
【詩集de刺繍】創作への思いを、糸で紡ぐ

紡績

綿花
まずはみずいろ 間違いなし
次はピンクで かわいくね
ここはレースでおしとやか
纏うわたしは プリンセス
明日はこっちを 縫ってみよう
まほうの石も 一緒にね
だいすき わたしの
わたしだけの
世界一の たからもの

刈取
結び目の
位置も 形も 数さえも
あの子と違う かもしれない
これは正しいのだろうか
ほどいてみては結いなおし
縫ってみては ほつれてしまい
色が 模様が 針までが
違ってないか しか見えず
針の数だけ 増えていき

梳綿
ようやくできた 一張羅
これでいいのよ このままで
ぴょんと飛び出た 糸の端
思わず つまんでしまったら
瞬間 呼ばれたプリンセス
あっという間に ほどけてしまい
人の気知らず 堂々と
構わないわと 胸を張る
ああ そうだ そうだった
この色だった そうだった

練条
印刷するほど 立派じゃないが
紙より強い 意思はある
縦へ横へと 伸びた思いが
重なり 絡まり あっている
そこへわざわざ 針を突き刺し
色鮮やかに あぶり出す
赤や 黄色や 青や 緑の
思いを 救い上げていく
魔法の石も一緒にね

粗紡
ティアラは失くしてしまったけれど
纏いなおした たからもの
レースはほつれてしまったけれど
この差し色で 華やかに
ピンクはくすんでしまったけれど
かえって 上品なわたしに
みずいろは あの頃のまま
わたしの一番好きな色
もう二度と離さないよう
この手に しっかり縫い付けて
次の色を 知らない色さえ
救い上げ続けていく

「し」:32個
紡績とは、糸を作る工程のことです。
綿花を採取し、
解きほぐし(梳綿)、
太さや方向をそろえ(練条)、
細く引き伸ばし撚りをかけ(粗紡)、
さらに引き伸ばして強くする(精紡)。
こうして、糸は紡がれています。
今回は、この紡績の工程になぞらえて、わたしの創作への思いを詩で表現しました。
子どもの頃から今に至るまでを、綿花から粗紡までの5つの詩にしました。
今後も創作を続けることで、わたしなりの「精紡」ができたらいいなあ。
昔好きだったものを思い出し、
またその気持ちを大切にしようと思うきっかけになれば嬉しいです。
詩の中に、たくさんの「し」を散りばめました。
この詩集は、「詩集」としても、「刺繍」としても、「し集」としても
楽しめるようになっています。
お好きな「ししゅう」として、読んでみてください!
さらにさらに楽しめるように、
「糸」にまつわる言葉をたくさん使ったり、
言葉と糸の色をリンクさせてみたり、
言葉をレースやビーズとともに表したり、
刺繍ならではの、表現にこだわりました。
再度読み返して、探してみてください!!


魔法の石
