
暑い太陽、青い空、広い海。どこまでも続く水平線。二人きりの時間。
「こんな日が来るなんてな」
「ほんとね。私たち、いろいろあったものね」
「最初に会ったとき、お前、すごく怒っててさ」
「だってあなた、遅刻したじゃない。えいっ!」
「いてっ! やめろ、今それやるな!」
ぱしゃ、と水しぶきが上がる。
「でもさ、今はこうして一緒にいられる」
「うん。これからも――おっと」
「ちょ、沈むな沈むな!」
「だって足が……くすぐった、ちょ、やだこれ!」
「落ち着け、落ち着け……って、いてっ!」
笑いと悲鳴が交じる。
「ねえ、もし戻れたらさ」
「戻れたら、な」
「ちゃんと、言うから」
「俺もだ。ずっと言えなかったこと――」
言葉が途切れる。
「なあ……」
「うん……」
「愛してる」
「……私も。だから――」
女の顔が少し沈む。
「だから、えいっ!」
「だから押すなって! いてっ、ちょ、もう無理、腕が――」
笑い声は次第に短くなる。
「なあ……ほんとに、さ……」
「うん……」
二人は顔を寄せる。唇が触れる寸前、同時に身体が沈みかけた。
水面は穏やかだ。きらきらと光るだけで、何も知らない顔をしている。
――その下では、必死の立ち泳ぎ。絡みつく海草、つつく魚、刺してくるクラゲ。足は重く、腕はだるく、息は浅い。
「おっと……」
「もう……だめ……」
「……誰か……」
「誰か助けてくれー!」
そのとき、二人のすぐ脇を、巨大な浮き輪をくわえた大型犬がのんびりと泳ぎ抜けていった。
(了)
よかったですね。これで助かった?
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#アマノ文筆クラブ #愛の水面下
TALESにて絶賛連載中。アマノ文筆クラブに参加した作品だよ。応援してね。
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。