
バリカンとすきバサミと後ろ髪
最近、美容院に行くのを止めました。
美容院に行くまでに、予定をあけて予約をして服をそれなりに気にして早めに家を出てといった一連の流れを面倒に感じたからです。
代わりに、
UFOのような散髪ケープを装着して鏡をセットしたあとは、
バリカンでセルフカットしています。
(セルフ剃り?)
最初こそ恐々とバリカンを自分の頭に滑らせていましたが、
最近では、
「あ、なんか髪伸びたな」
と思ったらスイッチを入れています。
今日も今日とて、刈り込んだ場所の毛が伸びてきたのが気になってきたのでスイッチを入れたのですが……
ふと、思ったのです。
以前は後ろ頭が見えるようにと角度にこだわって鏡を設置したり、
12㎜のアタッチメントを使ってゆっくりと毛先を刈ったりしていて、
50分も時間をかけていました。
単純にスピードだけを見るなら、美容院とそう変わらない時間がかかっています。
現在は準備も含めて15分で終わりますが、
50分という時間をかけてまで、普段自分の目には見えない後ろの髪をバリカンで刈っていく選択肢を続けて今日にまで至ったのはどうしてなのか。
慣れたおかげで明らかな刈りこみ失敗はなくなりましたが、
何の知識もなく、なんとなくこれでええやろと自分で刈るより、
間違いなくプロのほうが数日後の見え方も違いますし、長持ちしやすい。
そんな成果を知りながらも、
美容院に行くのは面倒だからバリカンを選ぶというのはなにか違う気がしました。
自分で切ったり刈ったりしたらどんな感じになるのか好奇心が勝ったのも、自分でする楽しさも継続した理由のひとつでしょうが、やはり一部でしかない。
ヴィイイン
響くバリカンの音にドキドキしながら、鏡に映る落ちていく髪の毛。首に毛がついて、振動が後ろ頭から聞こえてくる。
この時間は、面白い。
明らかな変化を感じ取れるからです。
それでも、後ろ頭にバリカンを滑らせるときは、確認をします。
リスクが現実になったらそれはそれで面白そうですが、確認をするぐらいには、リスクを恐れているからでしょう。
何でだろうなあと思っていましたが、
鏡の前ですきバサミを持った私を見たとき、答えが分かりました。
よく見られたいという意識が、
私にまだ残っていた。
本当に美容院に行くのが面倒なら、手に持ってるバリカンで丸坊主にしてしまえばいいだけです。
シャンプー時間さえも省略できるのですから合理的です。
それなのに、自分で管理しやすい量を残し、すきバサミをつかいながら全体を整えている。
世の中には自分の価値観とは全く違うヘアスタイルや恰好をしている人がいます。
私にはそれらのどれがサービスを受けた結果なのか分かりません。
だからこそ、別に自分で髪を切ったって、それはそれでひとつの恰好なのだからいいかと思いバリカンを手にしたはずなのに──最初はともかく、
何度も自分で髪を切ってきた今でも、
私はすきバサミを持って一番長い時間をかけて鏡を見ています。
深く刈り込み過ぎていないか、
普通と比べておかしくないか、
みっともなくないか、
そうしたことを確認していました。
その確認のため用いてた基準は、社会や人の目がもつ普通という、ある種空想めいた、おそらく大多数がこう思っているであろう基準です。
前述したように、その普通や良いというものは人から見たら判断のつかないものだと自分で分かっているのに、です。
私は私。
それは変わりません。
とはいえ、
髪を切るこんな瞬間にも社会の一般的を求めたり、普通という型に自分を合わそうとしているのかなと考えさせられました。
結局のところ身も蓋もないことをいえば、刈りたいから刈っていただけです。
自分が思うメリットとデメリットを比較した結果、
バリカンがいいと判断したものの、デメリットがちらついて、なにか大層な理由を探していただけでした。
色んな事情や背景があろうと、どんなことでも、選択したことがすべてだなあと思った今日です。
さっぱりした後ろ頭を撫でると、ザラザラ?ジョリジョリ?なんともいえない触り心地です。
けれど、当たり前なことですが後ろ髪はまた伸びてくる。
だから私はまた、すきバサミを近くに置き、バリカンのスイッチをいれるのでしょう。