
防災ビジネス論考#2 防災ビジネスの今と展望
こんにちは、ひろだです!
防災をビジネスとして捉えるとき、企業の皆さんはどのような検討の順番やプロセスを使うでしょうか。
今回は、市役所と民間企業の両方を経験している私が考える、防災ビジネスの構造についてご紹介したいと思います。
防災ビジネス市場の切り口
防災ビジネスは古くからその市場は存在してきたので、聞いたことのある方が多いことに比べて、実際にはかなり曖昧な言葉です。例えば、備蓄品の個人への販売も防災ビジネスですし、自治体への避難所システムの導入も同じ防災ビジネスと呼ぶことができます。ただ、この2つは売り先も、受け取る側の価値も全く異なります。
防災に限らず、社会課題といわれる領域のビジネスを考えるときに、非常に重要なのは、その市場構造をしっかり捉えることだと思います。
そこで私は、防災ビジネスを整理するためのフレームワークを考案して、これに基づいて検討を開始するようにしています。
第1ステップとして、「時間」と「対象者」の2つの軸に分解して考えることから始めています。
まず、時間軸としては「平常時(災害発生前)」と「災害発生後」。さらに発生後は、「急性期」と「中長期(避難期)」に分けられます。もう一つの軸は、「被災者」と「支援者」です。この組み合わせで見ると、防災は複数の異なる市場に分かれます。

このフレームワークを分析ツールとして使うと見えてくるのは、プレイヤーが集中している領域と、ほとんど手つかずの領域が明確に分かれるということです。特に中長期の避難生活を支える領域は、過去の大規模災害でニーズがあることは明白にもかかわらず、ビジネスとして成立していない空白地帯に近い状況です。
なぜ空白地帯が存在するのか
では、なぜその空白地帯に企業が入ってこなかったのか。
理由はシンプルで、平常時に収益化しにくいからです。
それを視覚化するのが、フレームワークの第2ステップで、売り物が「モノかコトか」、売り方が「売り切りか継続か」の四象限です。

災害はいつ起きるか分からない。しかも、大規模災害は頻繁に起きるわけではありません。
結果として、「発災後に必要なサービス」を平常時に継続的に提供するモデルが組み立てにくい構造になっています。
例えば、避難生活が長期化すると、段々と衣類や生活用品の更新が必要になります。しかし、それを事前に契約しておく仕組みは存在しません。
ニーズは明確にあるのに、ビジネスとして設計されていない状態です。
ここで重要になるのが、「平常時に何を売るか」ではなく「平常時と災害時の切れ目なく、どう継続させるか」です。
単発の物販モデルでは成立しない場合、サブスクリプションや運用サービスとして再設計する必要があります。
単発の物販モデルを「モノ×売り切り」とした場合、私が注目しているのは、「コト×継続」の領域です。
例えば、自治体に避難所の管理や運営を任せたいというニーズがあったとします。しかし、このサービスが避難所を実際に開設する災害時に限定したものでは、自治体側には平常時の支払いに抵抗が生まれてしまいます。
そこで、平常時の避難所資材の管理と災害時の運用を一体で提供するようなモデルであれば、平常時と災害時の切れ目なく関係性を持ち続けることが可能になります。
自治体をどう関係性を築くか
防災ビジネスを考える上で避けて通れないのが、自治体との関係です。
特に、例に挙げた避難所運営のような領域では法律もあり、自治体を完全に切り離してビジネスを成立させることは難しいでしょう。
ここで留意したいのが、民間と行政の前提の違いです。
民間は利益を追求します。一方で自治体は、公共性や公平性を前提に動きます。この違いが意識されない状態で民間企業が「売り込み」に行くと、自治体にとってはどうしても心理的な距離が生まれてしまいます。
市役所にいた経験から感じるのは、民間側が「顧客」として自治体を見ているうちは、関係性がうまくいかないということです。
必要なのは、大きく概念的な”共通目的”を持つパートナーとして関係づくりをおこなうことです。
例えば、日本では「災害関連死を減らす」という目標は、本来行政側の責任領域です。そこに民間が関わるのであれば、その目的にどう貢献できるのか、という文脈で話す必要があります。
もう一つ重要なのは、個別製品ではなく統合的な提案です。
自治体から見ると、1つの製品・サービスだけでは問題は解決しません(複雑にある課題の一つを解決するに過ぎません)。そのような状況は、むしろ複数の業者をつなぐ負担が増えるだけです。
したがって、これからの防災ビジネスでは、前提として「複数の課題を統合して解決する」という発想力が問われると感じています。

防災ビジネスの展望
では、防災ビジネスの将来性はどうでしょうか。
正直に言えば、まだ楽観的に語れる段階ではないと考えています。
市場として成立しにくい構造があるのは確かです。
ただ、その前提が少しずつ変わり始めているのも事実です。
背景には2つの流れがあると考えています。
一つは、行政だけでは社会課題を支えきれなくなっていること。
もう一つは、民間企業が既存市場の外に成長機会を求め始めていること、です。
この2つが重なる領域に、新しいビジネスが生まれています。防災もその一つだと考えています。
重要なのは、この領域がすでに確立された市場ではないという点です。
まだ形が決まっていないからこそ、どの切り口で入るのか、誰と組むのか、何を価値とするのかを、自分たちで走りながら定義する必要があります。
先ほど「複数の課題を統合して解決する」アイデアが必要だと書きましたが、既存の商流やエコシステムを破壊する側面もあり、やはり一筋縄ではいかないでしょう。
防災は長く「変わらない領域」でしたが、いまは少しずつ変化の兆しが見え始めています。その変化が市場として成立するのか、それとも一過性で終わるのか。
まだ答えは出ていませんが、少なくとも「議論と検証が始まった段階」には来ていると感じています。
最後に
ここまで偉そうに書いてきましたが、では自分に何ができるのかというと、まだ模索中です。
一つ感じているのは、自分のキャリアが防災という領域では比較的ユニークだということです。これまでの経験でいえば、自治体で7年、大手建設会社で3年、そして独立後はスタートアップに関わりながら防災領域に関わり続けています。
もしかすると、コンサルティングだけなら、このフレームワークを使ってある程度の仕事はできるかもしれません。しかし、それだけでは「提唱しただけ」で終わってしまいます。
市場が必要とするソリューションを実際に社会実装していく経験が、まだ自分には足りていません。だからこそ、現場に関わり続けて、このフレームワークを自分自身で検証しつづけることに意味があると思っています。
2026/6/18 ひろだ
追伸
今回の記事では、私の考える防災ビジネス検討用フレームワークをご紹介しました。このフレームワークに、より考えやすくするために補足を付記した「暫定完全版」を以下で画像添付します。
以降は有料記事としますので、興味のある方は購入のうえご活用ください。