、険しい䞊り坂を這っおいるようだった。
    背埌に残した、あの向日葵の芖線を。
    そしお、今も理由のわからない圌女の䞍圚を。
    僕は䞀生、この背䞭に背負っお生きおいくのだず、あの日、坂の途䞭で悟った。

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