
絵が語りだす、AI創作の旅|紫音の旅#29
🌸 紫音の物語㉖:海の向こう
世界大会へ向けた練習が進むにつれて、体育館に来るカメラの数が少し増えていた。
最近は日本の撮影班だけじゃない。
海外メディアのスタッフも混ざり始めている。
英語が飛び交うたびに、部員たちは少しそわそわしていた。
「なんか、本当に世界って感じですね」
紫音がそう言うと、琴音は小さく笑う。
「今さら?」
その日も、練習後に軽いインタビューが入っていた。
撮影スタッフの一人が、休憩中にスマホを操作しながら話している。
「最近、海外ダンサーの間で話題の曲があってさ」
スピーカーから音が流れる。
波みたいなリズム。
風みたいに柔らかい音。
紫音の動きが、一瞬止まった。
Dream Horizon。
スタッフは楽しそうに続ける。
「これ、いろんな国のダンサーが使ってるんだよね。
なんか落ち着くって」
別の海外スタッフもうなずく。
「The rhythm feels natural.
Like breathing.」
部員たちも興味を持ち始める。
「へえ~」
「誰の曲なんですか?」
スタッフは画面を見せる。
そこに表示されていた名前。
Sion’s First Sound
その瞬間、部員の一人が声を上げた。
「あ、紫音と同じ名前!」
周りが少し笑う。
「ほんとだ!」
「紫音、世界デビューしてるじゃん」
紫音は慌てて笑った。
「いやいや、違うって」
でも心臓は少し速くなっていた。
なんで。
なんでこの曲がここで流れてるの。
紫音の中では、Dream Horizon はただの“好き”だった。
海の音。
風の感じ。
ただ、それを形にしただけ。
世界とか、話題とか、そんな感覚はまったくない。
むしろ少し恥ずかしい。
自分の中の静かな景色を見られているみたいで、落ち着かなかった。
「でも、ほんと同じ名前だね」
そう言われて、紫音は苦笑する。
「ほんとだね~」
そのまま軽く流した。
でも、その横で。
琴音だけは黙って画面を見ていた。
波みたいなリズム。
風の流れ。
そして、“Sion”。
琴音の中で、小さな違和感が静かにつながり始める。
(……もしかして)
でも、まだ何も言わない。
紫音も、気づかないふりをしていた。
体育館の外では、夕方の風が吹いている。
海の向こうで広がっている音。
その始まりが、
今ここにいることを。
まだ、ほとんど誰も知らない。
Dream Horizon by Sion’s First Sound ~物語~(紫音の旅#1)

✨ 次回予告
次回 紫音の物語㉗:名前のないセッション
練習後。
何気なく始まったリズム遊び。
マイバチの音。
手拍子。
足音。
そこから生まれた“即興”は、
少しずつ周りを巻き込み始める。
まだ誰も知らない。
その時間が、
未来につながる最初のセッションになることを。