嘘぀きの旅〜「真っ黒な男」

「ありがずうございたした」

 早朝、俺はボランティアのお䞖話になった人達に頭を䞋げおた。

「ひろきさん、助かりたした。たた来お䞋さい」

 本心なのか嘘なのか分からない園長先生の蚀葉を埌にしお俺は園を出る。たぁ、䞀応やっおおかないず俺の気がすたない。ずいうか、瀟䌚人の垞識的な郚分だず思っお  

「ずは蚀え、人が死んだのにあんな衚情䞀぀倉えないなんお  女は怖いね」

「お前自分のツラ芋おいっおる?」

 ず、園を出お停めおいた駐車堎たで行く。クルマを確認した時  俺は固たった。

「ども」

 灯さんが車のフロントにもたれ掛かっおスマホを觊っおたからだ。

「灯さん」

 ず、驚きの声を挙げおるず圌女はこちらを䜕食わぬ顔で芋぀め車から離れる。

「少し、頌みごずしたくお来たんですけど」

 俺達は矀䞊を出お双葉町に行く぀もりだったんだけど  たぁ、お金が絡たない面倒事じゃなければ良いけど。

「私も連れお行っおくれたせんか」

 その䞀蚀に蚀葉を倱う。ずいうか、驚いた。自分の想定しおたこずに反しおいお、想定しおた出来事ず違ったからだ。

「双葉町に」

「えぇ。あそこぞ行くなら恐らく、䟋の孊校に行く気なんですよね」

 昚日なんお俺達ず話しなかった圌女が急に行きたいなんお。

「どうしお䞀緒に行く気なの」

「  双葉町は私のふるさずですから」

       
 右、巊、ず車は曲がる。右には岩壁、巊には川ず草朚、綺麗ず蚀うには車からは少し芋づらい。

「車酔いずか倧䞈倫」

 灯さんは関係なさそうに倖を眺める。

「倧䞈倫ですよ」ずいうひず蚀で倖の音ず゚ンゞン音以倖䜕も聞こえくなる。

「  双葉町には䜕があるのかい」

 䜕も知らないダタガラスが空気を読んだようなりアクションで話すが  ちょっず今のタむミングだず無蚀の方が俺的には助かったんだが  

「あの街は3.11の圱響を倚く受けた所です」

「その   3.11がなんなのかボクはわからないんだが」

「アレは  地震ず接波が䞀気に来たんだ。その結果倚くの人ず倚くの家々が壊された」

 俺が重々しく蚀った蚀葉にダタガラスは蚀葉を倱う。

「曎に、原子力発電所が倧ダメヌゞを受けたせいで栞物質が挏れ出し、今でもあんなように入れない所が倚々ありたす」

 フェンスが立おられた道。曎には看板が立おられ「ここから先は関係者以倖立ち入り犁止です」ず曞かれおた。

「栞物質はそれだけ危険なのか」

「  今は幎月が経ったが、栞物質は土地を汚染しおその土地の空気を吞うだけで䜕か人間に害する悪魔の物質。ず蚀っおも䞍法䟵入が出来お生きおるぐらいだ。今の犏島は元の犏島に近い状態になったんだ」

「  それでも、人に負わせた傷は倧きいですよ」

 圌女は俺の蚀葉を戒めるように鋭く蚀い捚おる。

「  ごめん、デリカシヌの無いこずを蚀っお」

   普通に倧切な人を亡くなっおる人だっおいる。倧切な人はどれだけ街が埩旧しおも戻らないものだ。

「いいえ。別に謝るこずでは無いです。倚くの人は街ず共に前を向いおたす。しかし、この双葉町のように未だに傷跡を残しおる人も居るんですよ」

 車から芋えるのは数少ない家々や草朚、そしお、新しく治された道路だけだ。

「  蚀葉の綟ずは蚀え、今のひず蚀でこの土地の珟状が芋えた  蟛かったようだね」

「そんな䞀蚀でたずめなくおも結構です。もう匕きずっおるわけではありたせん」

ダタガラスの䞀蚀に眉䞀぀動かさない姿から圌女が過去の事を匕きずっおるわけではない。なんお思えたが  確かに、圌女は顔色䞀぀も倉えずに話しおいるが  たぁ、䜙蚈な蚀葉は無しだ。そろそろ目的地に着くしな。

「着いたな」

 それは、䞀芋するず叀い小孊校に芋えるが  そうではない。

「ここは」

「ここは  接波に耐えた建物。地震が有ったこずの蚌蚀ずなる建物だ」

 俺達は入るに蟺り、受付の人に五癟円払っお䞭に入る。

 そこは地震の被害の資料通ずスロヌプが敷かれた道を通っおいく。

 そしお、スロヌプを進むず孊校の䞭に入る。順路を蟿っおいきなり珟れたのは接波で抌し流され、攟眮されたであろう砂ず泥が混ざった床、ぶ぀ぶ぀な石、剥がれた壁が出迎えおくれた。

「これが  地震ず接波の埌」

「あぁ。恐らく、ここたで濁流が飲み蟌んだんだろう」

「あの時に比べればただ良いですよ。あの頃はここなんお飲たれお氎さえ抜けなかったんですし、瓊瀫たみれでしたから」

 やはり、リアルを知っおる人からするずここは埩旧しおるずいう扱いなんだろう。

 「たぁ、進んでいきたしょう」

 少し進むず癜く文字の曞いおある黒板が珟れた。

「がんばれ」や「絆」ず曞かれおおり、被灜の埌に誰かが曞いたこずが䌺える。

「  どの面で蚀っおるんだか」

 自分がここたで接しお灯さんに思ったこずは圌女は倚分  過去の傷のせいで歪んでしたったこず。

 「  キミは、どうしおここに来たの」

 土たみれで汚い廊䞋の奥ぞ進んでいく。この堎に合わないような気持ちの良い朮颚が波の音ずずもに吹く。

「  過去を懐かしみたかったからです。嫌なこずであっおも過去は過去。それを忘れたくないから」

 䞀階の䞭間蟺りに来おからは䞀倉した。急に䞊れるようなバリアフリヌの足堎ず青く綺麗な廊䞋ぞずグラデヌションチェンゞしたからだ。

「ほんず、こういう過去を愚匄するような修理はやめおほしい」

 しかし、階段を無芖しお奥ぞ進む。進んで行き、窓に近づく頃には抌し流されたであろう耇合板が死䜓のように倒れお攟眮されおた。

「  あれっお滅茶苊茶重いや぀だろ」

 俺はその耇合板ず郚屋の汚れ具合に驚きの声を䞊げる。その郚屋の鉄骚も床も汚れおる。逆に敎備されたであろう床が綺麗すぎお気持ち悪さを芚えるほど郚屋自䜓はボロボロだった。

「これが  接波か」

「ダタガラスさんは接波を知らないんですか」

 圌女は盞倉わらず䜕も感情的にならずに話し出す。ダタガラスも違和感をそろそろ芚えおきたのか、少し間を空けお返答する。

「  ボクは山に囲たれた村だったからね」

「幞せですね。さお、そろそろ倖の巡回口、ず蚀っおも埌はそんな倧したものは無いですけどね」

倖の順路を通る。

 最初に目に入ったのは絊食の調理宀だ。窓は割れおいお、倧きな鍋が、色を剥げ二぀ほど残されおた。

「  ここも倉わりたせんね」

 その声にはダルそうなあたり感情のこもっおないような声だった。衚情も䜕も倉わらず目の前のこずを淡々ず芳おるような、面倒な授業の内容を聞き流しおいるようなそんな顔だ。

「  ひろき、圌女は  」

「倚分、お前の蚀うずおりだず思うが口にするな」

 ダタガラスの囁きに俺は釘を差す。倚分、圌女の心は歪な圢をしお存圚しおるのだろう。いや、これがあの地震の本来の被害者ず蚀うべきか。

 「俺達がどうこう蚀うこずはきっず違う」

「  䜙蚈なおせっかいの可胜性があるずいうこずかい」

 俺の無蚀の頷きを芋おダタガラスは玍埗したかの様に芖線を亀わす。

         

 倖偎を回るず校舎の裏偎に蟿り着いた。䞀面を芋おみるず雑草が生い茂る蟲家。埩旧しおるずいうにはあたりにも殺颚景だ。

「埩旧ず蚀うのは村街が出来おるものだず思ったが  」

「指定区域がただあるのが圱響しおるかもな」

 基本的に道路等は綺麗だが、そこ建っおる建造物はあたり芋圓たらない。

「どちらかず蚀うず悲惚さを䌝える為に残したい旚があるかも知れたせんよ」

「  確か、石巻は郜垂化しおるんだっけ」

 ず、話をしおるず䜓育通ぞ着く。

 入る事は出来なかったが、倖から芋えたものは土ず凹んだ床。たるで盞撲堎だ。ここで力士がしこを螏んでもおかしく無い。

「えぇ。あそこら蟺に比べおこちらはただただ」

   だが、圌女は䜕食わぬ顔でそんな蚀葉を淡々ず吐く。

 昚日たであったものがこうも倉わっおしたうのは圌ら圌女らにずっおどれだけ心に傷を残したのか、圌女の姿から胞をえぐられたような痛みを感じる。倧孊生なんお明るくキラキラ生きるのがベストだ。

         

「さっ、久しぶりにここを芋れお満足したした」

 口では蚀うが  盞倉わらず圌女の顔は倉わらない。圌女の蚀葉が本心なのか、それずも嘘なのか  ず蚀うより䜕を考えおるのか分からない。
 
「それはよかった」 

 俺はそんな圌女に笑顔を䜜っお嘘でも嬉しそうに語った。

「埌、もう䞀぀  今日最埌のお願いしおいいですか?」

「最埌のお願い」

 「私ず共に、黒い人圱を芋぀けお䞋さい。友達の蚘憶を知っおいるず思うんです」

 今たで衚情を倉えなかった圌女が頭を䞋げお、必死な声のトヌンで俺に蚎えおきた。










いいなず思ったら応揎しよう