
最終需要者からの再輸出事前相談 (難問)
普段中々関わらない事前同意手続です。
Legal Expert試験過去問を再び振り返ります。
■事前同意手続きを攻略せよ
2022年STC Legal Expert試験の第1問目です。
<問題1>(配点:1)
AからDまでのうち、提出書類通達に基づく誓約書について、正しい説明は◯、誤っている説明は☓とした場合の正しい組合せを後記1から5までの中から1つ選びなさい。
A 工作機械メーカーXは、輸出令別表第1の2の項(12)1に該当する工作機械を個別輸出許可を取得して輸出する。許可申請の際には、需要者等の誓約書の提出が必ず求められる。
B 工作機械メーカーXは、輸出令別表第1の6の項(2)に該当する工作機械を個別輸出許可を取得して輸出する。許可申請の際に、需要者等の誓約書の提出を求められることはない。
C 工作機械メーカーXは、令和2年に誓約書を提出し個別輸出許可を取得して輸出した輸出令別表第1の2の項(12)1に該当する工作機械の需要者から、誓約書に基づき当該工作機械を国外に新設した自社工場に移設するための事前同意を求められた場合、工作機械メーカーXは経済産業省への
事前同意手続を行う必要はない。
D 工作機械メーカーXは、過去に旧誓約書を提出し個別輸出許可を取得して輸出した輸出令別表第1の2の項(12)1に該当する工作機械の需要者から、誓約書に基づき当該工作機械を国内に新設した自社工場に移設するための事前同意を求められた場合、工作機械メーカーXは経済産業省への事前同意手続を行う必要がある。
正答5.A☓ B☓ C☓ D○
過去問演習で見た人、本試験で見た人、それぞれいると思います。
勝手な想像ですが、この問題に苦手意識を持つ人は多いのではないでしょうか。
Advancedレベルでは出てこない知識であり、この1問目を過去問演習してみて、「こんなの解けるか!」とExpert受験を諦めた人もいるかもしれません。
2022年本試験を受けた方であれば、いきなり1問目から躓いて絶望した人もいるかもしれません。
2024年受験生であった私は、過去問演習第1問目がこれでした。「こんな試験どうやって勉強すればいいんだ」と困惑したのをよく覚えています。
というのも、この問題が学習の第一歩目だったからです。
要点が纏められているAdvancedテキストと違い、提出書類通達から直接論点を理解するのは慣れるまで苦行でした。
事前同意手続きについておさらいします。
■事前同意手続きの趣旨
そもそも何のための手続き規定か?
基本的なところですが初学者向けに解説します。
外為法では米国のような再輸出規制がありません。
米国品を再輸出する場合、品目や仕向地等によって米国商務省へ許可申請が必要です。
一方、外為法では輸出先から第三国へ再輸出する場合に、経産省へ海外顧客が許可申請を行うという再輸出規制はありません。
しかしながら、外為法でも再輸出に係る手続きがあります。
それが事前同意手続きです。
この手続きは海外顧客ではなく、日本の輸出者が手続きを行います。
■提出書類書類通達 II 2.注意事項
▶最終用途誓約書
事前同意手続きには最終用途誓約書が関わってきます。
下記リンクの誓約書の現物を見るとその意味が分かります。
経産省 : 需要者等の誓約書の記載要領
最終用途誓約書(d)で再輸出しない事、もし再輸出する場合は輸出者へ報告する事を誓約させています。
2.注意事項
(1)最終用途誓約書について
輸出令別表第1の2から4までの項若しくは15の項の中欄に掲げる貨物の輸出又は外為令別表の2から4までの項若しくは15の項の中欄に掲げる技術の提供にあたっては、輸入者等又は最終需要者(以下「需要者等」という。)から、1.(1)、(2)又は(3)に従って最終用途誓約書(以下「誓約書」という。)を取得してください。(上記の項に係る貨物又は技術であっても、仕向地又は提供先国に応じて誓約書の取得が不要となることがあります。役務通達の1(3)サに規定する特定取引に該当する場合は、誓約書の取得は要ありません。また、上記以外の項に係る貨物又は技術についても、仕向地又は提供先国に応じて誓約書の取得が必要となることがあります。詳しくは1.(1)、(2)又は(3)に従ってください。)
試験問題の論点として把握しなければならないのは、太字部分です。
ここを押さえれば冒頭のトラウマ問題のABは回答出来ます。
項番部分は「若しくは」という言い回しがややこしいです。
2,3,4,15項と覚えなければ、項番の論点に引っ掛けられます。
更にその続きがあります。
項番だけを暗記した人はここで失点するので注意です。
「上記以外の項に係る〜」の括弧書きです。
A 工作機械メーカーXは、輸出令別表第1の2の項(12)1に該当する工作機械を個別輸出許可を取得して輸出する。許可申請の際には、需要者等の誓約書の提出が必ず求められる。
B 工作機械メーカーXは、輸出令別表第1の6の項(2)に該当する工作機械を個別輸出許可を取得して輸出する。許可申請の際に、需要者等の誓約書の提出を求められることはない。
選択肢A は「必ず求められる」、Bは「求められることはない」と言い切っていますが、括弧書きの規定により言い切る事は出来ません。よってABとも誤りです。
▶つまりどういう事?
経産省の個別許可申請のページを読むと、一見意味不明な括弧書きが何を言っているか理解しやすいです。

該当項番、仕向地によって提出書類がA、B2、Cと決められています。
「2から4までの項若しくは15の項」以外で見てみると、5-13項(告示で定める貨物を除く)では提出書類A、Cが規定されています。
提出書類A、Cは以下の通りです。


提出書類Cの7番で「需要者等の誓約書及びその写し」があり、5-13項の場合でも「ち地域」向けでは誓約書が必要になります。
これが、提出書類通達の「上記以外の項に係る貨物又は技術についても、仕向地又は提供先国に応じて誓約書の取得が必要となることがあります。」の意味です。
通達丸暗記でも試験対応は出来ますが、他にも覚える事は山ほどあります。
今回例のように理解で落とし込める部分は理解を深めておくと、記憶量に多少余裕を持たせられます。
▶誓約書、旧誓約書
C 工作機械メーカーXは、令和2年に誓約書を提出し個別輸出許可を取得して輸出した輸出令別表第1の2の項(12)1に該当する工作機械の需要者から、誓約書に基づき当該工作機械を国外に新設した自社工場に移設する
ための事前同意を求められた場合、工作機械メーカーXは経済産業省への事前同意手続を行う必要はない。
D 工作機械メーカーXは、過去に旧誓約書を提出し個別輸出許可を取得して輸出した輸出令別表第1の2の項(12)1に該当する工作機械の需要者から、誓約書に基づき当該工作機械を国内に新設した自社工場に移設するた
めの事前同意を求められた場合、工作機械メーカーXは経済産業省への事前同意手続を行う必要がある。
続いて選択肢CDを見ていきます。
▶C
論点は「国外に新設した自社工場へ移設」です。
国外、つまり第三国へ再輸出の事を指しています。
誓約書を取得し個別輸出許可を取得したモノを再輸出するケースで「事前同意手続を行う必要はない」という書き方は誤りです。
▶D
論点1「旧誓約書の取得」
論点2「国内に新設した自社工場に移設」
2022年試験の中でもかなりの悪問です。
事前同意の対象は、再輸出もしくは再販売又は再提供。国内の自社工場への移設は再移転扱いのため、事前同意手続は不要です。
但し、旧誓約書(平成6年)の場合は、再移転であっても事前同意手続を行う必要があります。よって正解です。
この選択肢Dは当時私は独学で全く理解出来ず、
再移転なのになぜ事前同意手続きが必要なのか?と疑問が解消出来ませんでした。
CISTECジャーナルの解説を見て、旧誓約書の規定によるものだと知りました。
個人的な予想ですが、旧誓約書は古い規定であり、二度と論点として出ないような気がします。
仮に出されても、2024年以降の正しいものはいくつあるか?方式であれば多くの人が失点する問題となり、それ以外の得点率での勝負になると思われます。
※追記
実務として、現在も旧誓約書は使われています。
詳細はコメント欄のExportControlさんのコメントをご確認下さい。
捨て論点とするかはご自身でご判断をお願いします。
■まとめ
事前同意手続きの設問は、まずは提出書類通達の基本事項を押さえて、2022年選択肢ABCを少なくとも完封出来るレベルが合格への最低ラインだと考えます。
余裕があれば、旧誓約書の論点に気付けるようにしておくのが良いでしょう。