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夏の鴨川散歩

    30度を超える京都がはじまった。
    橋の下には濃い影が落ち、石畳は陽を吸って熱を帯びる。
    祇園祭の音色が、街の奥からゆっくりと滲んでくる。

    鳶が高く輪を描き、鳩は草むらを歩き、
    軽鴨は速い流れを押し分けて泳ぐ。
    先日の大雨の名残を抱えた川は、まだ力を抜かない。

    それでも鴨川デルタでは、外国人観光客が水際で笑い合い、
    清掃ボランティアの人たちは淡々と川を整えている。
    ここでは誰しも、ただ「居場所」を求めているように見えた。

    ふとした瞬間、河川敷でサンドイッチを分け合うカップルの手元を
    鳶が鋭くさらっていく。
    彼氏が思わず「うわっ!」と声を上げ、鳶を睨みつける。
    驚きが走り、彼女の笑いがこぼれ、風だけが静かに通り過ぎる。

    今日も、優しい風が吹く。

     
     
    立命館大准教授/博士(学術)。日々の風景や路地裏の違和感から、不完全な社会を観察。孤立や貧困、居場所づくりなど社会の周縁を研究。NPOつながるKYOTO理事長。論文に収まらない「現場の体温」をエッセイで綴ります。依頼:kotsuji@fc.ritsumei.ac.jp

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