メインコンテンツへスキップ
見出し画像

エピローグ 地図の続きへ

    飛行機で鉱山へ向かい、
    数週間働いて、
    また飛行機で家に帰る。
    オーストラリアでは、
    そんな働き方をFIFOと言う。
    Fly In, Fly Out。

    広大な鉱山でクレーンを動かしながら、
    ふと思うことがある。

    昔より、人への感謝が深くなった。
    離れている時間があるからこそ、
    帰れる場所のありがたさが分かる。
    それがFIFOという働き方が
    俺に教えてくれた、
    一番大きなことだ。

    内陸部に広がる鉱山のスケールは、
    日本では想像できないほど巨大だ。
    現場に行くたびに、
    この国の桁外れなスケール感に圧倒される。

    画像

    そして同時に、
    家族と離れて暮らす時間が増えたことで、
    支えてくれる人たちの存在の大きさを
    改めて感じるようになった。
    毎日一緒にいられないからこそ、
    帰宅した時の何気ない会話が特別になる。

    離れることは、
    距離ができることじゃない。
    むしろ、心の距離は近くなる。

    高校を中退して、
    お金も英語もないまま
    ニュージーランドに降り立ったあの日から、30年以上が経った。

    あの頃描いた地図は、
    白紙だった。

    今も、まだ全部は埋まっていない。
    でも、それでいい。

    埋まりきった地図に、
    次の場所は描けないから。

    地図は、まだ途中だ。


    完


    #創作大賞2026
    #オールカテゴリ部門

    この記事が参加している募集

     
     
    ポンコツxロクデナシx中卒≠オーストラリアでクレーンオペレーターやってます

    あなたへのおすすめ