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すべからく『愛』を謳え 第十䞀話『真停』

すべからく『愛』を謳え   第十䞀話『真停』

①残像
    女は必死に逃げた。しかし急に足が重くなり、歩くのでさえ困難になっお来た。
「なんで  なんで私がこんな目に」
  そう叫び、鉛ず化した足を匕き摺りながらも、圌女は逃げる事を諊めなかった。
  
『絶察に生きお逃げ切る』
  そう、心に匷く決めお、圌女は廃墟ず化したビルの䞭を駆けずり回った。目の前のドアを開き、䞋ぞ繋がる階段を駆け䞋りる。幟床ずなくそのルヌプを繰り返すも、䞀向に出口は珟れない。
「どうなっおんのよ」
  女は暗闇の䞭、䞀人泣き叫んだ。
  

  仕事垰りの深倜、芋知らぬ男に声を掛けられおから、気が付けばこの真っ暗闇の廃ビルの䞭にいた。それたでの蚘憶は䞀切無い。
  急な展開に慌おふためいた圌女は、あからさたな身の危険を感じ、ここから逃げ出そうず立ち䞊がった。
  圌女が立ち䞊がるず同時に舞い䞊がる埃。暗闇でさえそれはむせかえる皋に舞い䞊がり、芖認出来る皋に呚囲に立ち蟌めた。
   åœŒå¥³ã¯è¶³ã®èžã¿å Žã‚‚ないその郚屋から抜け出そうず、右足を䞊げる。ず、同時に、誰かの手が圌女のくるぶし蟺りを掎んだ。
「きゃぁぁぁ」
  倒れ蟌んだ圌女は、必死になっおその手を倖そうず、巊脚で蹎り぀けた。
「いや  いや  」
  ヒヌルの螵が吊応なく足銖にぶ぀かるも、その手は倖れないたた。圌女は手元にあった瓊瀫の䞭からコンクリヌト片を掎み取るず、足銖目掛けおそれを䜕床も叩き぀けた。
「痛っ」
  䜕床も打ち付け、その手は消えたものの、右足銖は歩くのがやっずずいう皋に血だらけになっおしたった。
   ç—›ã¿ã«é¡”を歪め、足を匕き摺りながらも、圌女は出口を目指しお走った。
   ã—かし、䜕床も䜕床も階䞋に降りおも、そのルヌプは繰り返され、疲劎ず痛みの果おに、圌女は遂に倒れ蟌んだ。圌女が倒れた事で、呚囲の埃がたた舞い䞊がる。荒い息でそれを吞い蟌み、圌女は激しく咳き蟌む。それに合わせおたた埃も舞い䞊がる  無限の連鎖が、圌女を取り囲んだ。そしおその埃ず瓊瀫の䞭から、埅ち構えおいたかのように、無数の手が圌女に矀がり始めた。青癜く蠢くそれは、瞬く間に圌女を包囲し、捕瞛する。
「いややめ  お  」
   é‚にはその手は、口の䞭にたで䟵入し、喉奥たでその指を䌞ばした。
  もはや喋るこずも、身動きを取る事も出来なくなったその瞬間、薄汚れた倩井から䜕かが滎り萜ちお来た。倩井から攟たれる際は氎疱を呈しおいたが、地面に近づくに぀れ、それは埐々に人の顔に様盞を倉え、激しい憎しみをたたえながら、䜕個も䜕床も萜ちお来た。
   èœã¡ãŸãã‚Œã‚‰ã¯ã€æ‰‹ãšåŒæ§˜ã«åœŒå¥³ã‚’取り囲み、そしお睚み぀けた。
「」
  そのあたりもの圢盞に、圌女は絶句する。
  そしお、無限に萜ちおくるその顔。
  たるでそれはボヌリングの球かのように、激しい萜䞋音を攟ち始め、どんどん萜ちおくる頻床ずその衝撃は増しおいった。
   æ‰‹ãšé¡”に芆われ、抌さえ付けられた圌女は、ふず芖線を倩井に戻した。ず、その途端、怒涛の勢いで連続で顔が萜ちおくるを目の圓たりにする。
『ぎゃあああ』
  声にならない叫びをあげるのず同時に、その『顔』は萜䞋する衝撃で圌女の顔を粉砕した。


「あああああああ」

   æ€è€ƒã‚‚恐怖も無理やり叩き朰される、誰かの蚘憶から目を芚たした聡倪郎は、気が付けば叫び声を匵り䞊げおいた。

   åœŒã¯äº‹ä»¶ã®ã‚った珟堎を緎り歩き、被害者の無念ず、『枇き』が求めおいる怚念の䜏凊を探し続けおいた。そしお珟圚、この郜内の廃ビル内にお、被害者の䞀人の残像に、寄り添っおいた矢先だった。

  顔面には䜕かが衝突したような痛みず、足銖には突起物で叩き぀けたような痛みが残り、぀い、圌はその堎にうずくたった。
   ç—›ã¿ãŒåŸã€…に匕き、感芚が戻っおくるず、圌は再床呚囲を芋枡した。
   ãã®ãƒ“ルはもう十幎以䞊空きビルにな぀おおり、借り手も買い手も぀かないたたに攟眮されおいた。以前より残されおいたオフィス甚品は、䞀切が朜ちお腐り果おおいた。壁の厩萜やカビの矀生、そしお堆積した埃が各階に蔓延り、被害者の残像の通り廃墟ず化しおいた。
   ãã—おたさにカビのように、あちこちに蔓延る䜎俗霊や、行き堎を倱った情念が右埀巊埀しおいるのも確か。
   è¢«å®³è€…の女性は、䜕床も䜕床も階段を降り続けおいたが、ここは䞉階建おで、その階段の埀来だけなら数分で事足りるはず。たた残像の䞭では、各階党おに瓊瀫が四散しおいたが、珟実ではそこたでの壊滅的な状況ではない。画的に幟分にも盛られおいるようだ。
   æ­»ã«éš›ã«ã€Žææ€–』のあたりに芋えおしたった幻か、或いは圌女は『誰か』にそれを芋せられたのかもしれない。
  そしお断片しか残されおいない念。あからさたに『誰か』が、食べカスを吐き出しおいるずしか蚀いようがない。
   ä»–の珟堎でも同じ事が蚀え、邪悪で狡猟な怚念がその背埌に居る事を、圌は確信した。
   ãšã€ãã®æ™‚、胞ポケットに入れおいたスマホが鳎動しおいる事に、圌は気付いた。
   ã‚¹ãƒžãƒ›ã‚’取り出し、圌は意倖な着信盞手に、驚きを隠せなかった。


②蜜月
    藀本はもう働く事をやめる事にした。
    人にぞ぀らい、誰かの顔色を䌺いながら、その堎の空気を読み枬りながら自分を殺し続ける事に、もはや䜕の意味があるのだろう
   åœŒã«ã¯æ°žé ã«èŒ‰é‡Œå­ãŒå±…る。
   åœŒå¥³ãŒãšã£ãšãã°ã§åŸ®ç¬‘みかけお居おくれるならば、もう䜕も必芁ない。そのたた朜ち果おる事さえ厭わない。
    スマホには数日間、䜕床も䌚瀟からの電話やメッセヌゞが続いたが、䞉、四日過ぎた時点で、それは事切れたかのように息を朜めた。
   ã‚‚う圌を邪魔をするものは居ない。愛する我が子ずの時間に、これからの党おを捧げるのだ。今たで仕事でかたっおあげられなかったぶん、これからはそれに党おを費やす、圌はその芚悟だ。芚悟  それは適切ではない。それが垌望であり、それがもう圌の『党お』である。
    そんな芪バカな藀本に、茉里子はたたに駄々をこねた。こんなに優しい父芪が居るずいうのに、少し歳䞊の姉が欲しいず、声をあげお地団駄を螏む。
  䞀緒に芋おいたドラマの出挔者を指さしお、わなわなず泣き喚いた。
「分かった  分かったから、ほら泣くのはやめなさい。今床お姉ちゃんを䞀緒に探しに行こう。ね、それでいいだろう」
  泣きべそをかいおいた茉里子は、藀本の蚀葉を聞くずニッコリず笑い、圌にたた抱き぀いた。
「いい子だ  いい子だ  」
  藀本は甘える圌女が可愛いくお堪らず、匷く抱き締めるのず同時に、片方の手で優しく頭を撫でた。
   ãã®åˆ¹é‚£ã€å°„粟にも匹敵するほどに恍惚で、濃厚な倚幞感が圌を包む。
  『この䞖の党おは茉里子のもの。党おは圌女を䞭心に動いおいる』
   ãã†ã€è—€æœ¬ã¯ç¢ºä¿¡ã—た。
   ãã—お、茉梚子を抱き締める藀本の右目の瞳が、人知れず挆黒に染たるのであった。


③䜙癜
 ã€Œæ€¥ã«ã©ã†ã•れたんですか  もしかしたらたた、則倫くんが出おきたずか」

   ç€ä¿¡ã®ç›žæ‰‹ã¯ã•おりだった。
   æ€¥ãªç€ä¿¡ã«é©šã„た聡倪郎は、以前話したファミレスで、圌女の衚情を食い入るように芗き蟌んだ。
「やだ  そんなに芋ないでくださいよ  則倫さんはもう珟れおたせんし、私もばあちゃんも元気です。だけど  」
   ã•おりが切り出そうずした瞬間、泚文したコヌヒヌが巊袖から運ばれお来た。
「ごゆっくりどうぞ」
「ありがずうございたす」
「ありがずうございたす」
   äºŒäººã¯é‹ã‚“で来たり゚むトレスに、重なるようにしお、そう謝蟞を告げる。
「なんか、今、ハモりたせんでした  私たち  」
「なんか、そうですよねタむミングも䞀緒だったし  」
   äºŒäººã¯æ¥ãšã‹ã—そうに、静かに笑いあった。

「で、お話ずは」
  聡倪郎は話を本題に切り替えた。
「はい、実はここ最近、䜕床も女性の霊ずいうか、怚念っおいうのでしょうか  それっぜいものが芋えおいる気がしお  」
「具䜓的には、どんなのが芋えおるんですか」
「最初に芋たのは、今䜏んでるアパヌトの近くで、顔が血だらけの女性が立っおいお、じっず私の方を芋おいたんです。その時はパッず目を逞らしたら消えたんですけど、それ以降も同じような感じのものを芋るようになっお  それに、圌女達は倢にも珟れお、それはどこかのビルの䞀宀だったり、工堎だったり、公園だったりで、圌女達は皆、そこから逃げ出そうずするんだけど、たくさんの手に抌さえ぀けられお、最埌はなんお蚀うのかな  なんか生銖みたいなのがたくさん降っおきお、最埌の最埌に顔を朰される的な  」
「  」
   è¡å€ªéƒŽã¯åœŒå¥³ã®è©±ã‚’聞いお、䞀瞬蚀葉を倱っおしたった。あの日、則倫を受け入れる際に、自分が圌女の䞭に入ったせいで、䜕かしらの霊障を䌝染させおしたったのかも知れない。
「あ、やっぱり、私疲れおるんですかね  おかしいですよね  やっぱり  」
  急に黙り蟌んだ聡倪郎の衚情を芋お、さおりは自分の発蚀を濁した。
「いや、そういう蚳ではないんです。すみたせん、もしかしたら、僕ず䞀床繋がった時に、お互いの波長が重なったのかも知れたせん。きっずそれは僕のせいです。すみたせん  」
   æ·±ã€…ず頭を䞋げる聡倪郎。圌自身、こういったパタヌンは初めおで、申し蚳ない気持ちず、どうしたらいいのか分からない気持ちでいっぱいだった。
「そ、そんな  頭をあげおください  こちらも助けお貰ったので、聡倪郎さんには感謝しおるんです。それに、私、子䟛の頃から、ほんの少しだけ、そういうの、芋たり聞いたりも実はしおたりしおたんです  きっず聡倪郎さんのせいじゃないですよ  いや、絶察に聡倪郎さんのせいじゃない」
   ãã†ã€åŒ·ãèš€ã„切るさおりの声ず衚情に、聡倪郎は少しだけ安堵した。さすが、若い頃から倚くの気苊劎をしおきただけに、圌女の声はすうっず聡倪郎に染み蟌んだ。

「それず気になるのが、今、ニュヌスでも報道されおいる、女性の顔を損傷させお殺しおいるっおいう、あの事件の内容ず、私が芋おいる倢がどうも䌌おいるんです  」
「さおりさん、もしかするず、僕らは同じものを芋おいる可胜性がありたす。もし、それが䞀緒であれば、あの事件に関する事で間違いないず思いたす。今から僕が芋た映像を、少しだけさおりさんにも流したす。それが蚘憶にあるか、芋おもらっおもいいですか」
「は、はい  」
  聡倪郎はそっず巊手を差し出し、圌女の右手にその指を絡めた。互いに现く華奢な指は、吞い付くようにしお絡み合い、結びあった。
    さおりも聡倪郎の熱く火照った指に䞀瞬躊躇したものの、その枩床は瞬く間に、圌女の受け入れ易い枩かさにたで融解する。そしお、絹糞のように至極现い螺旋が、指を通しで圌女の脳裏に流れ蟌んで来た。その緊密に線み蟌たれた螺旋の隙間に目を凝らすず、聡倪郎が芋たずいう映像が、断片的に圌女の䞭で再生される。

   å»ƒãƒ“ルから逃げようずする女
   è¶³éŠ–ã‚’æŽŽã‚€æ‰‹
   å€©äº•から降っおくる倧量の顔

  「これです  これも倢に芋たした」
   ã•おりはゆっくりず目を開けるず、芋芚えのある映像に頷いた。
「やっぱり  」
  聡倪郎は少しだけ䞍安な衚情を浮かべた。
「さおりさん、もしかしたらこれからあなたにも、色々な霊障が蚪れるかも知れたせん。もし、あなたに䜕かあったら、僕は柄江さんや則倫くんに申し蚳が立ちたせん  厳密に『助ける』っおいう事が出来るかどうか分かりたせんが、僕はあなたを守りたい。もし良かったら、LINEを亀換させお貰っお、䜕かあればすぐに教えお貰えたせんか」
   å‰å›žã€åœŒå¥³ã‹ã‚‰ã®é€£çµ¡ãŒç„¡ã‹ã£ãŸã®ã‚‚あり、ギリギリで手を差し䌞べる圢になったのも事実。その間の呑気に構えおいた自分が、聡倪郎は正盎恥ずかしくさえ感じおいた。そしお、さおりを守りたいずいう気持ちは、䟿宜䞊の蚀葉ではなく、玛れもなく本心だった。
「あ、はい  」
  聡倪郎の熱い県差しに抌されお、圌女はスマホを取り出しお、画面にLINEのQRコヌドを映し出した。
「ありがずうございたす」
  そう蚀っお聡倪郎もスマホを取り出し、操䜜を始めた。
「えっず  ここかな  」
  急に芚束なくなる聡倪郎。
「倧䞈倫ですか」
「すみたせん  LINEを亀換するの、久しぶりなもので  」
  消えそうになる画面を、䜕床かタップしお埅っおいたさおりは、LINE盞手に手こずっおいる聡倪郎を芋お、ほんの少しだけ『可愛い』ず思った。
「聡倪郎さん、貞しお。私がやっおあげたす」
「あ、は、はい  すみたせん」
  さおりに促され、おずおずずスマホを枡す聡倪郎。

「はい  どうぞ。これからよろしくお願いしたす」
  悪戯に埮笑んで、さおりはスマホを聡倪郎に返した。
「あ、ありがずうございたす  」
  恥ずかしそうにスマホを受け取った聡倪郎は、そこに映されおいるトヌク画面を芋おほくそ笑んだ。
   ãã“には、『これからよろしくお願いしたす』ずメッセヌゞが打たれおおり、その䞋にはうさぎのキャラクタヌがニッコリ笑っお、䜕床も頭を䞋げるスタンプが螊っおいた。
  聡倪郎も『こちらこそ』ず打ち蟌んで、可愛いスタンプを送ろうず、テンプレヌトの䞭を探したが、玠っ気ないものしか入っおおらず、臎し方なく絵文字ず顔文字を探しお連発した。
「ぷふっ  聡倪郎さん  意倖ずやるこずおじさんなんですね」
  さおりはその返信を芋お、吹き出した。
「え  なんかおかしかったですか」
   ç›®ã‚’䞞くする聡倪郎の目の前に、自分のスマホの画面を芋せるさおり。
「こんなに絵文字送るのっお、おじさん構文っおいうらしいですよ」
「あはっ、そうなんですね。倱瀌したした  」
  二人は顔を芋合わせるず、今䞀床吹き出した。

「聡倪郎さんっお、䞍思議な人だけど、なんか面癜いですね  よかったら、少し違う事もお話したせんか」
「違う事」
「うん、お互いに自分の事ずか」
「さおりさんが良ければ、喜んで」
   æ€¥ãªå±•開に驚いたものの、圌女からの提案は玠盎に嬉しかった。
   ãã—お二人は時間を忘れるかのように、䌚話も没入しおいくのだった。



④杉本幹恵
   
杉本幹恵は焊っおいた。
    䞀人嚘である茉里子が亡くなっお、もう䞀ヶ月が経過しおいた。
   è­Šå¯Ÿã¯åœŒå¥³ã®æ­»ã‚’『自殺』ずしお断定し、それ以䞊螏み蟌もうずはしなかった。
  しかし、茉里子は決しお自殺をするような子ではない。芪子の関係も順調だったし、孊校でいじめに遭っおいた蚳でもない。成瞟も母芪に䌌お優秀で、受隓を苊にしおいた蚳でもない。なのに䜕故
   è­Šå¯Ÿã¯éŠ–ã®åœ§è¿«ç—•ã¯èªã‚ãŸãŒã€éƒšå±‹ã«ã¯äº‰ã£ãŸã‚ˆã†ãªåœ¢è·¡ã‚‚ãªãã€ãã®ç—•ã¯ç¶ºéº—ã«ç·šã‚’æãã€ãŸã•ã«éŠ–ã‚’åŠã£ãŸç—•ã«ç›žäŒŒã—ãŠã„ã‚‹ãšã—ãŠã€ãã‚Œä»¥äžŠã®æœæŸ»ã«ã¯èžã¿èŸŒãŸãªã‹ã£ãŸã€‚
『家族関係良奜、成瞟優秀、そうは蚀っおも思春期真っ最䞭ですからね。お母さんの気づけないずころで、䜕かしら悩んでらっしゃったのではないですか  ほら、倱瀌ですが片芪でもらっしゃいたすし  ねぇ  』
   æ‹…圓した幎配の刑事は、堂々ず䞍適切な発蚀を圌女に攟ち、無理やり『自殺』を抌し通した。きっず定幎間際に面倒な事件をこしらえたくなかったのだろう。
『自殺に䜿われたであろう、玐か、䜕かしらの物が芋圓たらないのは䞍思議ではありたすが、それをこじ開けるのであれば、我々は䞀番身近な方から疑いの目を向けなければならなくなりたす』
『どういう意味ですか  私が殺したずでも蚀いたいんですか』
   å¹Žé…ã®åˆ‘事は幹恵の顔を䞀瞥するず、やれやれずでも蚀いたげな衚情をしお、それ以䞊䜕も蚀わなかった。
   è­Šå¯Ÿã¯ã‚おにならない
   ã‚の日感じた思いは、いたも根深く圌女に残っおいた。
   æŠ±ãˆãŠã„た仕事のプロゞェクトも投げ出し、ここ䞀ヶ月、嚘の死の真盞を探ろうず、圌女は躍起になっおいた。
    死ぬ間際迄の嚘の感情を読み取ろうず、茉里子のSNSを含め、郚屋に残っおいる遺留品党おに目を通した。しかし、そこには圌女の知っおいる茉里子しかいなかった。そしお、孊校や塟の教垫や生埒達にも詰め寄り、嚘の死の手掛かりを探し求めた。しかし返っおくる答えは党お同じで、どれも圌女が期埅、或いは玍埗するような答えは返っおこなかった。
   ãŸã£ãŸäž€ãƒ¶æœˆãªã®ã«ã€ã‚‚う䜕幎もそうしおいるようで、圌女は疲劎困憊、満身創痍の果おにいるかのようだった。
   
このたた諊めおしたえば、どんなに楜だろうか  きっず思春期特有の心の機埮が、抌しおはいけないスむッチを抌しおしたったのかも知れない。そこは誰も介入しおはいけない領域で、入ったずころで、誰も理解出来ない心境なのかもしれない。

   ã“こ数日、そんな匱音が心の䜕凊かで盛れ始めおいた。しかし、予期せぬ嚘の死。それをそのたた受け入れるには、母芪ずしおの本胜がそれを容赊しなかった。



「あのう  これ、頌たれおたものだけど、どうか、䌚瀟には絶察に蚀わないで、くださいね  」
   
  ずある日、茉里子の葬儀を執り行った葬儀瀟の瀟員から、ある映像が送られお来た。
    圌は幹恵が倧孊生の頃の埌茩で、圌女に熱をあげおいた数倚い男子生埒の䞀人だった。
   åœŒå¥³ã«å¿ƒã‚’射抜かれた男達は皆、圌女を手にするこず無く、それぞれに家庭を持぀に至ったが、その殆どが幹恵ずの繋がりを断おずにいた。シングルマザヌずなった幹恵は、その繋がりをこれみよがしに䜿いこなし、嚘には䞍自由の無い暮らしを提䟛し続けおいた。     ãã†ã€å¹¹æµã¯è‡ªè² ã—おいた。しかし、嚘はもういない。
   ã›ã‚ãŠã€ãã®æ­»ã®çœŸç›žã«å ±ã„るべく、䜿えるものは党お駆䜿した。そしお今回の葬儀瀟の男には、茉里子の葬儀の際の監芖カメラの映像を送るように䟝頌しおいたのだった。よもや匔問者の䞭に䞍審な動きをする者が居ないか、圌女は確かめたかった。
「うん  分かった。絶察に蚀わないから安心しお」
     æ‰‹çŸ­ã«é›»è©±ã‚’終わらせるず、圌女はパ゜コンを立ち䞊げ、その動画を再生させた。




それからおよそ五時間ほど経ったであろうか  時蚈の針は深倜䞀時を回っおいた。
   å¹ŸåºŠãšãªãå†ç”Ÿã‚’重ねるも、さほど目立った䞍審者は芋぀からず、圌女は頭を抱えた。

   ãƒ‘゜コンは䌚堎内、祭壇を前に経文を唱える僧䟶ず参列者の埌ろ姿が映し出されおいた。
   äœ•床も確認した映像だったが、幹恵は今䞀床、コマ送りで䞀コマず぀目を光らせた。

   ãã—お  

    圌女はその䞀コマに、背筋の凍る皋の恐怖を芚えた。
  その䞀コマには祭壇の䞊、茉里子の眠る棺桶の䞊にぞばり぀く黒い塊があった。そしお次の䞀コマではそれが消え、たた数コマ進めるずその黒い塊は珟れた。     é€šåžžã«å†ç”Ÿã™ã‚‹ãšãã‚Œã¯ç›®èŠ–å‡ºæ¥ãªã„ãŒã€ã‚³ãƒžé€ã‚Šã§èŠ‹ã‚Œã°ã€ãã®é»’ã„å¡ŠãŒæ£ºæ¡¶ã®å‘šã‚Šã‚’å³åŸ€å·ŠåŸ€ã—ãŠã„ã‚‹ã®ãŒèŠ‹ãŠå–ã‚ŒãŸã€‚
   ãã—おその塊はやがお人の圢を暡し、そこに顔らしきものが珟れた。
   å¹¹æµã¯äž€åºŠå”Ÿã‚’飲み蟌んで、その画面を拡倧しおいく。

   ãã—お圌女は蚀葉を倱った。

『こ、この男は  』
   

  声に出来ずに、その蚀葉を圌女は䜕床も、頭の䞭で連呌するのだった。



぀づく

いいなず思ったら応揎しよう