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シカゴで一か八か

    ( #ショートショート  本文:808字)

     幼い頃、テレビで観たギャング映画に心を奪われた。ダボダボのスーツを着た男たちが、拳銃片手に街を仕切る姿。あれこそ男の生き方だと信じ、僕はその日から鍛錬を始めた。

     水鉄砲の撃ち合いでは近所の誰にも負けたことがない。銀だま鉄砲の早撃ちは学校で一番。豆鉄砲で鳩を驚かせる腕前も相当なものだった。狙いは正確、反応は俊敏、幼少期にしてすでにいっぱしの「男」だったと思う。

     高校を出ると、修行の場を関西の繁華街へと移した。川沿いの賑やかな通りを歩きながら、すれ違う人を指鉄砲でバーン、と撃つ。撃たれた方も心得たもので、大げさに胸を押さえて「やられた〜」と崩れ落ちる。あの街はすごい。犬でさえ指鉄砲で撃たれると死んだふりをする。あそこで積んだ経験は、僕の中で一つの完成形になった。

     あとは本場だ。アルバイトで金を貯め、ついに念願の渡米を果たした。憧れの街に降り立った瞬間、胸が高鳴った。ここにボスがいる。知り合いは一人もいないが、道行く人に片っ端から聞いていけば、そのうち見つかるはずだ。

     僕は勇気を出して、道端で新聞を読んでいた男に「この街を仕切っているのは誰ですか」と尋ねた。男は怪訝そうな顔をしながらも、市庁舎の方を指差した。

     僕は確信した。これこそがボスの本拠地だ。意気揚々と市庁舎に乗り込み、受付の女性に「ボスに会いに来ました」と告げたが、彼女は困惑した顔で僕を警備員に引き渡した。結局、面会は叶わず、僕は警備員につまみ出された。

     持ってきた貯金は、チップや食費に消え、みるみる減っていった。言葉の壁は高く、指鉄砲のユーモアもここでは通じない。ただの不審者として扱われる日々に、僕のハードボイルドな夢は少しずつ削り取られていった。

     物価の高いアメリカでは生活費を稼ぐだけで精一杯で、ギャングを探す余裕などない。こうして今日も僕は、慣れないアクセントで注文を復唱しながら、バイクにピザを積んで風の街シカゴを疾走している。

    (了)

     マルゲリータ、ひとつ、お願いします!


    はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
    甘野充さんの企画に参加します。
    よろしくお願いします。
    #アマノ文筆クラブ #シカゴで一か八か


    TALESにて、アマノ文筆クラブ作品を連載中。毎週木曜6:30!

    では、今日はこのへんで。
    はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

    #ギャング #水鉄砲 #銀だま鉄砲 #豆鉄砲 #指鉄砲 #渡米 #ボス #シカゴ #ピザ

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