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「大丈夫です。」



    日本で、いちばん働かされている言葉かもしれない。

    疲れていても、大丈夫。
    眠れていなくても、大丈夫。
    悲しくても、大丈夫。

    便利な言葉だ。

    この四文字を口にすると、その場は丸く収まる。
    相手は安心するし、自分も説明しなくて済む。

    だから、つい使ってしまう。

    でも、ある年齢を過ぎて思う。

    「大丈夫」が増えた人ほど、
    本当は大丈夫じゃない。

    頑張ることが上手な人ほど、
    助けを求めることは、少し下手だ。

    「迷惑をかけたくない。」
    「もう少しなら頑張れる。」

    そんな思いを何枚も重ねた先に、
    最後に残るのが「大丈夫」という言葉なのだ。

    だから私は、
    誰かの「大丈夫」を、そのまま受け取らない。

    「そうなんだ」と終わらせるより、
    「本当に?」と、一歩だけ近づける人でいたい。

    もちろん、自分にも。

    以前は、「大丈夫」で何でも乗り切れた。

    でも今は知っている。

    無理を重ねた「大丈夫」は、
    ある日、体が代わりに答えを出してしまうことを。

    だから最近は、
    少しだけ正直になる練習をしている。

    「今日は、ちょっと大丈夫じゃないです。」

    そう言えた日は、
    不思議と心が少し軽くなる。

    「大丈夫」と言わなくても大丈夫な日が、
    本当の意味で、大丈夫な日なのかもしれない。


     
     
    白瀬ひろ。小さな町で、小さなコーヒー屋を営みながら暮らしています。50代からの暮らし、人間関係、心の揺れや小さな幸せを静かに綴っています。少し肩の力が抜けるような言葉を書けたら嬉しいです。

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