
おいしいおにぎりのすゝめ
夫からお昼用におにぎりを作ってほしいと言われた。
おかずをつけるのかと聞けば「おにぎりだけでいい」としか言わない。
コンビニ弁当に飽きたとか、手軽に食べたいとか。
理由はなんとなく分かる。
彼はランチタイムに弁当箱を開け、インスタントの味噌汁をすすりながら一息つくようなタイプではない。
仕事の合間にささっと食べてコーヒーを一杯、そんなやつだ。
おにぎりだけだから簡単かと言われたら、案外そうでもない。
むしろかなり難しい。
まずは容れ物について。
ラップで包むだけでは心許ない。
鞄の中で押し潰され、昼には俵型とも三角形ともつかない米の塊になっている可能性だってある。
お腹を空かせて包みを開けた時、形の悪いおにぎりが待っているランチタイムなんてつまらない。
とはいえ、他人の鞄の中にまで責任を負う気もない。
自己責任ということで、最終工程は本人に委ねることにした。
次に具材問題。
うめ、しゃけ、昆布。
私の発想はこの辺りで止まっている。
アサリの生姜煮、たらこの昆布煮、鯖味噌。
酒と合うならご飯にも合うだろう。
日本酒だって広義のコメだ。
先日、具材が決まらず半分やけくそで卵焼きを入れてみたところ意外にも好評だった。
たかがおにぎり。
具なんてある程度決まっている。
そう思っていた。
ところが、だ。
インスタグラムを眺めていると、おにぎりの世界はずっと深かった。
クリームチーズを入れる。
ナッツを混ぜる。
砕いたチキンラーメンを混ぜ込む。
おにぎりではなくどこかの国のONIGIRIではとも思った。
目からコンタクト、いや鱗だった。
おにぎりは海苔とご飯と具材でできている。
材料だけ見ればとても単純だ。
私はシンプルだからごまかしが利かないと勝手に思い込んでいた。
だけど実際どうだ。
シンプルなことはとても自由だった。
ご飯と相性さえ良ければ、あとはなんでも受け止めてくれる。
以前なら酒の肴しか探さなかった缶詰めコーナーにも立ち寄るようになった。
そのうち私のお弁当箱にもおにぎりが入り始めるかもしれない。
夫がおにぎりに飽きるのが先か。
それとも私がおにぎり沼に沈むのが先か。
今日も私はスーパーの缶詰コーナーの前で次の具材候補を探している。