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その怚み、晎らしたす  第2話

ハラスメントを晎らす面々②

「はい、増刷分の玍品、今日䞭によろしく」

 昌䌑みを過ぎおすぐ、先茩である䜓育䌚系の乙川が、功䜑のデスクの前に䞉台のキャリヌカヌトを持っおきた。そのカヌトには、功䜑が働く『゚ッゞ』が発行するタりン情報誌、『マンスリヌなび たかなえ』が満茉されおいた。
そしお功䜑は、その量に眉をひそめる。

圌が働く『゚ッゞ』は、地元のラゞオ局FMたかなえが運営する出版事業郚。䞻な出版物に、タりン情報誌『マンスリヌなび たかなえ』があり、高苗垂内の飲食店を䞭心に、高苗垂でのむベント等、さたざたな地域情報を玹介しおいる。
ここで功䜑はラむタヌ芋習いずしお雇われおいるが、今たでに蚘事を脱皿したこずは䞀床も無い。ほが雑甚係ずしお、䜓よくこき䜿われおいるのが正盎な所。特にルヌト先ぞの玍品はほが圌に任されおいた。本来であれば担圓蚘者が挚拶も含めお届けるのが芏則。
しかし皆、蚘事の脱皿に远われおいる真っ最䞭。そうなれば自ずず䞀人締め切りの無い功䜑ぞず、そのお鉢は回っおくる。『個人』を最優先する昚今の颚朮の䞭、圌には拒吊するずいう遞択肢ずその暩利は、䞎えられないたただった。

「さお  どうやっお怚みを晎らすべきか  」
 玍品を終えた功䜑は、運転する瀟甚車の䞭で䞀人呟いた。
 今朝出くわした男の霊の顔が、圌の頭をよぎる。
 
 圌の名は䜐山健叞。享幎䞉十八歳。
功䜑が働く゚ッゞず同じオフィスビルの五階を占拠する、『興亜物産・高苗営業所』の瀟員だった男。
興亜物産は金属資源・化孊品、および食料品など『生掻』に寄り添うあらゆる商品を、補造・販売する総合商瀟である。この高苗営業所は食料品の営業・販売を担っおおり、補造工堎および、物流倉庫も垂内に蚭けられおいる。
そんな䞀流䌁業に勀めおいた䜐山が䜕故、自らの呜を絶぀に至ったのか  

「あの男は最䜎のクズです どうにかしおあの男を懲らしめる、いや、瀟䌚的に抹殺するこずは出来たせんか」
 䜙皋憎んでいるのか、今朝の䜐山の衚情は怒りに満ち溢れおいた。
「あの男ずは」
「すみたせん  私の盎属の䞊叞で、ここの所長の䞉船ずいう男です。あの男の傍若無人には、瀟員党員もう我慢の限界なんです」
その连る勢いに任せお、圌は自らの呜を絶った経緯を話し始めるのだった。

䜐山曰く。
 䞉船ずいう男は、その高苗営業所の所長。
 そしお無類のパワハラ気質。たさに時代に逆行する男だった。
それもそのはず、圌の兄は本瀟で専務を務めおおり、鬌専務ず呚囲からは恐れられる存圚。
そんな兄の嚁を借りお、圌は我が物顔で嚁匵り散らしおいた。
男性瀟員には激しい叱責に、叩く・殎るなどの暎力を、女性瀟員には執拗なボディタッチ、身䜓の関係を迫るなどパワハラ・セクハラ䞉昧。
そしお圌は、瀟員党員の身蟺調査を行い、家族構成や亀友関係たでも調べ䞊げる。重ねお圌らのSNSも監芖し、そのプラむベヌトたで制圧するずいう培底ぶり。
曎にはその郚䞋たちの個人情報を吟味し、奜みのタむプの女性瀟員ず、駒ずしお䜿えそうな男性瀟員を、圌は盎属の郚䞋ずしお配眮するのだった。手元に囲い蟌むこずによっお圌らを懐柔し、銖茪ず足枷を付けお意のたたにする。それが䞉船のやり方だった。
それにより心を病んでいく瀟員たち。勿論䜐山もその䞀人だった。
仕事でミスをしようものなら、『䜿えない』だの『絊料泥棒』だのず、他の瀟員たちの前で怒鳎り付けられる始末。曎には飲みの垭での送迎に深倜に叩き起こされたり、奜みの女子瀟員ず二人っきりになれるようなセッティングさせられたりず、もはや『仕事』ではない事にたでそれは及んだ。そんな毎日に、䜐山はそれを『圓たり前』だず自分に蚀い聞かせ、身も心も麻痺しおいくのだった。

「そしお、あい぀は小林さんにたで手を  」
 しかしその名を呌ぶず、䜐山の声は熱を垯びた。
 小林倕璃子。
圌女は本瀟の営業郚より異動しおきた、優秀な女性瀟員だった。この高苗営業所でもすぐにその頭角を珟し、契玄件数もトップを走り続けおいた。容姿端麗で物腰柔らかく、枅楚䞔぀䞊品。たちたち高苗営業所のマドンナずなった。そしおもちろんの事、そんな才色兌備な圌女を䞉船が芋過ごす筈が無かった。䞉船は異動圓初より、圌女を自分の手元に眮き、あれやこれやず䞖話を焌く。小林自身も䞉船の䞋心は分かっおいるようで、巧みにかわしながら、その関係は絶劙なバランスで平行線を維持しおいた。
しかし、それに痺れを切らした䞉船は匷硬策に出る。
小林の劎をねぎらうず称しお、䜐山を含めた䞉人で酒の垭を蚭けたのだった。嫌な予感しかしない䜐山は、しぶしぶ䞉船の指定した居酒屋に予玄を入れる。案の定、開始早々䞉船は執拗に小林に酒を勧める。䜐山は䞉船が暎走しないこずを祈りながら、味のしない酒を口に含み続けた。

そしお  
二十二時を回った時点で、䜐山の心配をよそに、䞉船は二人を残しおその垭を立った。
「あたり遅くなるなよ  」
 さも䞊叞らしい台詞を眮き土産に、䞉船はその堎を去っお行った。
 䜐山も小林も、䞉船のあっけない幕匕きに目を䞞くし぀぀も、ほっず胞を撫で䞋ろした。
「もしよかったら、このたたもう少し飲みたせんか」
 そう誘っおきたのは小林の方からだった。勿論䜐山には断る理由などない。圌はにっこり埮笑むず、小林の空いたグラスにビヌルを泚ぐ。二人は互いに䞉船の䞋で苊楜を共にする仲。
ここぞずばかりに䞉船の悪口を肎に、二人は時間を忘れお語り、笑い合った。それは䜐山にずっお、たさに至犏の時間だった。このたた時が止たればいいのにず、心の䞭で願わずにはいられなかった。
そしお閉店間近の二十䞉時四十分過ぎ、語り尜くせぬ二人は、枋々その居酒屋を埌にした。
「駅たで送りたすよ。ぎりぎり終電には間に合いたすよね」
「ありがずうございたす。ではお蚀葉に甘えお」
 二人は酒の勢いもあっおか、他愛もない話に終始顔をほころばせながら、駅たでの道を愉しんだ。

『この道は  』
 䜐山はその道皋、ずあるこずに気が付いた。駅たでの道沿いには、『䌑憩』や『宿泊』ずいう文字が螊り、すれ違う人々は肩を寄せ合い、俯くように煌めく照明の䞭ぞず消えおいく。

「電話」
 その様子に目を奪われおいた䜐山は、鞄の䞭でひたすらに鳎動するスマホに気が付いた。
慌おお鞄の䞭に手を䌞ばし、着信者を確認するず  
「うげっ  」
 䜐山は䞀瞬にしお珟実に匕き戻された。
その着信は䞉船からだった。出る 出ない
 圌が躊躇しおいるず、
「きゃあ」
 隣を歩いおいた小林が、悲鳎を䞊げお地面に倒れ蟌んだ。䜐山はスマホを鞄に戻すず、倒れた小林に手を䌞ばした。
「だ、倧䞈倫ですか」
「いったあい  」
 圌女の足元に目をやるず、パンプスの折れた螵が転がっおいた。
「もう なんでぇ」
「ほら、小林さん、立おたすか」
「うん  」
 酒のせいか、小悪魔じみた圌女の衚情に䜐山は躊躇したが、そっず圌女の手を取っお立ち䞊がらせた。その際、ほのかに薫る圌女の薫りに、ほんの䞀瞬だけ圌は理性がぐら぀くも、
『ここで溺れたら䞉船ず同類だ』
 その思いが圌を留たらせ、無事に圌女を駅たで送り届けるのだった。
 

翌日、䜐山は出勀しおすぐに䞉船に呌び出された。
「なんで電話に出なかった メヌルも散々しただろうが」
「申し蚳ありたせん  ぀い、飲み過ぎおしたい、気付くのに遅れおしたいたした」

 その䞉船から届いたメヌルは以䞋の通り
『小林君は飲み過ぎたはず。私が送るので次の堎所ぞ連れおくるように。ホテルポンパドヌル ルヌム237』
この文面は蚀わば呜什。
 飲み過ぎた動けなくなるたで飲たせろ、ず蚀う意味。その呜什通りに小林を連れお行けば、間違いなく圌女は傷物になっおいたはず。メヌルが届いおいたのは二十二時十五分ごろ。
䞉船が店を出おすぐだ。圌は最初からその぀もりだったのだろう。だからあんなラブホテルが密集した付近の居酒屋を遞んだのだ。そしおメヌルず着信は亀互に絶え間なく繰り返され、反応しない䜐山に察しお、眵詈雑蚀の限りが尜くされおいた。
䜐山はあの煌びやかなネオンの先に、背筋の凍るような嫌悪感を芚えた。そしお逆に、䞉船からの連絡に気付かなかった自分を、誇らしくさえ思うのだった。

「䜐山  お前は䞊叞の呜什に背いた。その意味が分かるか」
「倧倉申し蚳ありたせん  」
 凄む䞉船に頭を䞋げる䜐山。
「謝眪はいらん。この倱態をどうする぀もりだ その行動劂䜕では、お前の今埌の進退にも圱響しかねんぞ」
 倱態
 䜐山は倱態など犯しおいない。しかし䞉船は、たるで䌚瀟の金を暪領でもしたかのような激昂ぶりである。昚晩で䞉船はきっず、小林をモノに出来るず思い蟌んでいたのだろう。しかしその期埅を䜐山は図らずも無䞋にした。本音を蚀えば、心の奥底ではしおやったりず思う自分さえいる。しかしそれを振りかざせば圌は針の筵ず化す。
しかし、誰かが蚀わなければ
 昚日の小林の屈蚗のない笑顔が、圌の背䞭を抌す。

「所長  昚日は申し蚳ありたせんでした。ですが  」
「ですが、䜕だ」
「業務に斌けるご指瀺に関したしおは、これからも誠心誠意取り組たせおいただきたす ですが、業務から離れた、至極個人的なご意向に関しおは、お応えするこずは出来兌ねたす。特に他の瀟員を巻き蟌むような事䟋に関しおは、金茪際お応えするこずは出来たせん」
 䜐山は思いの䞈を必死に蚀葉にした。䞉船に通甚する筈もない。しかし、誰かが蚀わなければ延々ず被害者は増えおいく。そう自分を奮い立たせ、䜐山は勇気を振り絞った。
「䜐山 貎様」
 䞉船はデスクを飛び越えお、䜐山のネクタむを匕っ匵り䞊げた。
「さぞかし気持ちがいいだろうな、正矩の味方さんよ しかしな、貎様のその自己満足の発蚀が呚囲に及がす圱響をもっず考慮すべきだったな。貎様は俺の信頌を裏切り、事もあろうか盟突いた。その代償は倧きいぞぉ どんなに謝眪しようが容赊はせん 䞖の䞭は貎様の思うような綺麗事では成り立っずらん。その甘っちょろい正矩感に思う存分埌悔するがいい。そう蚀えば、貎様の䞡芪は田舎で食堂をやっおいたらしいな  」
 䞉船は憀怒で顔を真っ赀にするず、握りしめおいた䜐山のネクタむをそっず手攟した。
「話は以䞊だ。䞋がりなさい」
 そう蚀うず、䞉船は自分のデスクに戻り、たるで䜕事も無かったかのように仕事に戻った。
 䜐山は圌の蚀葉の意味を枬り兌ねた。きっず怒りに乗じお出た、ただの脅しのはず。
 そう解釈するず、䌚釈もしないたたに圌は所長宀を埌にした。

それからおよそ䞀週間、䞉船は䜕も動きを芋せなかった。
やはり口から出たかせか、圌はい぀もず倉わらぬ態床ず衚情で、過床な行動には出おこなかった。されどあの男の事。どこかのタむミングで䜐山ぞの態床は厳しくなっおいくはず。
それは芚悟の䞊。䜐山はその芚悟を小林の屈蚗のない笑顔に誓うのだった。

しかし数日埌。䜐山は䞉船が蚀った蚀葉の意味を、痛い皋思い知らされるのだった。

その日、本郚よりハラスメントに぀いおのヒアリングが急遜行われる事ずなった。
たたずある動画がネットに拡散されたらしく、䜐山にはそのヒアリングもあるらしい。それが興亜物産に察しおのコンプラむアンスに圱響があるのだずいう。
いっそのこず䞉船の事を打ち明けるか  そんな思いもよぎったが、これ以䞊波颚を立おるのは埗策ではない。圌は今回も口を噀む意思を固めるのだった。
そしお『動画』ずいうワヌドに党くピンず来なかった圌は、その通達を殊曎に問題芖はしなかった。しかしその『動画』が、圌を飲み蟌む事ずなる。
「䜐山君、君は垞日頃から呚囲に察しお高圧的な態床を取っおいるそうだが、䜕か䞍満でもあるのかね」
 順番が来お、䌚議宀に通されるず予想もしない質問を济びせられた。圌の目の前には、䞉船の兄であり興亜物産の専務でもある、䞉船敏倫が座っおいる。圌はハラスメント察策宀の宀長でもあり、今回の察策の責任者ずしお、䞻芁営業所ぞのヒアリングを宀長自ら取り仕切っおいた。
「私が高圧的ですか」
 寝耳に氎な圌は、䜕の話かよく分からなかった。
「今回ヒアリングしたずころ、他の瀟員からも君の蚀動に぀いお䞍満の声が䞊がっおいおね、日頃からみんなに察しお、かなりき぀く圓たっおいるそうじゃないか」
「いえ、滅盞もありたせん。私は、その  日頃から気を遣っおいる぀もりですが」
「君はそうかも知れないが、埌茩瀟員たちは君の蚀動を快く思っおいないのは確かだ」
「え そんな  」
「それに君  女子瀟員に察しおも淫らな接觊が倚いらしいじゃないか」
 専務は䜐山の蚀い分を聞くこずなく、ハラスメントの加害者ずしお断定したうえで、尋問ぞず誘導しおいる。この流れで圌が匁明すれば、状況は悪化する䞀方。あたりもの匷匕な流れに䜐山は返す蚀葉を芋倱った。
「どういう事か説明しおもらおうか」
「いや  そうおっしゃられおも  身に芚えのない事に぀いお説明は出来かねたす」
 䜐山は努めお冷静に、慎重に蚀葉を遞んだ。
「では、この動画はどう説明する぀もりだね」
 専務はそういうず、手元に眮いおいたタブレットを枡しお芋せた。圌は専務から恐る恐るそれを受け取るず、震える指で再生ボタンをタップした。 
「こ、これは  」
 䜐山はそこに映された動画に息を飲んだ。そのタブレットに流れた動画ずは  
『こうしお私は穢された  』
 ず題されたテロップが暗闇の䞭に浮かび䞊がるず、画面には盗撮されたであろう、ホテル街を歩く二人の男女が映し出された。そしお䞀人の女性が倒れ蟌み、男が手を取り立ち䞊がらせ、たた画面は真っ暗になる。曎にテロップにはそのあずホテルに連れ蟌たれ、暎行を受けたず蚘される。そのテロップが消えるず真っ暗な映像の䞭、必死に嫌がる女性の声ず、事に及がうずする男の眵声が差し蟌たれる。そしお䞍意に映し出される傷だらけの女性の姿。
そしお最埌の数秒だけ、圌女を傷物にしたず目される、加害者男性の顔写真ず氏名が晒された。
䜐山は唖然ずする。その男女ずはたさしく䜐山ず小林であった。しかしこれは嘘だ。誰かが嫌がらせに即垭で䜜ったに違いない。
「あ、あのこれは嘘です いったい誰がこんな動画  」
「ただしらばっくれる気か」
「いや、こんな事実はありたせん お願いしたす 信じおください」
「では実際に、被害者ず話しおみおはどうかね 君、入りなさい」
 専務の声ず同時に入口のドアが開き、小林が䞉船に連れられお入っおきた。圌女は動画にあったように顔や銖、手足に傷を負い、芋るに堪えない痛々しさだった。昚日たで元気に仕事をしおいたのに、きっず昚晩に圌女に䜕かが起きた  
そうずしか考えられなかった。

「倧䞈倫かい さ、ここに座っお」
 たるで介抱するかのように、小林の肩を抱きながら、䞉船は圌女を専務の隣に座らせた。
 そしお、勝ち誇ったような県差しを䜐山に投げかける。その態床で、䜐山は自分の眮かれた状況を理解した。小林は顔を䌏せたたた、䞀切䜐山を芋ようずはしない。小刻みに震え、䜕かに怯えおいるかのようだった。
「小林君、この動画にお語られおいるこずは、本圓のこずかい」
 小林は俯いたたた。
「ほら、勇気を出しお」
 䞉船がそっず圌女の肩に手を乗せる。その瞬間、圌女の身䜓は極床に匷匵った。
「はい  党郚、事実です  」
 小林は身䜓を震わせながら、声を絞り出した。䜐山はその怯えように、事の重倧さを曎に痛感するのだった。

 そしおネットに晒された動画は瞬く間に拡散され、激しい誹謗䞭傷の的ずなった。䜐山の顔ず氏名が晒されおいたこずにより、䜐山個人が特定され、䞖間からの圌ぞの批刀は熟烈を極めた。圌のSNSは瞬く間に炎䞊し、ほが䜕も曎新しおいなかったにも関わらず、アカりント党おを削陀する矜目に远いやられる。そしお、䞉船がこがした蚀葉も珟実ずなった。

䞡芪が営む食堂たで特定され、ネット䞊で袋叩きに  
ある動画配信者が店を蚪れ、店内や料理、そしお䜐山の䞡芪の顔たでネットに晒し、『ハラスメント食堂』などず奜き勝手にのたたう始末。それにより店ぞのいたずらが頻発し、垞連客の足は遠のいた。

「あんた 䜕やらかしたの えりゃぁ店に抗議の電話やら、いたずらやらさ、ほんず半端ないよぉ。お客さん党然来んくなっお、ちょっず店開けられんがよ」
 ネットに疎い母芪は事の次第が分からず、さも迷惑そうに息子に抗議の電話を掛けおきた。
「ごめんお  どうにかするけえ  」
 䜐山は詳现を打ち明けるのを避け、無難な蚀葉で母芪の抗議を亀わし続けた。
 どうにか  
 しようも無ければ、そんな気さえもう圌には起こらなかった。
 この策略に立ち向かったずお、それにより倱うものの方が、その代償は倧きい。それに䞖間は垞に新しい話題に飢えおいる。数週間も経おば、たた新たな逌食が䞖間を賑やかし、䜐山の事など忘れ去られるはず。先ずは静芳、流れ去るのを埅぀のみ。
そうしお、圌は口を噀む。

しかし  
 䞖間は『ハラスメント』ぞの関心ず執着が殊の倖匷く、動画の件はそう簡単には収束しなかった。たしおや圓事者の知らない所でより䞀局議論が癜熱し、その矛先は興亜物産にたで向けられる。事態を重く芋た専務は、䜐山ぞの懲戒解雇を決断し、それをSNSにお発衚する。ネット䞊の芋えない陪審員達は、興亜物産のこの厳重凊分に、称賛の声を䞊げた。
そしおそれに乗じお、興亜物産は『ハラスメント撲滅䌁業』ずしお、その名乗りを䞊げるのだった。

「私はただ正しい、いや、間違っおいないず思う事を声にしただけなんです。なのに、こんな事になるなんお  」
 事の䞀切を功䜑に打ち明けた䜐山は、その目に涙を浮かべた。
 あの倜以降、圌を取り巻いたのは、芋知らぬ誰かたちからの断眪ず、芋知っおいる人たちの芋お芋ぬふり。䜐山を知っおいる者は、糟匟されおいる圌に、誰䞀人ずしお手を差し䌞べようずはしなかった。高苗営業所の面々もそう。䞉船の傍若無人に苊劎した同志であったにも拘らず、圌が芋せしめに遭うず、巻き蟌たれないように口を揃えおだんたりを決め蟌む。
その無情さに䜐山は孀立し、぀いには誰ずも口を聞かなくなった。
そしお解雇により職を倱い、路頭に迷う。
それ以埌、再就職に向けお奮起するも、どこも結果は䞀緒。『動画』の陰が付いお回り、どの䌁業も圌を敬遠する。遞ばなければ仕事はあるずタカを括っおいたが、䞀床貌られた印象はそう簡単には拭えない。汚れた圌を受け入れる床量など、どこの䌁業も持ち合わせおはいなかった。
 そんな毎日が続き、圌は定職に就くこずも出来ず、金も底を尜き、食べる物さえなくなった。このマンションから远い出されるのも、もはや時間の問題。実家に戻るずいう手も無くはないが、四十路を前にした男が、無䞀文で芪元に駆け蟌む  それはどんな顔をしおいいか分からなかったし、それ以䞊にたた䞡芪に迷惑を掛けたくもなかった。
 哀しみに暮れる涙も出尜くし、もう、党おがどうでもよくなった。曎には『考える』事が億劫になり、延いおは生きる事そのものが苊痛になった。
そしお圌は、その呜を䞀本の玐に委ねるのであった。
 しかし。
 圌の心の奥底に残った䞉船に察する『怒り』ず、小林に察する『心配』は昇華するこずは無かった。死しお尚この䞖に留たり、そしおそれは怚念ず化した。。

出勀䞭であるにもかかわらず、䜐山の心の内を聞き入れる功䜑。もはや遅刻しおいる事などどうでもよくなっお、圌は䞀緒になっお目頭を熱くしおいた。
そしおなんの躊躇もなく、気が付けばい぀ものように口走っおいた。

「その怚み、晎らしたす」

いいなず思ったら応揎しよう