
その部屋、図面に“追加”されていませんか
第1章 一本の線
建築事務所で図面確認をしていた主人公・佐藤修司は、昨日まで存在しなかったはずの壁線と「確認室」を発見する。同僚は「最初からあった」と言い、現地写真にも白いドアが写っている。主人公だけが違和感を覚えたまま、机上の図面に自分の筆跡で「次は、思い出してはいけない」と書かれているのを見つける。
第2章 合わない家
現地で再測量を行う。建物の外寸と内寸の合計が一致せず、物理的にはあり得ない結果になる。壁を軽く叩くと一か所だけ空洞音が返る。しかし壁の内部を確認しても、空間は存在しない。帰り際、主人公は「確認室」のプレートが夕方には消えていることに気づく。
第3章 書き換えられる記録
図面、写真、メール、工事記録を調べるたびに、「確認室」は昔から存在していたことになっている。退職した元担当者のデータだけが暗号化されて残っており、その中には短いメモがある。
「図面を修正するな。図面は家ではない。家が図面になる。」
主人公は意味を理解できない。
第4章 現場の夜
夜の住宅で単独調査を行う。誰もいないはずの廊下でノック音を聞く。壁越しに返事をするような音が続き、主人公は壁に耳を当てる。その瞬間、自分と同じ声で「そこにいるのは誰だ」と問いかけられる。逃げ帰るが、録音にはノック音しか残っていない。
第5章 確認室
翌日、事務所の図面には「確認室」の設備図や建具番号が追加されている。さらに座席表にも「確認室担当 佐藤修司」と書き足されている。周囲の社員は何の違和感もなくその部屋を利用しているが、主人公には入口が見えたり消えたりする。
第6章 思い出してはいけない
暗号化データの復元に成功し、失踪した設計士の日誌を読む。そこには「確認室とは、図面と現実の差を修正する場所」であり、担当者はやがて現実から消えて「記録」だけになると記されていた。主人公は、自分も同じ役割を引き継がされようとしていることを知る。
第7章 最後の修正
深夜、事務所に現れた「確認室」の扉が開く。中には設計机が一つだけ置かれ、図面には主人公自身の家が描かれている。一本の線を書き加えるだけで現実が変わることを知る。主人公はペンを置いて部屋を去ろうとするが、翌朝、誰も彼の存在を覚えていない。
机の上には、新人社員の名札が置かれている。
その名前は、佐藤修司。
物語は、また最初から始まる。