私が『OK Computer』を聴こうとしない、超・超・超個人的な理由
前回、「だから俺は、同じ音楽が好きな人とも話が合わないのだろう」というタイトルの記事を公開したが、実はそれを象徴するような出来事が、ずいぶん昔にあった。
その理由
遡ること27年前、1999年のある日のことだ。家人が当時勤めていた会社の同僚とその彼氏の4人で飲むことになった。きっかけは双方の男がロック・ミュージックが好きだからという理由だったと思う。俺たちよりも若干若い2人はUKロックが好きだったようで、とりわけレディオヘッドの "OK Computer" が気に入ってたようだ。俺はちょうどその頃にジャミロクワイのアルバムを購入したばかりで、そんな会話をしていたが、なんとなく話はちぐはぐな感じだった。そしてその2人は、ロックをリクエストできる店で "OK Computer" 収録曲をリクエストしては悦に入っていた。
翌週、家人は会社で同僚から俺についてこう言われたらしい。「あんなオタクみたいな人がジャミロクワイが好きだなんて驚いたねって2人で話してた」と。家人は腹を立てて帰ってきて俺に報告してくれた。
あの時、彼らは「ロッキング・オン」や「クロスビート」で紹介されている音楽を聴くことが、時代の先端にいることの証明であるかのように話していた。そして、そうではない音楽を聴いている人間を少し下に見ているような雰囲気があった。
その出来事がきっかけで、俺はレディオヘッド、とりわけ "OK Computer" には目もくれなかった。あいつらと同じものを聴いてたまるか!そんな気持ちだった。
タワレコで受けた衝撃
少し月日が経って2000年9月か10月のある日、仕事の帰りにタワーレコードに寄った。この時は何かを求めてというより、「何かないかな」ぐらいの気持ちで立ち寄り、CDをいろいろ物色していた。
その時に流れてきた曲に俺の耳が反応した。浮遊感がありながらどこか危なげなイントロ、それまで流れていたロックとは明らかに違う何か。ヴォーカルは普通に歌っているようには聞こえない。切り刻まれ、加工され、楽器の一部のように配置されている。なんだこれは良いぞ・・・。2曲目もこれまで聴いたことのないような不思議な感じ。ここで俺は「Now Playing」として置いてあるCDを見た。
Radiohead "KID A"
レディオヘッド?たちまちあの時のことを思い出した。あいつらが聴いていたレディオヘッド?え、これ新譜?なんだよこれ、すごく良いじゃん・・・。そう思った。
とどめを刺したのが3曲目。最初の2曲とは対極にある、荒れ狂ったようなベースとホーン。これを聴いた俺はCDを買って帰った。

Everything in Its Right Place
Kid A
The National Anthem
How to Disappear Completely
Treefingers
Optimistic
In Limbo
Idioteque
Morning Bell
Motion Picture Soundtrack
家でアルバム全編を聴く。衝撃はやはり変わらない。それまでギターバンドという印象を持っていたレディオヘッドが、ロックという言葉からはみ出すような音楽をやっている。このアルバムは電子音が多く、ギターが少ない。だけどギターを使わなくなったことが衝撃ではなく、ロックバンドというものの可能性そのものを広げようとしているように感じた。
ここで俺は初めてレディオヘッドというバンドを意識した。この時に本当に思ったことは
「未来のロックってこうなんじゃないか!?」だった。
当時、エレクトロニカなんて言葉を俺は知っていたかどうか覚えていないが、この先のロックには、そういう要素も大いに含まれていくのではないか。そんなとても面白そうな未来を期待させてくれた。そう思いながらアルバムを何度も何度も繰り返し聴いた。
"OK Computer" を聴く必要がない
俺にとってレディオヘッドとは "KID A" だし、"KID A" 以降のレディオヘッドにしか興味がない。それでいいと思っている。
"OK Computer" を聴かないことについて「もったいない」と思う人もいるだろうけど、俺にとってはこれがレディオヘッドだし、いまさら聴いてみたところで、"KID A" と出会った時ほどの衝撃を受けることはないだろう。だからわざわざ遡って "OK Computer" を聴く必要もない。今でも"KID A"は、レディオヘッドのファンの間で評価が大きく分かれるアルバムだと思う。それだけ異質な作品だったということだろう。
きっと27年前の彼らも "KID A" は苦手なんじゃないかと思う。あの頃であれば「どうせあいつらにはわからねーよ」と思ったかもしれないが、いまとなってはどちらでもよい。俺たちは最初から見ているものが違っていたというだけだ。
