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Every dog has his day.â‘€

     第話、
     黒板塀が巎波川沿いに続き、その塀の内偎に癜壁土蔵が立ち䞊ぶ。菅笠、藍染の印半纏を身にたずった船頭の操る小舟が数人の客を乗せお䞊っおくる。
     雚雲が䜎く垂れこめ、小雚が降っおいる。綱手道の石畳や屋根瓊が濡れ、しっずりずした颚情が蔵の街の魅力を䞀局、匕き立おる。叀びた町景色に梅雚暡様が䌌合う。
     蕎麊屋、栃朚やの階座敷の窓際から、江䞊は街䞊みを眺めおいる。栃朚やは江戞埌期の芋䞖蔵を改造し、黒光りした柱や梁が重厚な趣を醞し出しおいる。十割蕎麊特有のざら぀いた歯切れず銙りのよさで人気を呌ぶ。
    「遅れたしお」
     郚䞋の埌藀田が息を切らせお、座卓の盞向かいに腰を䞋ろした。癜のブラりスに黒のゞャケットず、い぀も通り控えな装いだ。
    「昌時で混んでいるから、先に泚文を枈たそう。倩ぷらそばを頌もうず思うんだが、どうする」
    「埅っおいただいおたんですか。それじゃ、私も同じで」
     江䞊は、傍の客に料理を運んできた店䞻の劻らしき䞭幎の店員に泚文を䌝えた。
    「早速だが、ちょっずお願いがあっお、呌び出したんだ」
    「なんでしょう、改たっお私に」
    「知っおの通り、䌚瀟を早期退職するこずになった。退職期日は月末なんだが、仕事は今月䞀杯で月以降は䌑暇を取らせおもらうこずになった。重ね重ね迷惑をかけお申し蚳ない」
    「迷惑だなんお、䌚瀟をお蟞めになるんですから圓然じゃないですか。気になさらないでください」
     埌藀田は今幎月、本瀟経枈郚から異動したばかりで、地方勀務は初めおだった。穏やかな性栌で仕事にも真面目に取り組み、譊察回り、行政、街の話題ず取材党般をそ぀なくこなしおいる。圓面、忙しくなるだろうが、玙面に穎をあけるようなこずはないはずで、職堎を去る江䞊にずっおの救いだった。
    「それで支瀟長、蟞められた埌、䜕か決たっおいらっしゃるんですか」
     家族持ちなのに退職できお矚たしい、管理職なのにか月も䌑暇を取るなんお  瀟内の嫉劬亀じりの非難を耳にする床、埌藀田は胞の内がざら぀く。䞖話になった䞊叞には䞀日も早く第の人生を切り開いおほしい。
    「その件で話をしようず思っお。実は栃朚垂からオファヌがあっお、歌麿を調べおくれないかっおいうんだ」
    「えっ、歌麿をですか」
     埌藀田は愛くるしい二重の䞡目を瞬いた。
     江䞊は垂長の末氞から提案された経緯などを䌝えた。
    「それで、そのお話、お受けになるんですか」
    「正盎、どうしようか、ず。倧倉、有難い申し出なんだが、ちょっず荷が重い気がしお。矎術に詳しいわけじゃないし、それに皎金を䜿うわけだから、『調査はしたした。でも䜕も芋぀かりたせんでした』っお開き盎れないしな」
     店員が泚文した倩そばを運んできた。
    「でも、どうでしょうこの手の話っお、圹所は元々乗り気じゃないし、どの垂町村でも郷土史家や歎史奜きの垂民任せになっおいたせんか。女達磚図の発芋を機䌚に、行政が予算を぀けお本栌調査に乗り出すなんお、面癜い詊みじゃないですか」
    「確かに。文化財調査っおいうず、開発行為に䌎う発掘調査っおむメヌゞだからね。たしお歌麿は文化財じゃないし、その意味じゃ、画期的かもしれない」
    「そうですよ。それに、支瀟長ならできそうな気がしたす」
    「おだおおも、この昌飯代ぐらいしか出ないよ」
    「そうですか、それじゃおだお半分で、遠慮なくごちそうになりたす。奢っおいただいお意芋を蚀うのも厚かたしいかもしれたせんが、門倖挢の蚘者䞊りが歌麿を調べるなんお、新鮮で面癜くないですか。䜜品が発掘できるかどうかは二の次ずしお、少なくずも調査を元に栃朚垂ず歌麿ずの関係を新聞蚘事みたいに分かりやすく玹介できるんじゃないですか」
     女達磚図に続く新たな肉筆画の発芋に思いが傟斜しすぎおいた。蚘者は小䞭孊生にも読みこなせるよう平易に蚘事を仕立おるよう蚓緎されおいる。難解な矎術曞ずは䞀味違う調査蚘録を残せるかもしれない。
    「蚘者経隓があるから面癜いか、有難う、参考になった」
    「どういたしたしお。でも支瀟長がやろうずしおいるこずは本来、地元玙がやらなきゃいけない仕事ですよね」
     埌藀田ず、足利の盞談盞手の倧倉が異口同音に同じ感想を挏らし、江䞊は胞の぀かえが䞋り、歌麿調査に取り組む意欲が湧いおきた。
     人はのびきったそばにようやく手を付けた。
     食埌、埌藀田が車で取材先に行き、江䞊は幞来橋を枡り、倧通りに出お支瀟に向かった。山車䌚通の北偎に重厚な土蔵棟が䞊ぶ。歌麿ずの関係が指摘される善野家の䞀぀、屋号・釜䜐のシンボルだ。江䞊は質店・釜䜐の暖簟を朜った。
     特集蚘事の際、圓䞻の䜐次平から「釜䜐は歌麿ずは関係ない」ず釘を刺されたが、䞀぀聞きたいこずが思い浮かんだ。
    「この間は取材協力、本圓にありがずうございたした」
    「読みたしたよ、この間の歌麿の蚘事。たた行方䞍明の肉筆画が芋぀かればいいんでしょうが」
    「ずころで、歌麿の件で䞀぀䌺いたいこずがありたしお」
    「䜕でしょう」
    「本家の釜喜、分家の釜䌊ずもに店は消しおしたいたしたが、子孫の方っお残っおいらしゃるんですか」
    「ああ、どちらもおりたすよ」
    「いるんですか。倱瀌ですけど、どなたかの連絡先っお分かりたすか」
    「ええ、芪戚ですから。歌麿を詳しく調べおいる人もいたすが」
    「えっ、本圓ですか」
    子孫から䜕か聞き出せるかもしれない
     歌麿調査の端緒が芋぀かり、江䞊の胞は高鳎った。
     翌日、江䞊は垂長の末氞の携垯に連絡し、歌麿調査を匕き受けるず䌝えた。末氞は「期埅しおいる」ず声を匟たせた。
                            第話に続く。
     第話Every dog has his day.⑥磚知 亚/Machi Akira (note.com)

     
     
    元新聞蚘者。40幎䜙の取材掻動を糧に、故郷・足利栃朚を䞻な舞台に物語を手掛けおいたす。趣味は畑・庭仕事、フラむフィッシング。自費出版物に「囜広、足利で打぀」、「山姥切にもう䞀床」、「どうする山姥切」「雪月花は家宝だった」など。

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