
彼女は狩人だ。一年中、何かを狩っている。春はイチゴ狩り。夏は潮干狩り。秋は紅葉狩り。冬はミカン狩り。そして刈人でもある。夏は草刈り、秋は稲刈りに忙しいらしい。だが彼女は、刈られるのだけは極端に嫌う。だから髪が長い。
僕は、そんな彼女の髪を切りたい。何としても切りたい。それが美容師としての性だ。僕の美容師としてのプライドが許さない。
僕が「丸刈りが似合いますよ」と言うと、「まるで似合わないわ」と彼女は微笑む。「五分刈りにしましょう」と言うと「似合うかどうかは、五分五分かな」と首を傾げる。
正直、カリカリ来てしまう。なのに、そんな彼女になぜか惹かれる。魔性の女だ。魔女かもしれない。大多数の人もそう思うはず。魔女だけに、マジョリティも納得。
彼女はそんな感じで、毎日、店に来て鏡の前に座っては、髪を切らずに話をして帰っていく。彼女の髪を切りたい。あのきれいな長い髪を、どうしても切りたい。
ある日、「お金を払うので切らせてほしい」と頼み込んだ。「お金をもらうのは、なんだかおかしいわ」と、あごに人差し指を当てて彼女は言う。かわいい。今日は特別にかわいい。
「じゃあ、君の好きなお菓子をあげるから」
僕は彼女の大好物を差し出して交換条件にする。
「あなたと私の仲でしょ」
(どんな仲なんだ?)
「……貸し借り(菓子刈り)は、なしよ」
(そういうことか!)
彼女の答えに、僕は妙に納得してしまった。
「じゃあ、今度、いっしょに行こう」
(狩るのは好きだって言ってたよね)
「ナシ狩り! ……そのあとで、髪を切らせて」
彼女は、うーん、と少し考えたあと、言った。
「髪を切るかどうかは、わかりかねるかな」
(了)
彼女が受け取らなかったお菓子、私にちょうだい!
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#アマノ文筆クラブ #魔女刈り
TALESにて、アマノ文筆クラブ作品を連載中。毎週木曜6:30をお楽しみに!
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
#狩人 #イチゴ狩り #潮干狩り #紅葉狩り #ミカン狩り #草刈り #稲刈り #美容師 #丸刈り #五分刈り #魔女 #貸し借り #ナシ刈り