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すべからく『愛』を謳え 第十五話『疟走』

すべからく『愛』を謳え  第十五話  『疟走』

①女
   å¥³ã¯ã€æ€’りに打ち震えおいた。
   å¥³ã¯ã€å¯‚しさに打ちひしがれおいた。
   å¥³ã¯ã€å“€ã—みに暮れおいた。
   å¥³ã¯æ°žã„時の䞭で、それらの負の感情を背負い、匕き摺り続けおきた。そしおそれらを堆積し、増幅させ、そしお拡散させおきた。
   ãã‚ŒãŒå¥³ã®äœ¿å‘œã€ãã‚Œã ã‘が女の存圚䟡倀であり、意矩。
   æ°žãã«æž¡ã‚Šã€Žè‹Šã—み』続けおきた女は、これからも苊しみ続け、そしお関わる者党おを『苊したせ』続ける。それは死しお尚、吊、死しおより明確に鮮明になり、身を焊がす皋の業火が女を包み蟌む。それは皮を剥ぎ、肉を炙り、骚ごず灰塵に垰すかの劂く、容赊なく女を燃やし続ける。
  そこには、生前の女の人ずなりや、善行、䞍遇や悲哀などを思いやる恩赊など皆無。氞遠に女を灌熱の炎に閉じ蟌める。
   ã‚‚はや生圚りし日の蚘憶など、熱波の果おに灰ず化した。残りしものは生きずし生ける者ぞの怒りず憎しみ、そしお䜕者でもないずいう、氞遠の孀独。
   ãã®è‹Šã—みから逃れる術は、生きし者の魂を喰らうこずのみ。それも己ず同じ、怒りず憎しみ、恐怖ず絶望にたみれ、呑み蟌たれた魂のみ。それを喰らうこずで、女は刹那の恍惚に包たれ、女の呚りに燃え立぀業火は、より䞀局の激しさを増す。
   ãã®ãšã“しえの苊業の䞭で、女は数倚の魂を喰らい続けおきた。たた、それを成し埗る為に、生きし者を傀儡ずし、己の欲望の為の手足ずした。
 ãã—おその傀儡もたた、歪んだ欲望にたみれ、俗䞖ずは隔たりのある者ばかり。
   ã„぀の時代にも、間匕かれた異皮が存圚し、それらは淘汰されるたでの間、歪な蜍を䞖に残し続ける。
   ãã—おそれらの異皮は導かれるようにしお、女ぞず流れ着く。䞖の理よりはじかれた䞡名は、互いの欲望の為に、支配ず䟝存ぞずその身を投じる。そしお理を逞脱し、人知れず負の波動を、増殖・拡散させる。
  そう、女ず藀本はたさにその関係にあった。
  泣き叫び、絶望の果おに倱墜する魂を喰らう為に、劄想ず珟実の狭間でほくそ笑む藀本に、女は目を぀けた。
   åœŒã®åˆ©å·±çš„な性栌ず、郜合のいい解釈、そしお腐れおも枯れる事は無い粟神力は、たさに傀儡に盞応しい逞材。垞に自分を䞭心に䞖界が呚り、己が『愛』の奉仕者であり、䌝導者である事を信じお疑わない自己陶酔ぶりは、女よりも遥かに深くお陰湿。
   å¥³ã¯è—€æœ¬ã®åš˜ãžã®ã€Žæ„›ã€ã‚’利甚する。
   è‡ªåˆ†ãŒåš˜ã®å§¿ãšãªã‚Šã€åœŒã®è¿‘くに居る事で、互いの利害が䞀臎する。そしお普遍的で理想的な共䟝存関係が、ここに成立するのであった。

  しかし、そこに予期せぬ䞀本のノむズが入った。
   ãã®ãƒŽã‚€ã‚ºã«åˆ»ãŸã‚ŒãŸé›‘音は、女ず同じ波動を持った氞遠の孀独ず、癒えぬ『枇き』。されど、その音に耳をそばだおれば、女ずは䌌お非なる亜皮の怚念に過ぎなかった。
   å¥³ã¯ç”Ÿãã—魂を、それは䞖に未緎を残した怚念を喰らう、蚀わば乞食か残飯持り。そしおそれは生きし者、傀儡の䞭に閉じこもり、その身を隠しおいた。たさに匱き者の成れの果お。もはや栌が違う。同等に語るなどもっおの倖。
 
   ã—かし。
    それは、党おを燃やし尜くすかのような業火を湛えながら、女の前に立ちはだかった。
   æ”Ÿçœ®ã™ã‚‹ã«ã¯çœ‹éŽå‡ºæ¥ãªã„皋に、女にずっおそれはたさに隒音だった。 共鳎し合う孀独はさおおいお、排斥しなければ、女にずっお邪魔になる事は必至。
   å¥³ã¯ãã‚Œã®å‰ã«æ•¢ãˆãŠå§¿ã‚’顕にし、垞人であれば粟神が厩壊するほどの地獄絵図を、その傀儡に流し蟌んだ。傀儡が䜿い物にならなければ、それずお䜕も出来ぬはず。もはや女を邪魔立おするものはない。
  今宵は憎しみず裏切りに焌かれた魂ず、床重なる䞍遇に打ちひしがれた魂の饗宎。
   åœŒå¥³ã®äž­ã®èŠ¯ãŒã€æ¥­ç«ãšã¯é•ã†ç†±ã‚’åž¯ã³ã€ãã—ãŠé€†å·»ãç‚Žã®äž­ã§ã€æŸ“ã¿å‡ºã™çš‹ã«ã€æ·«ã‚‰ã«æ¿¡ã‚Œã™ãŒã£ãŠã„ãŸã€‚


     

「 どこ ここ  」

    幹恵は、すえた獣の匂いの䞭、目を芚たした。
    呚囲は仄暗く静たり返っおいた。そしお芖界には無数のゎミ袋ず煀けた倩井が映りこんだ。
   ã€Œç›®ãŒèŠšã‚ãŸã—ãŸã‹ïŒŸã€
    背埌で誰かの声がした。ハッずしお背䞭に意識を集䞭させるず、人肌に枩かい䜕かがそこに觊れおいた。
「誰  誰かいるの  ここはどこ」
「静かに   å°‘しでも倧きな声を出せば、男が飛び蟌んで来たす」
   ãã®å£°ã«ã€å¹¹æµã¯æ¯ã‚’朜め、䞀瞬だけ呚囲は静寂に包たれた。
   å¹¹æµã¯èµ·ãäžŠãŒã‚ã†ãšã—たが、手足が瞛られおおり、動けない事に気が付いた。それに䌎い、珟圚に至る迄の蚘憶が、少しず぀氷塊しおいく。
    そう、圌女は、あの男に捕らえられたのだ。その蚌拠に、腹郚に未だに痺れるような痛みが残っおいる。
    あの男は自分をどうしたいのか
    それを思っただけで、倧声で叫びそうな恐怖を芚えた。
「気をしっかり持っおください  必ず私たちは助かりたす」
   èƒŒåŸŒã‹ã‚‰ãŸãŸå£°ãŒã—た。声からしお、自分よりも若い女性のようだ。


   ã•おりは埌から連れお来られた女を諭すように、ゆっくりず蚀葉を遞びながら、務めお優しく声を掛けた。背䞭からはその女が震えおいるのが、痛い皋に䌝わっおくる。
   ãšã«ã‹ãå†·é™ã«ã€‚垌望を捚おない。生き残る事。
   ãã®äž‰ã€ã‚’自分に蚀い聞かせながら、圌女も叫びたくなる衝動を必死に堪えおいた。


「時間だ」
  急にドアが開き、あの男が入り蟌んで来た。
「幹恵  い぀たでもお前は綺麗だ  倫ずしお錻が高いよ  」
   ç”·ã¯éŒ»æ¯è’く、ゎミ袋を掻き分けながら幹恵の元ぞ駆け寄っお来た。
   å¹¹æµã¯ç©å¹Žã®æ†Žã—みを顕にしお、男を睚み぀けた。
「その気の匷いずころもたた  茉里子ずそっくりだ  さすがは芪子。僕が愛しただけはあるいい女だ  」
   ã•おりに察する態床ずは雲泥の差で、男は幹恵の䜓を舐めるように芖姊する。
  幹恵は眵声をあげようずしたが、舌がも぀れ、䜕をどう蚀葉にすればいいのか分からず、それは声にならなかった。しきりに睚み぀けるだけで粟䞀杯だった。
「さあ、行こう」
  男は幹恵の掋服の襟銖を掎むず、力任せにそのたた圌女を匕き摺りながら、郚屋を出おいった。
   å¹¹æµã®å”žã‚Šå£°ãŒè™šã—く壁越しにこだたする。
  そしお間もなくしお、たたドアが開いた。
「お前もだ  来い」
   ç”·ã¯å¹¹æµåŒæ§˜ã«ã•おりの襟銖を掎み、そのたた匕き摺っお行く。圌女はなされるがたた、抗わずに成り行きに身を任せた。

  二人はダむニングに通され、床に寝かせられた。
  床には倧量の握り぀ぶされたビヌル猶が転がっおおり、麊汁の臭いがぞばり぀いおいた。

「茉里子、さあ、始めようか」
  幹恵は藀本の声に、目を芋開いた。
  藀本の隣には、黒いドレスを身に纏った茉里子がうっすらず立っおいる。
     å¹¹æµã¯å”–然ずしお、その姿に芋入る。するずその姿はより鮮明になり、圚りし日の茉里子そのものずなった。
   è‚Œã®è‰²è‰¶ã‚„、小銖を傟げる仕草、口角を䞊げるだけでほのかに浮き出るえくが、党おが茉里子そのものだった。
「茉里子  」
  幹恵はやっずの思いで、その名前を声にした。
「おかえり  」
  茉里子は幹恵の芖線に気付くず、茉里子の声でそれに応えた。その声ず衚情は幹恵の知っおいる茉里子より、少しだけ倧人びお思えた。
  茉里子はゆっくりず幹恵に近づき、そっず圌女の銖元に手を添える。するず、幹恵は瞛られた身䜓のたた、するするず宙に浮きあがった。
「茉里子  䜕をするの  ね  やめお  その男の蚀う事を聞かないでね」
  幹恵は茉里子を芋据えお懇願する。
  しかし、茉里子は悪戯を埮笑むず、埌ろに埌ずさりっお藀本に抱き぀いた。そしお圌の耳元に唇を這わせるず、倧きく口を開いお、圌の耳や頬を執拗に舐めたわした。恍惚の衚情を湛えた藀本の顎に指を添えるず、圌の顔を自分の方に寄せ、したたかに唇を重ね合わせた。
「パッパ、倧奜き  」
 ç†±ã„吐息混じりにそう呟き、挑発するかのように 幹恵の目を芋据えながら、藀本の唇を愛撫する茉里子。     ãã®å”‡ã®ç«¯ã‹ã‚‰ã¯ã€æ··ã˜ã‚Šåˆã„癜濁した二人の唟液が、床に滎り萜ちた。

「やめお  やめお お願いだから  茉里子お願い  」
   å¹¹æµã¯ã“の䞖の䞭で䞀番芋たくなかった光景を、今、芋せ぀けられおいた。
   è«žæ‚ªã®æ ¹æºã§ã‚るあの男ず、淫らな接吻を亀わす愛嚘。その光景だけは、自分が蟱められる以䞊に受け入れられなかった。たしおや無理やり嫌がるどころか、自分から誘惑しお、嬉々ずしおそれに講じおいる。『有り埗ない  そんな事ありえない』
  幹恵は心の䞭で䜕床もそう叫んだ。
「お母さんも䞀緒にシよ  」
  幹恵の心の声に応えるように、茉里子は圌女の胞の内を逆撫でする。

  そしお茉里子の芖線は、さおりにも向けられる。
「あなたは私の叔母さんになるの。嬉しいでしょ  私たちの『家族』になれるのだから  」
  藀本ず舌を絡たせながら、噚甚に蚀葉にする茉里子。
  その途端、さおりの身䜓も宙に浮かび始めた。
  迫り来る脅嚁に、さおりは唇を噛み締める。
『倧䞈倫  絶察に助かる  生きお垰る』
  さおりは必死に䜕床もそう、心の䞭で叫んだ。
「それはどうかしら  あなたには違う苊しみを  䞀生背負っお生きなさい  」
  茉里子はそっず藀本から唇を倖した。
  するず藀本は目を芋開いお、さおりの方ぞずその目を向けた。
  さおりは藀本の芖線に釘付けになった。
  藀本の瞳はみるみるうちに挆黒に染たり、そしお県球そのものたでが挆黒の闇に包たれた。
    そしお藀本は埐にズボンずパンツを脱ぎ捚お、毛むくじゃらの䞋半身を顕にさせた。
「パッパ  奜きにしおいいよ  」
  茉里子が囁くず、ビヌル猶を蹎散らしながら、藀本はさおりぞず走っお行った。そしお圌女を壁に抌し付けるず、顔や腕を舐めたわし、胞元を忙しくたさぐり始めた。
「い 嫌」
  さおりも恐怖のあたり、叫び声をあげる。
  「ああああ  」
  その叫びを聎いお、茉里子は感嘆の喘ぎを挏らす。
  そしおニダリず埮笑むず、
「倧切なものを汚される哀しみ、怍え付けおあげるわ  」
   ãã†å‘Ÿã„お、茉里子は目を瞑った。



②杉本茉里子
   è¡å€ªéƒŽã¯èµ°ã£ãŸã€‚
   åœŒã®ç†±ã„巊手、玅く染たる瞳が、圌を焊燥感に駆り立おる。そしお、目の前には幹恵の嚘、茉里子もいる。圌女の先導のもず、藀本ずいう男の元ぞず走り続ける。

   åœŒã¯èŒ‰é‡Œå­ã®å£°ã‚’聞いた。
   åœŒå¥³ã®æƒ³ã„を知り、それに共感をした。
   ãã—お圌女の未緎、最埌の願いを聞き入れる。

   èŒ‰é‡Œå­ã¯åœŒã®äž­ã§ã€ã“う告げたのであった。

  茉里子は母芪幹恵ず、父芪だった男ずの家を远い出された埌、皋なくしお䜕䞍自由ない暮らしに萜ち着いた。しかしあたりものその郜合の良さに、圌女は違和感を芚えた。
   è¿œã„出された圓初、倱意のどん底にあった母芪。
  そしお、狭いホテルの䞀宀に数日間泊たり続けたが、どうにも金が回らず、䞀時期駅の構内や深倜たで営業しおいる居酒屋等で、倜を明かした事もあった。      茉里子自信、状況が逌迫しおいるこずは子䟛ながらに感じ取っおいた。しかしながら、必死に圌女を守ろうずする幹恵の顔を芋るず、悲しい顔だけはしたいず、自ずず自分を埋するのだった。たた、それ以䞊に、倧奜きな母芪ずずっず䞀緒に居られるこずが、圌女にずっおはいちばん嬉しかった。

   ã—かし気が付けば、以前の家ずは比べ物にはならないが、快適で䜕䞍自由ない暮らしが、圌女を取り包んでいた。
   ãã—お、垞に母芪幹恵の呚りには、芋知らぬ男性が入れ代わり立ち代わり、必ずや存圚しおいた。
  鳎り止たぬ電話やメッセヌゞの着信音。その䞀぀䞀぀に甘い声ず蚀葉で返す幹恵。それに呌応するように、幹恵は倖出が倚くなり、朝垰りをする事も少なくなかった。
『行かないで  』
   ãã®æ°—持ちを、勇気を振り絞っお蚀葉にしたが、
「そんなわがたた蚀わないの  倜䞭には垰っおくるから、ちゃんずお利口にお留守番しおるのよ」
   ãã†èš€ã£ãŠèƒŒäž­ã‚’芋せる幹恵の姿が、い぀の間にか圌女の瞌に焌き付いおしたっおいた。

   ãã‚“な䞭、圌女はずある男ず出䌚った。
  その男こそ、藀本だった。
  圌は自らをパッパず自称し、圌女が奜きなお菓子やアニメのキャラクタヌ、ゲヌムや音楜を熟知しおいた。そしお圌はそこはかずなく優しかった。
  圌女のわがたたを党お聞き入れ、欲しかった玩具や行きたかった堎所ぞ、嫌な顔䞀぀せずに買っお、連れお行っおくれた。
   ãã—お圌はずっず圌女のそばで埮笑んでくれる。
   å¯‚しさに暮れる圌女の心の隙間に、圌はそっず寄り添っおくれる。その優しさに、圌女は埐々に心を蚱しおいくのだった。
    そしお長い幎月の間、藀本ずの逢瀬は続き、二人は本物の芪子のように、互いに自宅を行き亀うほどに、その信頌ず絆は育たれおいった。
   äž€ã€é›£ç‚¹ã‚’蚀えば、二人の関係は藀本のたっおの願いで、幹恵には話さないたた続けられおいた。そしお圌女もそれを培底しお隠し続けた。最初は隠す事に息苊しさを感じおいたが、い぀しか、それには圌女なりの意図が働き始めた。
   å¹Žéœ¢ã‚’重ねおいくうちに、藀本の本性ずいうか、性栌が芋え始めたのだ。圌女自身、藀本の粘着質で郜合のいい解釈や、自己䞭心的な考え方に違和感を芚え始めおいた。
    それは埐々に゚スカレヌトし、茉里子が䞭孊に䞊がった時分に、その䞍快を極めた。
    留たる事を知らない藀本の悪癖は、圌女の私物、掗濯機の䞭の䞋着や、䜿甚枈みの生理甚品などを持ち垰る迄に発展する。䌚っおる最䞭の圌は倉わらずに優しい父芪然ずしおいるが、目を離した隙に、その本性は即座に顕になっおいった。そのあたりにもの気色の悪さに、茉里子は぀いには圌を問い詰めた。
「茉里子の党おを愛したくお、綺麗な所から汚れた所たで党おを愛し、受け止めたくお  それで  ごめんね  」
   ãªã©ãšåœŒã¯ã®ãŸãŸã†å§‹æœ«ã€‚
   ç”·ã«ã¯ç§˜ã‚ã‚‰ã‚ŒãŸæ€§ç™–や、堪え切れない欲望や劄想がある事自䜓、䞭孊生になった圌女もそれなりに知っおいた。しかしそれを知っおいるのず、目の圓たりにするのずでは話が違った。しかも父芪同然に接しおいた男が、そんな所業を働くずは受け入れ難かった。
   èŒ‰é‡Œå­ã¯è€ƒãˆãŸã€‚
  『もし、藀本の目が母芪幹恵に向けられおしたったら  』
   ä»¥å‰çš‹ã§ã¯ç„¡ã„が、幹恵の呚りには未だ男達の圱は絶えない。皆、優しい笑顔で玳士に振舞っおはいるが、心の奥底では幹恵ずあわよくばず、淡くも邪な䞋心があるのは、茉里子にも理解出来た。それを幹恵がどう亀わしおいるか、或いは受け止めおいるかはもう考えないようにしおはいるが、母芪が元気でいるずいう事は、圌らもある䞀定のルヌルに沿っお、倧人ずしお節床ある行動を取っおいるのだろう。
  しかし、藀本にはその理性が欠劂しおおり、ネゞが緩んだ時の本性があたりに陰湿過ぎた。もし䞇が䞀藀本が幹恵ず知り合えば、きっず䞍快極たりない行為を圌女にしでかす事は、容易に想像出来る。故に茉里子は、幹恵にその芖線が向かないように、自分にだけに留めさせようず、務めお圌に芪しく接するように心掛けおいた。

  そしおあの日。

「茉里子、安心しおいいよ。お母さんず僕ずの関係はもうずっくの昔に終わっおるんだ。お母さんに僕が取られないように、凄く心配だったよね  倧䞈倫。僕は君しか芋おないし、愛しおいるのは君だけだよ。これからもずっずずっずずっず䞀緒だよ。そしお、僕らは氞遠になるんだよ」

   è—€æœ¬ã¯èŒ‰é‡Œå­ã®åäº”歳の誕生日の日に、満を持しおその本性を癜日の䞋に晒した。
   åœŒã¯äºŒäººã ã‘で密かに催した誕生䌚で、出したゞュヌスに倧量の睡眠導入剀を混ぜ、圌女に飲たせたのであった。疑いもなく口にした圌女に、埐々に迫り来る睡魔ず倊怠感。意識朊朧ずした刹那、藀本はその本性を剥き出しにした。
   å‹•けなくなった圌女を抱きしめ、唇が觊れるか觊れないかの距離で、執拗に頬を擊り合わせ、それを身䜓䞭にくたなく繰り返す。よもや貞操を砎られるかず圌女は恐れおののいたが、圌の衚珟する『愛』はあくたで姊通ではなかった。いや、それ以䞊に粘着質で終わりが無く氞遠。いっその事、姊通される方が雄ずしお動物らしくさえ思えた。
    そしお圌女は䜕かの力によっお、その身䜓を宙に釣り䞊げられた。目の前では腕組みをした藀本が嬉しそうに圌女の顔を芋詰めおいる。
    そしお圌の背埌に、薄く立ち蟌める煙のようなものを茉里子は芋た。そしおそれは激しくうねりを䌎い、藀本の背埌でその勢いを増しおいく。激しい突颚がそこから溢れ出すず同時に、そのうねりは埐々に人の圢を成しおいった。そしおそれは女性ず思しき姿にたで倉容し、蠢く暗闇の䞭から二぀の目が芋開かれ、茉里子を睚め付ける。ず同時に圌女の銖元に芋えない誰かの指が添えられ、䞀気呵成に締め䞊げおいった。
「パ ッ パ や めお 」
  激しい締め䞊げに、声にならない声で懇願するも、藀本は笑顔のたた。
「怖くないよ。パッパが着いおる。これで僕らは氞遠に䞀緒だよ  」

   è—€æœ¬ã®èš€è‘‰ã‚’最埌たで聞き取る事無く、茉里子は芋えない手によっお、その生呜を絶たれた。

  茉里子は残された母芪、幹恵が心配でならなかった。このたた倩に召される蚳にはいかない。
   ãã®åˆ‡ãªã‚‹æ€ã„が、圌女の魂をこの䞖に留たらせた。
   åœŒå¥³ãŒç›®ã‚’芚たしたのは、い぀もの自分の郚屋。そしお圌女の呚りには、のたうち回る異圢の者達が跋扈しおいた。皆圌女ず同様にこの䞖に未緎を残し、それを乗り越えられないたた魑魅魍魎ず化し、枊巻く負の波動を喰らいながら、その魂を取り留め぀づけおいた。
   ãã®ã‚たりの醜悪な様ず䞍快な光景に、茉里子は絶句した。その感情の機埮を察知したのか、その念や怚霊達はたるで逌堎の魚のように圌女に矀がり、その『恐怖』に喰らい぀いた。
  茉里子は恐れおののき、深く動揺する。しかし、それを差し匕いおも母芪、幹恵が心配でならなかった。
  されどその思いに気付く者などおらず、圌女は途方に暮れる。
   ãã†ã€æ€ã„あぐねいおいる間に、藀本が圌女の郚屋に入り蟌んで来るのを圌女は芋た。そしお圌は郚屋䞭のあらゆる堎所に䜕かを取り付けおいく。それが盗撮甚のカメラである事は、圌女も容易に想定出来た。
    そしお藀本の背埌には真っ黒な垞闇が蠢き、その䞭に誰かが居る事を圌女は察知した。
   èŒ‰é‡Œå­ã¯ãã®åžžé—‡ã«ç›®ã‚’凝らした。するず、たさに今際の際に芋たあの目が芋開かれ、その目も茉里子を凝芖する。その目に射抜かれた茉里子は、硬盎しお動けなくなった。次第にその目からは錻、口、顔が圢成され、瞬く間に䞀人の女性の姿に倉容した。
『』
    その姿にたたもや茉里子は絶句した。
    その姿はたさに茉里子そのもの。
     ãã—お、生前の茉里子同様に藀本に寄り添い、執拗に身䜓を寄せ付けお、茉里子自身にそれを芋せ぀けおいるかのようだった。
    たた茉里子は、その女の背埌にのたうち回る女達の無数の圱を芋お取った。それら党おは身ぐるみ剥がされ、顔を倱っおいた。それらは哀しみず恐怖に、たるで陞に打ち䞊げられた魚のように、バチバチずのたうち回っおいた。
『このたただずお母さんが危ない』
  盎感的に茉里子はそう確信した。
  しかし、圌女はその危険信号を発する事が出来ない。
    霊䜓ずなった今、それを誰かに䌝える術もなく、たしおやこの郚屋から倖に出る力さえ、圌女には無かった。
   å”¯äž€ã€åœŒå¥³ã®æ€ã„入れの深かった『ひみ぀にっき』に手を觊れ、隠しおいた机ず壁の隙間から顔を芗かせる事は出来たが、それに幹恵が気付いおくれるかは定かでは無い。
  茉里子は為す術を無くし、途方に暮れる。
 ãã—お䞖間は連続婊女暎行殺人事件の報道を始めた。
  茉里子はその事件に、心なしか芪密な匂いを芚えた。そしお、圌女はその報道が流されるテレビに、そっず手を觊れた。するずそこからは悲痛に泣き叫ぶ女性達の声が聞こえ、そしおその先に藀本ず、圌女を死に至らしめた茉里子ず同じ姿をした女の姿が芋えた。
   èŒ‰é‡Œå­ã«é–¢äžŽã™ã‚‹äº‹ç‰©ã«é–¢ã—おは、圌女の埮匱な力でも、少なからず自身の意思が䜜甚するようだ。それを悟った茉里子は拡散されるテレビや、むンタヌネット、それらの情報網に自分の意識を乗せ、至る所にその思念を送り続けた。
   ãã—お、圌女に䞀筋の光明が刺すのだった。
  のたうち回る女性達の思念に、耳を傟ける男が存圚したのだ。そう、その男こそ聡倪郎。
     èŒ‰é‡Œå­ã¯è¡å€ªéƒŽã«äž€çž·ã®æœ›ã¿ã‚’蚗し、己の姿を芋せる迄に至ったが、圌女の力はそれ以䞊には及ばなかった。呚囲を取り囲む䜎俗な霊たちが、圌女のその力に矀がり、貪り぀いおいた為だ。それにより圌女の魂は䜙力を無くし、哀しみに暮れるだけの思念ぞず陥っおいく。
   ã—かしながら、男は茉里子の存圚を察知し、その思いを案じた。それにより、圌女は思念より魂ぞず昇華し、母芪を思いやる本来の茉里子ぞず戻っおいったのであった。

   ãã—お事態は急倉し、藀本は幹恵を暙的にする。それを察知した茉里子は、党身党霊をかけお、聡倪郎ぞその想いを蚗すのであった。



「ぐっ  あぁあっ」
  走り続ける聡倪郎の脳裏に、ずある映像が流れ蟌む。立ち止たり、膝を抱える皋に、その映像は圌の心のうちを深く抉る。
   ç›®ã‚’閉じた先には、背埌から無理やり矜亀い締めにされ、はだけた胞元から顕わになった乳房を、藀本に激しく揉みしだかれおいるさおりの姿があった。そしおその衚情は苊痛に口蚱を歪めるも、時折垣間芋せる恍惚ずした衚情が、聡倪郎の心のひだを逆撫でする。

『きゃぁぁぁ  おか  あさ  ん』
    時同じくしお、茉里子の脳裏にもずある映像が流れ蟌んだ。
    そこには身ぐるみ剥がされた幹恵が宙に浮かされ、その股間に貪り぀く藀本の姿があった。
   ã„ちばん圌女が恐れおいた光景が、そこに展開されおいた。

   äºŒäººã‚’襲った映像は、ほんの䞀瞬ではあったが、十二分に二人を翻匄するに至る䞀撃だった。

  聡倪郎ず茉里子は互いに芋た映像を察し、頷きあい、そしお手を繋いだ。それにより茉里子の姿ず意識は鮮明に、そしお聡倪郎は怒りの炎がより䞀局、圌の巊手を熱くさせる。
『さおりさん  どうか無事で』
『お母さん  負けないで』
   äº’いに想い人の身を案じ、そしお䞋劣極たりない藀本ず、圌を手玉に取る女ぞの怒りに、二人は打ち震えるのであった。   



぀づく
   
   

   

いいなず思ったら応揎しよう