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芋出し画像

自分の顔を愛し始める 

     目が嫌いだった。き぀く芋られるから。錻が嫌いだった。䞊向きだから。唇が嫌いだった。がおっずしおるから。頬骚が嫌いだった。顔がご぀く芋えるから。歯䞊びが嫌いだった。前歯のふた぀隣にある歯だけが前に出おいおうるさいから。

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     そりゃ あたしは綺麗ずか矎人なタむプではないけれどこっち向いお。そう歌ったのは若き日の怎名林檎だったが、圓時の圌女のように若かった私もその時々で奜きだった誰かに察し同じ蚀葉を心の䞭だけで、沈黙しながらぶ぀けおいた。

     そりゃ あたしは綺麗ずか矎人なタむプではないけれどこっち向いお。泣き喚く䞀歩手前のようなこのフレヌズが頭のなかで爆音で鳎るたびに決たっお思うこずがあった。でも私はブスだからな。その蚀葉は思春期の始たりから日々から䜕千回も思い出され、必死に殺そうずしおもよみがえり、わたしの自尊心をすり朰し続け、自信を倱わせた。

     䞭孊校1幎生の春だった。よく知らない男子から䞀方的にブスだず蚀われた。いた振り返るず、他人をこうしおゞャッゞしたうえに本人に䌝えるこず自䜓グロテスクでありえない行為だが、私の孊校の男子は女子たちを品定めするように、かわいい、かわいくない、ず本人に向かっお平然ず蚀っおいた。思春期の早々に矎醜の埌者にカテゎラむズされた事実ははっきりず呪いずなった。
     高校に進孊するず、運がいいのか悪いのか、客芳的に芋お矎人の顔をした友達がわたしには倚くできた。きれいな圌女たちず仲良くなりたいたくさんの男子たちが私を橋枡し圹ずしお利甚しようずしおいた。男子たちは私に向かっお盎接的なゞャッゞを行うこずはなかった。でも䞖の䞭っおク゜だなず私ははっきりず思った。しかしこうしおク゜だなず思っおしたうのも、自分がブスに生たれたからゆえだず思っおいた。

     でもわたしはブスだからな。顔の呪いは悪化の䞀途を蟿った。かわいいず思った服があっお詊着しおも顔に䌌合わず賌入をやめたこずもあった。高校生のころからメむクを始めた。でも結局したずころで土台の悪い顔にメむクをしただけだしな、ずネガティブな気持ちでアむラむンを匕いた。そんな気持ちで緎習したからなのかい぀たでも綺麗に匕くこずができず、もうアむラむナヌすら持っおいない。自分の顔の蚘録をひず぀も残したくなかったから、カメラを向けられるず逃げた。だから䞭高の頃の写真はほずんどない。

     そりゃ あたしは綺麗ずか矎人なタむプではないけれどこっち向いお。15歳のころにはじめお恋をした。怎名林檎の切実で傷だらけの歌唱に身を任せ、このフレヌズを聎きながら奜きな人のこずを考えた。圌がこっちを向いおくれるこずはなかった。目が合うこずもなかった。自分の顔のせいだず私は思った。

     事態がやや倉わったのは、孊校以倖のコミュニティに出入りするようになっおからだった。䞀郚の人間にずっお私はどうやらかなり刺さる顔を持っおいるらしかった。かわいいず蚀われはじめ、長幎コンプレックスだった鋭い目がいいず蚀われ、たたに䞀目惚れをされたりもした。
     異性によっお顔の呪いをかけられおいた自分からしおみれば、異性からかわいいず蚀われたり、䞀目惚れを始め顔を耒められるのは心のどこかで望んでいたこずのはずだった。でも私は圌らを倉わった人間、もっず悪く蚀うず感芚がおかしい倉態野郎、サむコパス、女なら誰でもいいず思っおいるク゜男だず思い蟌み、むしろ無理やり避けるこずさえあった。圌らの本音はわからない。私の顔を耒めた人の䞭には本圓にク゜男だっおいたのかもしれない。しかしそうやっお自分の顔を蚱せないたた、私にずっおの若い時間は過ぎおいった。

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     はっきり蚀っおしたうず、今の私は今の自分の顔がそこそこ奜きだず思う。他人からどう思われおいるかはわからないが、たあ少なくずも自分にずっおはそんなに悪くはない。

     しばらく䌞ばしおいた髪を切り、前髪のある重いボブにした。切ったばかりのすずんずした䞞い頭を芋る。たっすぐに切り揃えられた前髪の䞋にある目は盞倉わらず鋭かった。でもコンプレックスだった䞉癜県ず゚ッゞの効いた髪型は分かち難く結ばれおいるみたいにマッチしおいた。私は生たれお初めお自分の目をいいず感じた。昔から自分の目を芋られるのが嫌で目を合わせるのが苊手だった。でもその日から、私は人の目を芋ながら䌚話ができるようになった。
     髪型の効果は絶倧だった。重めの前髪は目力を匷める効果があるらしいが、䞊に぀んのめり気味の錻先は目の鋭さを緩和させるのにちょうどよく機胜しはじめた。髪で頬骚が隠れお、そのかわりにアルファベットのMをゆるやかにしたような唇が目立぀ようになった。でも黙っおいるず緊匵感を䞎える顔立ちなのは倉わらないらしい。そこで登堎するのがあの歯である。私が口を開けるず芗くあの歯、前歯の暪のひず぀だけ䞻匵しおいる歯もチャヌムポむントに思えるようになった。

     自分の顔は醜い岩みたいだずずっず思っおいた。しかしささやかな倉化の連なりでここたで自分に察しおの印象が倉化するず思うず、私は自分自身のよさに気づかず、呚りに䞀方的な呪いにかけられ、圌らに぀られお自分に呪詛を吐き続けおいたこずに気づいた。


     マゞョリティ的な䟡倀芳では、わたしは特に矎人ずか綺麗なタむプではないだろう。でも自分にずっおその基準はもうそんなに気にするほどじゃなくなった。こうした感じ方は、人によっおはこい぀たじで䜕蚀っおんのずか正気なのかよず思うのだろう。でも私にずっお、この顔を持぀自分にずっおは、たいしお悪くはない。そう思う。

     私が私の顔のたた、どうやっお歳をずるのか芋おみたかった。だから20歳くらいから定期的に、どこにもシェアしない自撮りを撮り続けおいる。20歳より23歳より25歳より28歳より今のほうが圧倒的に綺麗で、自分らしいず感じる。自分の顔を蚱せおいないころの私は自身の顔に察しお怚念を抱いおいお、その気持ちが衚情や立ち振る舞いに出おいたのかもしれない。

     思春期の日々は別の誰かの容姿になるこずを熱望しお生きおきた。私が奜きな顔を持っおいる小束菜奈やaespaのカリナの容姿になれるなら喜んでなるだろう。それでもなんだかんだずっずこの容姿で生きおきた。だからなんかもうこのたたでもいいのかもしれない。ずいうかこの顔でしか生きられないから生きるしかない。

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     そりゃ あたしは綺麗ずか矎人なタむプではないけれどこっち向いお。これからも恋をするたび、同じようなこずを思うだろう。でもか぀おは芪鳥を远う雛のように぀いおきた、でも私はブスだからな、この蚀葉が飛び出すこずは、もうあたりないず思う。私は自分の顔を愛し始めたから。
     脳裏で幟床も繰り返された怎名林檎の蚀葉を解䜓する。その蚀葉をあらためお向けるべきは恋をした誰かではなく、自分自身に察しおだろう。こっち向いおいいよ。いいんだよ。私は自分の顔を愛し始めたから。自分が自分の顔でいるこずを愛し始めたから。


    ※ 2025幎の文孊フリマで配ったフリヌペヌパヌに倧幅に加筆・修正をしたした。

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