芋出し画像

すべからく『愛』を謳え 第十䞉話『茪郭』

すべからく『愛』を謳え  第十䞉話  『茪郭』


①暙的
     
茉里子の郚屋には、もう䜕人もの姉や効達がごった返しおいた。皆䞀様にしお䜎い唞り声をあげ、そこに停滞しおいた。
  「これだけ家族がいれば、十分だろう  それにパッパがいるじゃないか」
   è—€æœ¬ã¯è‡ªå®€ã«äœ‡ã‚€èŒ‰é‡Œå­ã‚’埌ろから抱きしめお、その耳元で囁いた。
   èŒ‰é‡Œå­ã¯åœŒã®è…•の䞭で噚甚に身を返し、现く華奢な腕を銖に回しお悪戯に埮笑む。そしお耳元に唇を這わせるず、真っ赀な舌でひず舐めした埌、囁いた。
『ママ  お  ば  さん、欲  しい』
「たったく、仕方のない嚘だ  」
  圌も茉里子の耳元でそう囁くず、今䞀床匷く圌女を抱きしめた。そしお姿芋の鏡に写る、自分を抱きしめおいる姿に笑みをこがす。そしおその時、圌の右目の瞳はたたもや、挆黒の闇に染たるのであった。



  藀本は、茉里子が家族をねだる床に、めがしい女性を芋぀けおは、家族に迎える為の準備に粟を出した。
   èŒ‰é‡Œå­ã®æ³šæ–‡ã¯åŽ³ã—ã‹ã£ãŸã€‚
  それは柔らかくもしなやかで、折れるこずの無い芯の匷い女性。
  芋た目で刀断出来ればいちばんいいが、人それぞれに抱えおいるものや、匕きずっおいるものがある。芋た目は匷そうでも、心のどこかで疲れおいたり、或いは諊めおいたり、そんな女性は問題倖。それを悟られないように気䞈に振る舞っおいる、そんな女性を茉里子は望んでいた。どこずなく幹恵を圷圿ずさせる、そんな女性を圌女は、家族に求めおいるのだろう、藀本は玠盎にそう感じおいた。
   ã—かしたあ、そんな女性はそうそうに街䞭に転がっおいない。やっずの思いで品定めをし段取りを付けるも、茉里子は瞬く間に家族ぞず招き入れおしたう。そのため、家族はどんどん増える䞀方。二人だけの愛の棲家も、芋知らぬ家族たちで足の螏み堎も無くなるのは、時間の問題だろう。
  それでも藀本は、茉里子ず居られるのであれば、それでよかった。

『おばさんが欲しい』

  藀本は頭を抱えたが、茉里子の垌望に沿うような、そんな女の目星はもう぀けおいた。





「お疲れ様でしたぁ」
   ã•おりはやっずのこずで、タむムカヌドを打刻する。
   ä»Šæ—¥ã¯å€•方からのレゞスタッフが欠員になった為、倜八時の亀代たで、レゞに入らざるを埗なかった。今たで柄江の件で、散々早退や欠勀をやらかしおいた分、圌女は率先しおシフトの応揎芁請に応えおいた。
   ãã®ãŠã‹ã’か、今たで態床が硬かったパヌトスタッフたちずも、少しず぀だが仕事以倖で談笑したり、或いは仕事の盞談に乗るなどしお、その関係性は柔らかなものぞず発展し぀぀あった。

「葛西さん、遅くたですみたせんねぇ」
「いえ、今たでご迷惑かけおばっかりだったので、このくらいは朝飯前です」
   äº‹å‹™æ‰€ã«å±…た店長の倉持の前で、ガッツポヌズを取るさおり。その笑顔に䞀瞬躊躇するず、なし厩し的に倉持は口を開いた。
「疲れたでしょう  どうです、これからご飯でも。頑匵っお䞋さったから奢りたすよ」
   ã•も自然な流れかのように、食事の誘いを申し出る倉持。さおりはにっこりず埮笑むず、
「お誘いありがずうございたす。ですが、ずっおも疲れたしたし、明日も朝からなので、今日は倱瀌したすね  店長もあたり遅くなられないようにしおくださいね」
ず、あっさりずその誘いを断った。
「そ、そうですね  明日もよろしくお願いしたす  」
「はい  よろしくお願いしたす」
   å€‰æŒã¯å°‘しバツが悪そうにしたが、それを介さずにさおりは事務所を埌にした。



   ä»Šæ—¥ã‚‚倩気予報は雚。
   ãã‚Œã‚’信じお傘を持参したさおりだったが、持っお来た時に限っお、晎れるか、䞁床やむか。今日は埌者で、ただ少しだけ雚の匂いが、倜の空気に混ざり蟌んでいた。
   é§…前の繁華街は、この時間がいちばんの皌ぎ時。至る所からラヌメンやら揚げ物、焌肉や海鮮の匂いが溢れ出し、さおりの錻腔ず空きっ腹を誘惑する。ずはいえ、タむムセヌルで残った匁圓が圌女の手元にはあった。勿論自分で買ったもの。廃棄するには忍びなく、結構な頻床で圌女は、かなりの数の匁圓を看取っおいる。たたに自分が揚げた唐揚げも入っおたりで、そこそこ愛着さえある。今日はそれに肉じゃがのセット。

  矎味しい誘いを亀わしながら、圌女は最寄り駅ぞず歩を進める。
    
   ã€Œâ€Šâ€ŠïŒã€
   é§…に到着した途端、さおりは䜕かしらの気配を感じ取った。
「なに  なんだろう  この感芚  」
  䞀人呟き、呚囲を芋枡す。
   å‘šã‚Šã¯é§…に向かう客、駅から出お来た客で溢れ返っおいる。䞉癟六十床芋枡しながら、行き亀う人のその肩ず肩、足ず足の隙間に、さおりは目を凝らした。
  芋た限りでは、特に倉わった様子はない。改めお、今䞀床埌ろを振り返る。
   ãã®åˆ¹é‚£ïŒ
  背埌には、たたもや顔が血だらけ、吊、顔が朰れお血たみれになった女性が立ち尜くしおいた。

「きゃぁぁぁ」
  倧きな叫び声をあげお、圌女はその堎に倒れ蟌んだ。尚もその女性は圌女にだけ芋えるようにしお、呆然ず立ち尜くしおいた。
『な、  䜕が  蚀いたいの』
  恐怖におののきながらも、さおりは勇気を振り絞っお、その女性に心の声で問いかける。

『げ  お  』
『なに』
『お  に  』
「倧䞈倫ですか」
   æ°—が぀けば埌ろから、人の良さそうな小倪りの䞭幎男性が、心配そうに圌女を芗き蟌んでいた。
「あっ  は、はい  す、すみたせん  」
  そう蚀いながらさおりが前方を芋返すず、血たみれの女性はもういなかった。
   ç«‹ã¡äžŠãŒã£ãŠã€èœãšã—た匁圓を拟う。
  䞭幎男性も、圌女が萜ずしたであろう䜕かを拟い䞊げお、圌女に手枡そうずした。
「す、すみたせん  」
  そう蚀っお男の手を取った瞬間、さおりの身䜓䞭に激しい電流にも䌌た衝撃が駆け抜けた。





②譊告
『邪魔しないで  あなたも同じ  孀独  さもなくば  無くなる  』

   è¡å€ªéƒŽã®å‰ã«çŸã‚ŒãŸå°‘女は、吐き溜めのような声で圌を嚁嚇する。
    その姿はたさに茉里子だった。しかし、あの日芋た茉里子ずは別物。明らかに波動が違う。あの時の茉里子は、わずかな力を振り絞っお珟れた、儚き波動。目の前の茉里子の姿をした少女は、蚈り知れない情念を秘めおいる。きっず茉里子では無い、別の怚霊のはず。聡倪郎はそう悟った。
    䞀歩も動けない状態で、圌はその怚霊を睚み぀けた。それには今たで感じた事のない、犍々しい怚念が枊巻いおいる。少しでも油断すれば身䜓はズタズタに切り刻たれるだろう。そしお、あらゆる心の隙間から䟵入され、䞀気呵成に取り憑いおしたうほどに、その情念は匷倧だった。
   è¡å€ªéƒŽã®äž­ã®ã€Žèª°ã‹ã€ã§ã‚‚、それを飲み蟌むのは至難の業、聡倪郎はそう感じ取った。
『䜕が目的だ』
  毅然ずしお、圌はその怚霊に詰め寄る。
『あ、い  氞遠の  あ  い  』
  その怚霊は、䜎い声でそう呟いた。
『愛だず』
  聡倪郎が心の声をあげた途端、怚霊の呚りでのたうち回っおいたあらゆる䜎俗霊達が、埒党を組んで聡倪郎の呚りを囲み始めた。聡倪郎が動けない事を知るず、䜎俗霊達はこぞっお、圌に向けお眵詈雑蚀を䞊べ始めた。
   å­äŸ›ã®é ƒã¯ãã®å£°ãŒæ€–くお仕方がなかったが、今ずなっおは日垞茶飯事。圌らの戯蚀など、耳を傟けるに倀しない。
   æœ‰è±¡ç„¡è±¡ã«ã„きり立぀茩を前に、聡倪郎は熱を垯びた始めた巊手を匷く握り締めた。その途端、たるで吞い寄せられるようにしお、雑倚な䜎俗霊達はたちたち圌の巊手の䞭に消えおいく。
   å‘šå›²ã‹ã‚‰å–り巻きが消えおいくのを、その怚霊はたるで他人事のように眺めおいる。その䜙裕な䜇たいに、聡倪郎は内心、焊りず恐れを芚えた。
   åŸã€…に突颚はおさたり、暗闇の䞭には聡倪郎ずその怚霊二人が残された。
『恐れなくお  だ  いじょうぶ  あなたずわ  たしはい  っしょ  』
   èŠ‹ãŸç›®ãšã¯è£è…¹ãªæ±šæ³¥ã®ã‚ˆã†ãªå£°ã§ã€ãã®æ€šéœŠã¯å£ã‚’é–‹ã„ãŸã€‚
「䞀緒にしないでくれ」
『お前で  はない  お前のな  かに居るあ  なた  お前は単なる憑代、噚で  しかな  い  』
   æ€šéœŠã¯ãã†èš€ã„攟぀ず、䞀瞬にしお聡倪郎の䞭を通り過ぎた。
   ãã—お  
   åœŒã®äž­ã«èµ°éŠ¬ç¯ã®åŠ‚ãã€ã‚ã‚‰ã‚†ã‚‹æ˜ åƒã‚’èœãšã—èŸŒã‚“ã ã€‚

「ぐっ  はぁああっ」
   ãã®æ€’涛の勢いに堪らず、聡倪郎はその堎に跪く。
  圌の脳裏に映し出されたものは、数十人、吊数癟人の、生呜を奪われる今際の際。
   ç”Ÿãã‚‹äº‹ã‚’切望する䞭で、死ぬかもしれないずいう䞍安ず恐怖。その最䞭に無惚にも断ち切られる生呜ずいう糞。その刹那にめくるめく、恐れず䞍安、痛みず絶望。
   ãã®çž¬é–“、瞬間を、䞀瞬のうちに䜕床も䜕床も远䜓隓をし、聡倪郎は口から泡を吹き流しながら、その堎に屑折れた。そしおビクビクず痙攣を繰り返し、のたうち回る。
「ああああ」
  嘔吐にも䌌た嗚咜を繰り返しながら、もがき苊しむ。そしおそれは長い幎月、数倚の人の生呜を奪っおきたのであろう、『䞀瞬』では終わらなかった。䜕床も䜕床も、繰り返し、繰り返し『死』ずいう絶望に圌を叩き぀けられる。それはもはや『氞遠』にさえ思える皋に。

『これ  以䞊  関われば倧切なも  のを倱  うよ  お兄ちゃん  』

   æ€šéœŠã¯èŒ‰é‡Œå­ã‚‰ã—い衚情ず声でにっこりず埮笑むず、聡倪郎の頭を掎んで持ち䞊げる。なされるがたたに宙に浮く聡倪郎。肩を寄せ、身を捩らせ、泡を吹く圌の姿に、怚霊は口角を歪める。
   ãã—おその刹那、聡倪郎の頭の䞭でバキバキず䜕かが朰れる音がし始めた。そしお遅れお来る激痛。
  怚霊は圌の頭を握り朰そうずしおいる。
  聡倪郎は目の前の珟実ず、頭の䞭の映像ずが混濁し、『死』ぞの恐怖に完党に取り蟌たれる。
   è¡å€ªéƒŽã®ãã®ã€Žå •ちた』衚情を確認するず、怚霊は即座に手を離した。地面に厩れ萜ちる聡倪郎。したたかに尻もちを぀き、埌頭郚をアスファルトで匷打する。
   æœªã ã«ç¶šãé ­ã®äž­ã®æ˜ åƒãšã€é ­éƒšãžã®æ¿€ã—い痛みに、もはや死んだかのように、圌はそのたた地面に䌏した。
『倧切なもの、どうするの』
   æ€šéœŠã¯åº§ã‚ŠèŸŒã‚“で、聡倪郎の耳に囁きかける。そしお笑みを浮かべるず、そのたたすぅヌっず倜の闇に銎染んで消えおいった。

    そしお聡倪郎はピクりずも動かなくなった。






③発芚
「ええなにこれ  」
   å¹¹æµã¯çµ¶å¥ã—た。
    圌女は茉里子の郚屋の䞭で、あるものを発芋した。
   ãã‚Œã¯åœŒå¥³ãŒãŸã å¹Œçššåœ’の時分に曞いおいたずいう、『ひみ぀にっき』。
   å°‘女アニメのキャラクタヌが劇䞭で曞いおいたのを、茉里子が真䌌をしお曞いおいるず蚀っおいた事を、幹恵は思い出した。
『ぜったいに芋ないで』
ず、茉里子から念を抌されおいた事も、急に脳裏を掠める。そういえば、幹恵も䜕床かそのノヌトを探した事もあった。しかし、䜕凊に隠しおいるのか分からぬたた、時が経っおしたっおいた。

   ãã‚Œã¯å‹‰åŒ·æœºãšå£ã®éš™é–“に敷き詰められおおり、その䞭の䞀冊が、管理者の居なくなった今、その隙間から顔を芗かせおいた。それに気付いた幹恵は、そこにあった党おを匕っ匵り出しお、党おに目を通した。
   ãã®æ—¥èš˜ã¯å¹Œçššåœ’時代から始たり、ほが毎日曞き蟌みがなされおいた。そしお小孊校五幎生蟺りから頻床が䜎くなり、䞭孊校になっおからは曎新されおいなかった暡様。
   ãã—お、それには圌女が認めたくない事実が曞き蟌たれおいた。
   ãã®æ—¥èš˜ã®äž­ã«ã¯ã€åºŠã€…『パッパ』ずいう名前の男が登堎しおいる。圌は週に䞀床皋床、圌女の前に珟れおはお菓子や玩具を分け䞎えおいたようだ。
  いったい誰なのか   åœŒå¥³ã®æ–‡é¢ã ã‘では、それは刀別しづらかった。ほんの䞀瞬だけ、圌女の頭の䞭を嫌な予感が駆け巡る。
「違う  違う  」
  確蚌も無いたた、圌女は銖を暪に振り続ける。そしおそれを確かめるように、ペヌゞを足早にめくり続けた。
   æ—¥èš˜ã®äž­ã§ã¯ã€èŒ‰é‡Œå­ã‚‚その『パッパ』をたるで家族のような口ぶりで曞き衚しおいる。そしお尚䞔぀圌を自分の郚屋にも入れお、たた、圌の自宅ぞも足を運んでいる。
   å¹¹æµã¯ãã®äº‹å®Ÿã‚’党くもっお知らなかった。
  日蚘の文䞭にもあるが、二人の関係性は二人だけの秘密。しかしながら嚘の完璧なたでの秘密管理胜力ず、それを芋抜けなかった自分に、幹恵は溜息をこがす。
   ç¢ºã‹ã«ä»•事が忙しく、茉里子ずの時間を思うように取れおいなかった。そしお、少しでも豊かな生掻を送るために、数倚の男性達ずの関係も、圌女は維持し続けお来た。その為、家を留守にする事も倚かった。
    そのせいだろうか
     èŒ‰é‡Œå­ã¯ãã®ã€Žãƒ‘ッパ』に父芪を芋おいたのだろうか   åŸ‹ãŸã‚‰ãªã„寂しさを玛らわす為に、目の前にある、目に芋える優しさに瞋っおいたのかもしれない。      されど、それに気づけなかった自分は母芪倱栌だ。
    今たで、嚘を倧切に䜕䞍自由なく育おお来たずいう自信が、嚘が居なくなった今になっお、圌女の䞭で音もなく厩れ去った。

「  この人は」
   èª­ã¿é€²ã‚ãŠã„くうちに、真ん䞭のペヌゞに数枚のプリクラが挟たれおいた。そこには同玚生らしい友達ず写った茉里子が居お、屈蚗のない笑顔がその瞬間が楜しかった事を想起させる。その面圱からするず、小孊校五幎生くらい、今からおよそ六幎ほど前のもの。
   ãã—お、その䞭の1枚に明らかに䞍自然なものがあった。
    写真の真ん䞭には『パッパ』ず曞かれおおり、ピヌスマヌクで笑顔の嚘の隣りに、だらしなく倪った䞭幎男性が、所圚なさげに立っおいた。
   ãã—お幹恵は、その男に芋芚えがあった。
   é¡”を芋なくなっお十五幎以䞊も経っお、芋た目も少し倉わっおいるし、デカ目加工で元の目は原型を留めおいないが、忘れもしないあの男  

   ãã†ã€ã‚の日幹恵を蟱めた、あの男だった  
   

   


いいなず思ったら応揎しよう