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評価とは、測ることではなく見立てること【理学療法とは何か #012】

理学療法士は、患者さんの身体を測ります。関節の角度を測ります。筋力を調べます。歩く速さを測ります。痛みの強さを聞きます。息切れの程度を確認します。これらはすべて大切な検査です。

しかし、ここで一つ誤解してはいけないことがあります。理学療法における評価とは、ただ検査をして数値を出すことではないということです。

もちろん、数値は重要です。曖昧な印象だけで判断するのは危険です。関節がどれくらい曲がるのか、筋力がどの程度あるのか、歩行速度がどのくらいなのかを確認することは、理学療法の土台になります。しかし、数値を出しただけでは、まだ評価にはなりません。その数値が何を意味し、なぜそうなっており、このあと何を変えればよいのかを考えるところまで進んで、初めて評価になります。

評価という言葉は、医療の中で広く使われます。医師にとっての評価は、診断へ向かう重要な過程です。病気や病態を明らかにし、治療方針を決めるために行われます。一方で、理学療法士にとっての評価は、治療や介入の方針を決めるための過程です。さらに、一度決めて終わりではなく、治療の途中で再評価しながら方針を修正していきます。

つまり、評価とは意思決定のための過程です。

ここで重要になるのが、リーズニングとインファレンスの両方の視点です。リーズニングとは、そこに至るまでの考える過程です。どの情報を集め、何を比較し、どのように解釈し、どんな可能性を残すかという流れです。インファレンスとは、その過程から導かれる推論結果です。つまり、「この人の主な問題はここにありそうです」、「この治療方針が妥当そうです」という判断です。

理学療法の評価では、この両方が必要です。考える過程だけがあっても、治療方針が決まらなければ現場では使えません。逆に、結論だけがあっても、その理由が説明できなければ専門職の判断とは言えません。評価とは、考える過程と導かれた判断をつなぐ営みです。

私の整理では、理学療法の評価は、検査、観察、解析、統合、解釈、予測、決定という流れで進みます。まず必要な検査を行います。次に、動きや姿勢を観察します。そこから、どの部分に異常があるのかを解析します。さらに、複数の情報を統合します。そのうえで、なぜその問題が起きているのかを解釈します。そして、このまま進めばどうなるのか、何を変えればどう変わるのかを予測します。最後に、治療方針を決定します。

この流れは、私が別に整理している十字モデルともつながっています。十字モデルでは、具体と抽象、定量と定性、現象と機序を行き来しながら、理学療法士の判断を整理します。本稿では詳しく入りませんが、大切なのは、評価が一方向の作業ではないという点です。数値を集めて終わるのではなく、数値と観察を往復し、具体的なデータと抽象的な意味をつなぎ、最後に治療の方針へ進む必要があります。

たとえば、関節可動域を考えてみます。膝が何度曲がるか、肩が何度上がるかという角度は、定量的な情報です。これはとても重要です。しかし、それだけでは足りません。動かしたときの終わり方、つまりエンドフィールも重要です。硬いのか、痛みで止まるのか、筋の防御で止まるのか、関節そのものの制限が強そうなのかです。これは質的な情報です。

同じ90度の可動域でも、その意味は同じではありません。痛みで止まっている90度と、関節包の硬さで止まっている90度では、治療方針も予後の見立ても変わります。つまり、角度という定量情報と、エンドフィールという定性情報を合わせて読まなければなりません。ここに、評価が単なる測定ではない理由があります。

理学療法士は、数値を嫌っているわけではありません。むしろ、数値は必要です。ただし、数値を数値のまま置いておくのではなく、その意味を読む必要があります。測定値は材料です。評価は、その材料から治療の方向を見立てる仕事です。

また、評価には予測が含まれます。今どうなっているかを見るだけでは不十分です。このまま何もしなければどうなるのか。どの治療をすれば変わる可能性があるのか。どのくらいの時間がかかりそうなのか。何を優先すべきなのか。こうした予測が入ることで、評価は治療につながります。

この予測こそ、理学療法士の専門性を支える重要な部分です。治る方向へ向かうためには、効率と効果を考えなければなりません。何でも試してみるのではなく、もっとも可能性が高く、安全で、効果が見込める方法を選ぶ必要があります。そのために評価があります。

医師の診断と、理学療法士の評価も、ここで整理しておく必要があります。医師は主に病態診断を行います。病気の状況を把握し、医学的な予後を予測し、薬物療法や手術などを含む治療方針を決めます。一方で、理学療法士は生活機能診断に近い評価を行います。基本動作やADLがどのように障害されているのかを見て、その予後を予測し、理学療法としての治療方針を決めます。

これは対立するものではありません。医師の診断があり、その上で理学療法士の評価があります。病態を理解したうえで、その人がどのように動けなくなり、どのような動作や生活機能に問題が出ているのかを見立てる必要があります。病名をなぞるだけでは、理学療法の評価にはなりません。病名から、その人の動きと生活機能へ翻訳することが必要です。

前回、「同じ運動でも人によって違う」と書きました。その違いに対応するためにも評価が必要です。個別的な問題点を細かく明らかにし、それを一般的な知識と比較しながら予後を予測します。つまり、理学療法士は、個別と標準のあいだを見定めています。この人は一般的にはどう考えられるのか。しかし、この人の場合はどこが違うのか。そのあいだで、明確な意思決定を行うことが理学療法士の仕事です。

評価とは、測ることではありません。測ることを含みながら、そこから見立てることです。検査とは、価値ある変化を作り出すための理由を探す過程です。そして、その全体が評価です。

個別と標準のあいだを見定めて、明確な意思決定を行うことです。
それが、理学療法における評価です。

ここまでのSeason 2では、理学療法士が何を見て、どう考えているのかをたどってきました。見る、観る、診る。歩きにくさの理由を読む。関節、筋、呼吸、循環を読む。痛みを読む。個人差を読む。そして最後に、それらを評価としてまとめるところまで来ました。

次のSeason 3では、その見立てをもとに、いよいよ作戦を立てます。理学療法は、無謀に突っ込む仕事ではありません。敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず(孫子)です。身体の問題を知り、その人の条件を知り、そこからどう治療を組み立てるかを考えます。知ることと行動することをつなぐ戦略として、理学療法の目標と治療方針を見ていきます。

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