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通院できない人に何が起きるのか【理学療法とは何か #029】

この連載は、6本を1シーズンとして進めています。
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通院できない人には、何が起きるのでしょうか。

通院という言葉を聞くと、多くの人は「病院へ行って診察を受けること」を思い浮かべます。医師に診てもらうことです。薬をもらうことです。検査を受けることです。外来リハビリテーションを受けることもあります。

もちろん、それは通院の中心的な意味です。しかし、高齢者や在宅生活者にとって、通院はそれだけではありません。通院は、医療へのアクセスであると同時に、外出であり、生活リズムであり、社会との接点でもあります。

前回は、地域で暮らし続けるための理学療法について考えました。そこで私は、「玄関からの10歩」と「目的地に着いてからの10歩」の重要性を述べました。現代では、車、タクシー、バス、電車、送迎サービスなどを使うことで、その間の移動を補うことができます。だからこそ、玄関から車まで移動できること、目的地に着いてから入口まで移動できることが、地域生活の大きな境界線になります。

通院も同じです。

病院を退院して自宅へ戻るときには、身体的特性と環境的特性のフィッティングが重要になります。どの程度歩けるのかです。家の段差を越えられるのかです。トイレまで行けるのかです。家族が支援できるのかです。住宅環境が合っているのかです。

通院でも、同じようなフィッティングが必要です。自分で玄関を出られるのかです。車に乗れるのかです。公共交通を使えるのかです。病院内を移動できるのかです。待ち時間に耐えられるのかです。薬局まで行けるのかです。自分で動けない場合、通院はかなり難しくなります。

往診や訪問診療という選択肢もあります。しかし、通院と比べると、制度の利用や調整が必要になることがあります。本人や家族がどこに相談するかを知っている必要があります。医師、ケアマネジャー、訪問看護、訪問薬剤などとの調整が必要になる場合もあります。すぐに病院へ行って診てもらえる通院とは、開始までのハードルが少し違います。

ここで、日本の医療制度の特徴を考える必要があります。日本では、比較的安価に、比較的すぐに医療機関を受診できる環境があります。2024年10月時点で、日本には病院が8,060施設、一般診療所が105,207施設、歯科診療所が66,378施設あります[1]。歯科診療所の数は、国内のコンビニエンスストア店舗数を上回る規模です[1,2]。また、OECDの資料では、日本と韓国の医師受診回数は1人あたり年間17回を超えるとされています[3]。

この数字が示しているのは、日本では通院が日常生活の中にかなり入り込んでいるということです。もちろん、地域差はあります。都市部と非都市部では医療機関までの距離も違います。交通手段も違います。家族の送迎があるかどうかも違います。それでも、日本では、病院や診療所へ行くことが、比較的身近な生活行為になっています。

通院には、いくつかの理由があります。

一つは、命をつなぐための通院です。透析、がん治療、心不全、呼吸器疾患、糖尿病、重い神経疾患などでは、通院が生命維持や病状管理に直結することがあります。通院できなくなることは、命の危険に近づくことがあります。

もう一つは、症状を緩和するための通院です。痛みを抑えることです。息切れを調整することです。関節の動きを保つことです。外来リハビリテーションを受けることです。すぐに命に関わるわけではなくても、通院しないことで少しずつ症状が悪くなることがあります。

さらに、高齢者では、持病の状況判断と投薬の判断のために通院している人が多いように思います。血圧、糖尿病、心臓病、骨粗鬆症、認知症、慢性痛などを定期的に確認し、薬を調整します。この通院は、派手な治療ではないかもしれません。しかし、重症化を防ぐという意味で非常に重要です。

通院できなくなると、まず影響を受けやすいのは服薬です。

たとえば、血圧の薬を飲み始めて、血圧が下がったとします。本人は「よくなった」と感じます。そして、薬を飲まなくてもよいのではないかと考えます。通院もしなくなります。その結果、血圧が再び高くなり、脳卒中につながることがあります。これは珍しい話ではありません。

ここには、医療的予防という考え方があります。症状が強く出てから対応するのではなく、重症化する前に管理することです。高血圧を放置しないことです。糖尿病を放置しないことです。心不全の悪化を早めに見つけることです。骨粗鬆症を管理し、骨折を防ぐことです。通院は、病気を治すためだけではなく、悪くしないための仕組みでもあります。

通院できなくなることは、この医療的予防の回路が細くなることです。

もちろん、通院には副次的な効果もあります。病院へ行くために服を着替えます。家の外へ出ます。歩きます。車に乗ります。受付で人と話します。医師や看護師と話します。診察後に買い物へ行くこともあります。外の空気を吸うこともあります。

これらは、外出としての通院です。高齢者にとって、通院が数少ない外出になっていることがあります。病院へ行く日が、生活リズムになっていることもあります。医療者と話すことが、社会的接点になっていることもあります。

ただし、この副次的効果を通院の主目的にしてはいけません。社会参加のために医療機関を使うという考え方が前に出すぎると、医療資源の適正利用や医療費の問題と衝突します。通院の中心は、あくまで医療的必要性です。しかし、命をつなぐために外に出ることが、結果として運動になり、社会との接点になることも事実です。

理学療法士は、通院できるかどうかにどこまで関わるべきでしょうか。

正直に言えば、すべての通院能力を理学療法士が評価する必要はないと考えます。通院の可否は、本人、家族、医師、看護師、ケアマネジャー、地域資源などが関わる問題です。理学療法士だけが判断するものではありません。

しかし、相談された場合には、真摯に向き合うべき事案です。玄関から車まで移動できるのかです。車への乗り降りができるのかです。公共交通を使えるのかです。病院内を歩けるのかです。待合室で座っていられるのかです。トイレに行けるのかです。診察後に疲れ切ってしまわないかです。転倒リスクはどの程度かです。

これらは、身体と生活をつなぐ評価です。理学療法士が得意とすべき部分です。

通院できない人に対しては、いくつかの代替手段があります。訪問診療があります。訪問看護があります。訪問リハビリテーションがあります。薬の配達があります。家族送迎があります。福祉移送や介護タクシーがあります。オンライン診療もあります。

オンライン診療は、今後さらに重要になる可能性があります。特に、離島、中山間地域、医師不足地域では、医療へのアクセスを確保する手段として期待されます。ただし、オンライン診療は対面診療と同じではありません。触診や身体所見の確認には限界があります。厚生労働省も、オンライン診療は対面診療と適切に組み合わせて実施することが基本であると説明しています[4]。

今後、オンライン診療からオンラインリハビリテーションへと広がる流れは、有効な手段になるかもしれません。現時点では制度上の位置づけや報酬、評価方法、安全管理などに課題があります。しかし、医療的予防の効果を最大化するには、通院できない人に対する遠隔支援の制度化は重要な論点になると思います。

通院できないことは、本人の身体能力だけの問題ではありません。

送迎できる家族がいるかどうかです。介護タクシーを使えるかどうかです。公共交通があるかどうかです。医療機関までの距離はどれくらいかです。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談できるかどうかです。本人が制度を知っているかどうかです。地域差と情報格差が大きく影響します。

公平性の観点から言えば、これは行政や制度の課題です。都市部と非都市部の医療アクセスの差は、本来できるだけ埋められるべきです。しかし、個人として情報を得て対応することも重要です。どの制度が使えるのかを知ることです。どこに相談すればよいのかを知ることです。通院できなくなる前に、次の手段を考えておくことです。

通院できないことは、単に病院へ行けないことではありません。
医療的予防の回路が細くなることです。
そして、外へ出る生活の回路が細くなることでもあります。

次回は、「病院の外に広がる理学療法」を考えます。通院できない人の問題を考えると、理学療法は病院や外来の中だけで完結しないことが見えてきます。訪問、地域支援、介護予防、オンライン支援など、理学療法は病院の外へ広がっていきます。都市部と非都市部の医療アクセスの差をどう埋めるのかも、これからの理学療法に関わる重要な問いになります。


https://advanced-therapist.vercel.app/

参考情報
[1]厚生労働省.令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況.
[2]経済産業省.商業動態統計調査/コンビニエンスストア店舗数関連統計.
[3]OECD.Health at a Glance: Asia/Pacific 2024, Consultations with doctors.
[4]厚生労働省.オンライン診療について.

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